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街を知るならまずここへ「ホーチミン市博物館」
初訪 2017.09 更新 2023.05.30
ホーチミン市を代表する観光スポットの中で、ミュージアムといえばまず有名なのが、ベトナム戦争の残酷さを伝える「戦争証跡博物館(Bao Tang Chung Tich Chien Tranh)※MAP」。
ベトナム戦争の史実をいまに伝える博物館として、戦闘機や弾薬、流刑地の再現設備などさまざまな史料が展示されています。
ただ展示内容の中には、少しショッキングなものも。もちろん、こんな時代だからこそベトナム戦争について学ぶことは大切なのですが、見ていて辛くなってしまう方もいるかもしれません。そんな、戦争系は苦手という方にオススメしたいのが、ホーチミン市が運営する「ホーチミン市博物館(Bao Tang Thanh Pho Ho Chi Minh)」。
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ウェディングのフォトスポットとしても人気のコロニアル建築で、街の歴史や民族文化、貨幣の歴史や戦争など幅広い内容に触れることができます。
さらには、元大統領の避難用地下シェルターや、コロニアル建築の中で休憩できるカフェチェーンが併設されていたりなど見どころも多く、尚且つ中心地にあるので、観光途中の立ち寄りスポットとしてもぴったりです。
※ 1つ前の記事で取り上げた博物館は、ベトナム建国の父ともいわれる「ホー・チ・ミン」さんの博物館(Bao Tang Ho Chi Minh)でした。そして、今回は、市の歴史や文化を展示する博物館(Bao Tang TP Ho Chi Minh)。名前がとっても似ていて紛らわしいですが、今回は「ホーチミン"市"博物館」をご紹介します。
アクセス
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場所は、ベンタイン市場やビンコムセンター、高島屋から徒歩各5分ほどとアクセスのいい立地。リートゥーチョン(Ly Tu Trong)通りとナムキーコイギア(Nam Ky Khoi Nghia)通りの角にあります。
チケット購入
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まずは、ゲートを入って右手のコチラ☝︎でチケットの購入を。
入館料は、1人3万vnd(約160円)。
写真を撮る場合は、追加で撮影料 2万vnd(約100円)がかかります。
建物について
もともと、フランス領インドシナ(ベトナム・ラオス・カンボジアにまたがるフランスの植民地)の商品を展示する商業博物館として建てられたこの建物。フランス人建築家のアルフレッド・フォールハウクスが設計を手掛け、1885年から5年の建築期間を経て完成しました。
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完成当初、正面入口に女神の彫像を施した2本の柱を据えるなど、当時のルーヴル美術館を参考に作られた、柱の連なるファサードが特徴的でしたが、1943年フランス領コーチシナ(ベトナム南部)の知事によって、ポーチが取り壊され、現在の形に作り変えられました。
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ゴシック様式をベースにした建築ですが、ギリシャ風の柱やベトナム南部の特徴を感じる装飾など、西洋と東洋の要素が融合。
一見見当たらない東洋の要素はどこにあるかというと、それは屋根部分。(そういえば、中央郵便局もそうでした。)
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目を凝らしてみると、屋根部分に動物のモチーフが配置されているのがわかります。ワニや鯉、南国風の鳥など、南部メコンデルタの生態系を表すような彫刻がさりげなく溶け込んでいます。
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顔の装飾が付いたコリント式の柱など、細部の彫刻も優雅。
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建物正面の中央には、商売の神を意味する頭像が据えられ、立体感のある華やかな彫刻は、商業博物館として建てられた当時の面影を残しています。
持ち主がコロコロ変わる建物?
