「嫌われる勇気」感想④ 世界の中心はどこにあるのか
自分と他者(世界)の関係はどう考えればいいのか。
他者が気になって仕方が無い人は、他者の事を考えているというのか、
それとも自分の事を考えているのか。
どうすれば自信をもって生きていけるのか。
今回はそんなことがテーマです。
1.個人心理学
アドラー心理学の正式名称は「個人心理学」といいますが、これはどういうものなのか?
人は人、自分は自分と、自己中心的とか個人主義というわけでは無いのです。
「人間をこれ以上分割できない」という意味で個人心理学と言っています。
例えば、心と身体を別々に考えることがあります。あるいは、理性と感情、意識と無意識など切り離して考えるということはよくあることです。
しかし、個人心理学ではそれらを切り離すことなく、人間を「全体としてのわたし」として「全体論」で考えます。
2.共同体感覚と自己中心的
人間関係のゴールは「共同体感覚」にあるといいます。
共同体とは家庭、職場、少数から大人数までも含めた社会のこと。
社会の中で生きる我々としては「共同体」の中で生きているのでここが重要だとは誰しもわかりますよね。
キーワードとなるのが、「自己への執着」と「他者への関心」です。
「自己への執着」は「自己中心的」とも言い換えられます。
そして「自己中心的」とは、他人の迷惑を顧みない人や、自分の都合しか考えないという人だけではなく、「他人からどう見られているか」ばかりを気にする人、承認欲求に囚われている人も同様に「自己中心的」だというのです。
自分の対する「他人の評価」がが気になるということは、自分のことが中心なわけです。
しかし、この事に気付かなければならないのです。
あなたは共同体の一部であって、中心ではない。
そして、「他者は自分に何を与えてくれるのか?」ではなく、「自分は他者に何を与えられるか?」を考えることが共同体へのコミットとなります。
与えることこそが自らの居場所を得ることになるのです。
3.横の関係
人間関係の中でアドラーは「横の関係」が重要といいます。
主従の縦の関係は社会でも家庭でもあるものです。
縦の関係の中では教育という事が起きるものですが、その教育の中でアドラーは「ほめてはいけない」と言います。
前回(第3回)で「賞罰教育」を否定することが出てきましたがそのことです。
なぜ褒めることが良くないのか?
ほめるという行為には「能力のある人が、能力のない人に下す評価」という側面が含まれています。
そう言われてみると確かにそうかもしれません・・・
よくよく考えてみれば、「できない」ということがベースになっているからほめるのですよね。
僕自身も、過去にある事でプロの人に「上手いですね」と言ってしまったのですが、後で考えると上手くて当然の人に「上手い」というのは失礼な言動だなと思いました・・・(余談でした)
さて、
そこでアドラーは「横の関係」を提唱します。
では、どのように指導教育をするのが適切なのか。
第3回でも出てきた、勉強しなさいという「介入」ではなく、「援助」が必要だといいます。
本人に自らの力で課題に立ち向かっていけるように働きかける手助けは必要で、課題は自分での解決を援助します。
4.勇気づけ
人は、ほめられることによって「自分には能力がない」という信念を形成していく。
ほめてもらうことが目的になってしまうと、結局は他者の価値観に合わせた生き方になる。
ではどうアプローチすればいいのか?
ほめるや叱るは他人に対する評価です。
大切なのは評価しないこと。
「ありがとう」など感謝を伝えることが横の関係における勇気づけになるのです。
人は感謝の言葉を聞いたとき、自らが他者に貢献できたことを知ります。
人は、自分に価値があると思えたときにだけ、勇気をもてる。
人は「わたしは共同体にとって有益なのだ」と思えたときにこそ、自らの価値を実感できる。
他者からの評価、他者からの承認、それらから得られるものではなく、自分自身が他者に貢献できていると思えることこそが大事だということなのだと思います。
次回第5回へ続く。
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