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「デジタルサービスデザイン」って何?(第1回 バリュープロポジションキャンバス)

三越伊勢丹のデジタルサービス開発において重要な要素となる「デジタルサービスデザイン」について3回シリーズで紹介します!
第1回はバリュープロポジションキャンバスを利用したサービスのコンセプトデザインです。

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- 婦人靴向けパーソナルフィッティングサービス YourFit365

■サービスのコンセプトを決める

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新しいデジタルサービス(プロダクト)を立ち上げるとき、ビジネスモデルやコンセプトを整理するフレームワークとしてビジネスモデルキャンバスリーンキャンバスが知られています。

たとえばリーンキャンバスは顧客セグメント、課題、収益の流れ、ソリューション、独自の価値提案、チャネル、キーとなる指標、コスト構造、圧倒的な優位性という9つの要素を決めます。

アイムデジタルラボが開発した婦人靴パーソナルフィッティングサービスYourFit365は、三越伊勢丹の婦人靴売場をデジタル化するための取り組みで、既存のサービスやお客様を前提として立ち上げました。このように既存事業をベースに新規サービスを立ち上げるとき、リーンキャンバスはオーバースペックになりがちです。

そこで「顧客の要望」と「サービスの価値」といったサービスのコンセプトにフォーカスし、既存事業とのシナジーを確認していきます。このためにバリュープロポジションキャンバスを活用しています。

■バリュープロポジションキャンバスって何?

バリュープロポジションキャンバスは、ビジネスモデルキャンバスの中で「顧客セグメント」と「価値提案」だけにフォーカスしたものです。

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バリュープロポジションキャンバスでは右側に「顧客セグメント」を、左側に「価値提案」を記載し、それぞれを比較することで、バリューがニーズに合致するかを確認できます。顧客セグメントと価値提案は、それぞれ以下の3つの要素で構成されています。

■顧客セグメント
①お客さまのしたいこと【Customer Job(s)】

お客さまがしなければいけないこと、望むこと、ありたい姿
②お客さまが嫌なこと【Pains】
お客さまにとって悪いこと、したくないこと、減らしたいこと
③お客さまが嬉しいこと【Gains】
お客さまにとって良いこと、やりたいこと、増やしたいこと

■価値提案
④製品・サービスの提供価値【Products&Services】

お客さまのニーズを満たすような製品・サービスの提供価値
⑤提供サービスによって減らすことのできる嫌な要因【Pain Relievers】
お客さまの嫌なこと、望ましくない状態を減らすための提供価値
⑥提供サービスによって得られる嬉しい要因【Gain Creators】
お客さまにとって嬉しいこと、お客さまが期待することにどう役立つか

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詳しくは以下の書籍にまとまっていますので、もっと深く理解したい方はそちらをご覧ください。
バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る (アレックス・オスターワルダー 他 / 翔泳社 / 2015年)

■誰がバリュープロポジションキャンバスを作るの?

アイムデジタルラボでは、新規サービスの開発には、お客さまを知る現場のメンバーが関わることが大切だと考えています。

三越伊勢丹でいえば、日々お客さまに接しているお買い場(売場)のスタイリスト(販売スタッフ)こそが、お客さまのご要望やお悩み=「顧客セグメント」と、お客さまに提供すべき価値=「価値提案」を理解しているはずです。

そこで、お買い場のスタイリストや、商品を扱うバイヤー、売上に責任があるマネージャーなど、現場のメンバーを集めてワークショップを開催し、バリュープロポジションキャンバスをつくります

ワークショップでは、バリュープロポジションキャンバスを使って以下のようなことを洗い出します。

・お買い場には、どんなお客さまが来店され、どんなお悩みを持ち、三越伊勢丹にどんな期待をしているのか?
・お買い場では、どんなデジタルサービスが提供でき、競合他社が真似できない独自の価値があるか?
・お客様の期待と、サービスの価値がフィットしているのか?

お買い場のメンバーは、お客さまのことを理解してはいますが、全体を整合したサービスの形まで構想できません。フレームワークを土台にチームで考えていくことで精度が向上し、より明確な形になります。

もっとも重要なことは現場のメンバーだけで考えることです。現場から離れたメンバーが入ってきても、今のリアリティを共有することができません。現場のメンバーだけで考えることで、よりリアルなお客さまの悩みにフォーカスし、三越伊勢丹だからこそ提供できる価値を定義することができると考えています。

■YourFIT365のバリュープロポジションキャンバス

では、 YourFIT365を開発するにあたって作成したバリュープロポジションキャンバスを紹介しましょう。

まず簡単にサービスを紹介します。YourFit365では、まず3D足形計測器を使って足形を計測します。すぐに足に合った靴が画面に表示されるため、その中から気になった靴を試着し、フィッティングをすることができます。

計測からフィッティングまでシューカウンセラーが対応します。計測後は足形の特徴を説明し、一足ごとに靴のフィッティングを確認します。
また、スマホアプリをダウンロードしてもらえれば、足形情報がどこでも確認でき、合った靴も表示されるためECサイトで購入することもできます。

では、バリュープロポジションキャンバスを紹介します。

最初は顧客セグメントです。三越伊勢丹で靴をお買い上げされるお客さまは、当然ながら「自分に合ったおしゃれな靴」というのを期待されています。一方で「痛い靴を履くのは嫌だ」ということが強い悩みです。

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これに対して新規サービスで価値提案できることを書き出します。これは「足を計測して合った靴を提案する」ということが核になります。ただ、一方で靴のお手入れ方法を紹介するといったことも含まれています。

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最後に、この2つのを組み合わせて顧客セグメントと価値提案がフィットしているのかを確認します。赤いバツはフィットしないものです。このサービスは「足を計測して合った靴を提案する」ことに特化したいので「おしゃれな靴を履く」や「靴のお手入れ方法を紹介する」といった要素が落ちていることがわかります。

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この新規サービスの独自性は「精緻な計測による合った靴の提案」と「プロの目で判断する」の組み合わせです。もちろん、三越伊勢丹にはおしゃれな靴がある、スタイリストに聞けばトレンドも靴の手入れも教えてくれるという前提があります。既存事業の強みを活かし、新規サービスとして特化すべきことを決めたのです。

たとえば「おしゃれな靴を履く」という点についてはデジタルではない取り組みをしています。店頭にお客さまをお呼びして、洋服のトレンドを紹介し、それにあう靴を紹介するといったイベントを開催するのです。その中でYourFIT365を体験してもらえば、自然に三越伊勢丹の強みを利用することができます。

次回はユーザーエクスペリエンスマップやサービスブループリントを使い、サービスを提供するためのフローやシステム連携を整理する手法を紹介します。ぜひ次回の記事もご覧ください!

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