激動の歴史を駆け抜けたベトナム。この建物も、建設後はフランスや日本、ベトナムと何度も所有権が入れ替わりました。
※年表にすると下記の通り
1890〜1945年
建設当初は商業博物館にする予定だったこの建物ですが、完成後はフランス領コーチシナ(ベトナム南部)総督の宮殿に
1945年3月
ベトナムに進駐していた日本軍が3月、クーデターによりフランス勢力を倒し、日本の総督(Minoda Yoshio) の宮殿に
1945年8月
日本軍が降伏し、ベトナム独立同盟(ベトミン)系の南部臨時行政委員会本部となる
1947年5月
フランスが再侵攻し、フランス領コーチシナ共和国の事務所となる
1948年6月
南ベトナム政府の総督官邸に
1954年
ジュネーブ協定後に迎賓館となる。1962年ザーロン宮殿に改名
1966年
ベトナム共和国の最高裁判所となる
1978年
1975年の南北統一後にホーチミン市によって改築され、ホーチミン革命博物館となる
1999年
ホーチミン市博物館となる
庭の展示
博物館の庭には、戦車や戦闘機が展示されています。
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たとえば、この飛行機UH-1は、ベトナムがカンボジアに侵攻した際に使われたもの。当時、大量虐殺が問題となっていたポル・ポト政権を崩壊させる一助となったこの侵攻で使われたものだそうです。
コロニアル建築のカフェも
敷地内には、ベトナムのカフェチェーン「ハイランズコーヒー(Hilands Coffee)※MAP」の店舗もあるので、疲れたらここで休憩するのもあり。
博物館の庭に開けたテラス席や屋内席のほか、コロニアル建築の中で休憩できる席もあり、ほかの店舗とはまた一味違った雰囲気が楽しめます。
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それではいよいよ館内へ。
大きく分けて
1階は、街の歴史や産業、文化に関する展示。
2階は、抗仏戦争やベトナム戦争に関する展示。
およそ1.3ヘクタールの敷地に、45000点超が収蔵されています。
1階展示室
近年リニューアルされて、以前より明るく見やすくなった街の歴史の展示室。1698年〜現在までのホーチミン市(旧サイゴン)の街の発展の過程を、グラフやチャート、写真から読み解くことができます。
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展示物には基本的に英語の併記があるので、Google翻訳のカメラ機能を使うなどすれば、なんとなくの内容を理解することも可能です。
※ いまのところQRガイドや音声ガイドはベトナム語のみ
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こちらは1790年頃、現在のホーチミン市1〜3区のエリアにあったグエン朝の城塞「バットクアイ城塞(Thanh Bat Quai)」の地図。現在の地図に重ねた画になっているので、エリアがイメージしやすいのがおもしろいです。
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こちらは地質や気候、河川地域の生態系についての展示。
ホーチミン市周辺には3500年前から人が住んでいたことを、考古学遺跡からの出土品が証明しているそうです。
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こちらは、市場や港の取引など、貿易・輸送に関する商業取引の展示室。
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写真の木の札は、メコンデルタからサイゴンに運ばれた米を倉庫に納める際、米袋の数を管理するために使われたカウント札。代金の支払いやポーターの賃金を計算するための便利な道具として20世紀に使われていたそう。
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こちらは、陶磁器や鋳物、木工などの伝統工芸品に関する展示室。
18世紀後半にサイゴンで発展した陶磁器製造は、ベトナム人と中国人の間でデザインや技術の文化的交流があり、新しい製品も多く作られたそう。いまでも市内の6.8.11区には、陶器窯の遺構や 「Lo Gom(陶器炉)」など陶器に関する道路名が残っています。
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1階奥には、伝統的な結婚式に関する展示があります。
ベトナムの伝統的な式は、まず先祖への挨拶から。祭壇の前に檳榔の実やお茶のペア、果物などを均等な数運び、先祖へ報告しながら式を行います。
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ベトナムは、中華系の人やチャム族、クメールなど多様な民族文化があり、結婚式のスタイルも民族によってさまざま。ここの展示では、衣装や結婚証明書も民族それぞれということが分かります。
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近くにあるこちらは、南部の伝統歌劇「ハットボイ(Hat Boi)」の衣装。ベトナム中部の宮廷で栄えた伝統劇「トゥオン(Tuong)」が南部に伝わったもので、特に19世紀後半から盛んに行われたそうです。
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ハットボイの裏手にある展示室には、クメール民族に関する展示も。
クメール民族の伝統演劇「Ro Bam」のマスク(写真)や、自然素材から作られた民族楽器などが展示されていて、この劇はいまでもソクチャン省やチャビン省などのクメール族のコミュニティで行われることがあるそう。
