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コラム:暑さと免疫

8月に入り、暑い日が続いている。以前免疫力についてのコラムで身体が冷える事は免疫力を低下させると書いたが、暑い夏場でも免疫力が落ちるという話はよく聞く。今回は夏場において免疫力に関して考えるべき事をまとめておこう。

(参考)

上記の記事で免疫力に関するいくつかの要素をまとめている。それぞれについて夏場に起こり得るイベントとの関連を考察すれば理解が早い。

①とにかく体温を高く保つ事は重要だと書いた。夏場は暑いから大丈夫だと思えるのだが、一方で暑いが故に体温低下に繋がるケースがある。過剰な冷房や低温の飲食物がそれだ。感情的には理解出来るが、健康的には熱中症などのリスクを避ける程度にとどめるべきであり、体温が低下するほどの冷却は避けるべきだ。

②睡眠不足も免疫の重要なリスクだと書いた。夏の問題については上と関連するかも知れないが、暑さによる寝不足は免疫学的なリスクである。冷房を掛け過ぎて就寝中に体温が下がるのも問題だが、暑すぎて寝れないのも問題なのである。ここの判断や実作業は個々の状態に応じたバランスが重要になるだろう。私は室温33℃以下ならエアコン使わなくてもぐっすり寝れるのでその温度を基準に行動を決めている。また、そういう意味では部屋に温度計を置くのは免疫学的に有意義だと思う。あとは日照時間の長さも関係あるだろうか。夏は日の出が早く、その分目が覚めやすい人もいるだろう。意識して早く寝る必要があるかも知れない。

③栄養についても、暑さで食欲がないなどのケースが問題になる。また、食欲が無いから栄養の無い食べやすいものを食べたりする。これについてはしっかり栄養を取れとしか言えないのだが、それらも含めての体調管理という事になるだろう。また、夏場においては水分・塩分の不足などが問題になる。脱水状態においては免疫系全般の機能が低下する。細胞そのものへの悪影響はもとより、血液循環や唾液分泌など免疫に関わる生理機能は多岐に渡るからだ。また、昔からミネラルと免疫の関係も色々研究されている。怪しげな研究も多いが、ナトリウム塩やナトリウムイオンに関しても免疫系との関係が多数報告されており、総じて免疫系を炎症側に偏らせる方向性に機能している様だ。塩分の不足も免疫系に悪影響を与える事は予想される。

④適度な運動については、複雑な要素が関連すると思われるが、ひとつの視点として夏場における「適度」とは何かを個々で考えることが必要だろう。上記の塩分や水分の関係は、当然運動量との関連に繋がってくる。また、疲労や体温変動などを考慮して夏場における「適度」を考えてみよう。

⑤ストレスというか、神経系との関連も夏場においては意識を高める必要があるかもしれない。暑さによるストレス以外に、①とも関連するが、急激な温度変化を繰り返すと、自律神経の問題も出て来る。過去に説明した通り、神経系の状態は免疫系に直接影響を与える要素でもあり、総じてメンタルも含めた体調のコントロールは自分で高い意識を持って行う必要がある。

⑥飲酒喫煙については、過去に説明した通り一般的な議論になる。夏場に飲酒する機会が増えるかどうかはヒトに因るだろうが、上記の要素も含めて自分で考えてもらいたい。

+αとしては、夏場に暑いからといってマスクを外す人が多くなっている。これは免疫というか、感染対策としてはもちろん問題がある。一般的に乾燥状態を好む病原体については夏場に感染拡大をしない。湿度や気温の高さによって空気中での生存期間が短くなるものも多い。しかし、新型コロナウイルスについてはその限りではなく、むしろ夏場に感染拡大を繰り返してきた。今年も同様に、現在が拡大の真っ最中であり、医療機関においては検査の陽性率が非常に高くなっている。これは潜在的な感染者数の多さを示しており、感染状況としては間違いなく過去最大規模である。呼吸器症状が無くても神経系への影響は高リスクであり、それなりの確率で長期的に悪影響が出現する可能性は全く否定出来ない。夏場の感染対策・免疫力維持についてよく考えよう。

まとめると、暑くてもある程度は頑張って、しかもストレスを感じない様にしろという話になってしまうのだが、これを為すために必要なのは結局のところ学習と訓練である。最近はこの学習や訓練に関する成果についても論文として報告が増えてきているが、総じてその効果は低い(感染そのものについての効果以前に、学習・訓練の効果自体が低いという結果が多い)となっている。当事者の意識が根本的に不足していることが伺える。

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