見出し画像

日本で初めてパイプオルガンが鳴らされたのはいつか[大分1557年説について]

大分市に「西洋音楽発祥記念碑」というものがあり、碑文はオルガンが1557年に使用されたと伝えている。

公表はされていないその碑文の内容の出典を恐らく見つけた。以下の2. から1. を探し当てた。

1. 古ポルトガル語、1598年出版:Cartas que os padres e irmãos da Companhia de Iesus escreuerão dos Reynos de Iapão & China aos da mesma Companhia da India, & Europa, desdo anno de 1549 atè o de 1580.
より Carta do padre Gaspar Vilela de Iapaõ para os padres e irmãos da Companhia de Iesu da India, & Europa, a 29. de Outubro de 1557. annos. > 56v-57

2. 邦訳「異国叢書 續 豊後篇上巻」、1936年出版、P. 200-201、国立国会図書館デジタルコレクション



2. の改訂版(1968-69年版)があるらしいので見てみないとはっきりとは言えないが、おそらく邦訳が古すぎて=学術的解釈が戦前から変わらないままで、誠意から言うと1557年オルガン使用説は少し懐疑的に扱ってもよさそうである。"canto dorgam", "canto dorgaõ" だけでは楽器のオルガンか唱法のオルガヌムか判然としない。現代ポルトガル語でオルガンは "órgão"。 "canto dorgam" という言葉が出てくる他の文献を一つ見つけたので

"Arte de musica de canto dorgam, e canto cham, et proporcoes de musica diuididas harmonicamente."
著者:Antonio Fernandes、出版社(者):Pedro Craesbeeck, 1626年

https://s9.imslp.org/files/imglnks/usimg/9/9d/IMSLP114369-PMLP233410-fernandez_arte_de_musica.pdf?fbclid=IwAR0M2Gh_NNo3YOz5mcKlh_7NHGxzskidTr9zUGK43ql4wBxLkgFb76m5jHM

ざっと目を通したが、唱法(作曲理論)を説明するものであって楽器のパイプオルガンには一度も触れていないように見える(古ポルトガル語は正直未知の世界なので、なんとなくは分かっても責任は負ない)。筆者が正式に調査できるレベルには能力も環境も人脈も至っていないのが悔やまれる。

※無断転載を固く禁じます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?