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ドラマチックな階段
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ウエディングフォトの定番スポットである、入口正面の階段がこちら。
(ちなみに、ウェディング撮影は40万vndの撮影料がかかるそうです。)
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2階のホールから見る、この景色もきれいです。
元大統領用の地下シェルター
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階段下の通路脇には、ベトナム戦争時にゴ・ディン・ジエム大統領が隠れた地下シェルター(兼 避難通路)があり、現在も見学可能。ひと気のない地下壕の見学は少々不安になりますが、地下には家具などが置かれています。
なぜここに地下シェルターが
1962年2月、ゴ・ディン・ジエム大統領が官邸として使用していた統一会堂がクーデターにより爆撃され、この建物に移動。
強化セメントで秘密の地下シェルターを作りました。深さは約4m、壁の厚さは最大約1m。空から500kgの爆弾を落とされても安全といわれる頑丈な構造で、大統領夫婦の各部屋や貯蔵室など6つの部屋が作られました。
船のように舵を回して開閉する鉄製のドアなど、1年以上かけて強固に作られた地下壕ですが、完成翌月の1963年11月クーデターによって大統領は殺害され、政権は崩壊しました。
2階展示室
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シェルター近くの階段を上ると、ベトナムのお金に関する歴史の展示が。
10世紀に鋳造されたベトナム最古の貨幣「Thai Binh Hung Bao(太平興宝)」をはじめとする貨幣の歴史を学ぶことができます。
中国文化の影響を感じる漢字表記の貨幣が使われていた時代から、フランス領時代のインドシナ紙幣、ホーおじさんの年齢の変化を感じる近現代の紙幣まで、国の歴史を貨幣の歴史から感じられるのも面白いところ。
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こちらはエキシビジョン(期間展示)の部屋。時期によって内容が変わり、このときはベトナムのフォークミュージックの研究者「Tran Van Khe」氏についての展示がされていました。
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2階は、戦争や独立運動についての展示がメイン。
この部屋の奥には、煙や炎を出さずに調理し、敵の航空機に見つかることなく前線の兵士に温かい食事を供給する「ホアンカムキッチン」の再現がされていました。
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(右)ナパーム弾から作られた櫛やスプーン
こちらは、戦時中に作られたものの展示。ナパーム弾を再利用したコーヒーフィルターや灰皿、手榴弾から作られた香炉、戦争のスクラップから作られたオイルランプなど、遺物を活用するたくましさが展示物から伝わってきます。
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アメリカへの抵抗戦争の過程で残された、兵士や殉教者の遺物を展示する部屋「革命戦争室(1954-1975)」。写真中央にあるのはベトナム戦争中、チーホア刑務所に投獄中の女性活動家が着ていた、生存権要求を示す刺繍入りセーターです。
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ベトナム戦争が終結した1975年4月30日のカレンダーと、北ベトナム軍の戦車が統一会堂に無血入場した際に破壊された、ゲート上部の装飾。
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(写真左)ベトナムに物資を支援しようと呼びかけるフランスのポスター/1968年
(写真右)ヨーロッパ諸国に対し、パリ協定を履行してベトナムと連帯を強化するよう求めるポスター/1973年
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独立宣言の様子を再現したジオラマ
ベトナム共産党の誕生から抗仏戦争、革命運動について展示する「革命闘争室(1930-1954)」
セメントタイルにも注目
建築物としても見応えのある博物館。
足元には、フランス植民地時代の影響を感じるセメントタイルが建物に花を添えています。
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ベトナムといえばまだまだ戦争のイメージが強い部分もありますが、街はさまざまな文化や歴史が積み重なっていまに至るのも事実。
街の歴史や伝統工芸、多様な民族文化、そしてベトナム戦争と、幅広い内容を知ることができる市の博物館は、観光スポットとしても魅力的なのではと今回感じました。一時は日本人も住んでいたというゆかり付きで、鑑賞タイムを楽しんでみては。
ちなみに、ホーチミン市内のミュージアムは、下記もあります。
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Bao Tang Thanh Pho Ho Chi Minh/ホーチミン市博物館
住 65 Ly Tu Trong, Q.1, HCMC
営 8:00〜17:00
電 028・3829・9741
休 なし
料 3万vnd(約160円)※撮影は別途撮影料 2万vnd(約100円)
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