「逃げろ、休んで逃げろ」穂音さん 聞かせて姉さん第2回インタビュー
お待たせいたしました。幸年吉日サークルの更年期インタビュー「聞かせて、姉さん」第二回目です。二人目のゲストは「更年期宣言杯」でいち早く更年期の体験談をご投稿された穂音さんです。
更年期用の治療を受けられなかったお話が身につまされます。途中ワンちゃんにもご対面させていただきながらじっくりとお話をお伺いしました。
更年期は病気じゃないんでしょ
谷川らなん(以下 谷):「更年期宣言杯」で投稿された都都逸には体験談もお書きになってましたよね。
穂音(以下 穂):更年期が結構きつい方だったんですけど周りの方に相談しにくいんですよね。職場に女性がそんなに多い訳ではなくなんか言いづらい。「体調がよくないんです」とは言えるけど「更年期です」とは。「更年期でね」っていうと「病気じゃないんでしょ」っていう感じがあって。女性の体の場合ってそうですよね。月経痛の時も病気じゃないんでしょという空気感が辛いなあというのがあって。同じような先輩がいたらもっと胸の内を話せたんじゃないかというのがあって。せっかくこういう機会だから、もしかしたら全国的に誰か一人でも読んで「あーじゃあ私も良くなるよね」と思ってくださるといいなと思いました。
コノハナ(以下 コ):励まされたというコメントが多くて、穂音さんの投稿をきっかけに更年期宣言杯にたくさんの方が応募してくださったと思っています。有り難かったです。
穂:なんかいい時代だなって。今まで共有しようと思ったら芸能人の経験談とかを読むしかなかったですけど、普通の人がこういうのを披露しあって励ましあえる、いい時代だなと思います。
更年期の始まり
谷:症状はかなりいろんなきつさが40代前半から?
穂:ありましたね。一番最初に出たのは体の痛みで元々肩こりとかあったんですけど、今までの肩こりを10としたら100くらいまで痛くなって。いつも鉛の服を着てるみたいで辛くて。お腹も腰も痛くなって。のべつまくなしで寝てても目が覚めるくらいで、過敏性腸症候群かなって思ったんですけど調べても何もないんですよ。だんだん朝起きるのがきつくなっておかしくなってきたぞって。そのうち月に1回くらいはどうやっても朝が起きれなくて休みますってなって。目が覚めてるんですけど動けないんですよ、ぐったりして。
これって更年期じゃないの?
穂:それで更年期の年代だからって思って婦人科に行ったら「まだ違いますよ」って言われて。「これで違うんだったら、私精神科行きます」って。精神科で軽いうつの薬を出されたらすごい効いたんですよ。元気になった、て思ってたら、そこからまた落ちるんですよ。ジェットコースターみたいに上がっては下がって、上がっては下がって。なんかもうぐちゃぐちゃ。
何年かして、もう月経も止まったし今度こそ更年期って言ってもらえるかなと思って婦人科で相談したら「ホットフラッシュや汗出たりっていう症状にはよく効きますけど、気分の落ち込みには効きません」って言われて。ホットフラッシュも不愉快な症状ですけどね。でも私はホットフラッシュくらいなら我慢するけど、この動けなくなる辛さをどうにかして欲しいと思っていたので「じゃあ婦人科は止めときます」って言ってずっと精神科に通い続けたんですよ。でも後から考えると、更年期の治療にチャレンジした方が、解決が早かったような気がして。後悔するのはそこです。
こんな思いして仕事頑張らんでいい
穂:だんだん更年期うつだか、本物のうつだか、薬の副作用で具合が悪いのか、分からなくなって。薬のせいで、もう誰にも会えなくなるんじゃないかっていうくらい酷い薬疹が出たんですよ。何もかも、無茶苦茶って思えて。そんなんなるともう人生やめようかってなります。表情までなくなって、今だったら笑ってって言われたらニコってできるけど笑うってどうするんだっけ、どうやって笑うんだっけって顔がカチカチになってしまった。さすがに先生が「薬を変えましょう」って、そうしたらスーって楽になったりして、あれ、もしかしたら病気じゃなかったんじゃないのって疑い始めて。
少しづつ普通に考えられるようになったら「私こんな思いして仕事がんばらなくてもいいんじゃない」って思って長く勤めてたのを辞めたんです。
コ:海外へ行かれるお仕事をされてたんですよね?
穂:出張が多かったです。若い頃は楽しいんですよね。寝なくても平気だし、寝ないと却ってハイになったりして。こんな生活がいつまでも続くと思ってたのが失敗だったと。
コ:どうやって10年以上勤めていたお仕事を辞める決断をされたんですか?
穂:何年も悩みました、不安もあるしね。けれども割と理解があった男の上司の方が転勤されることになって、これはもういいきっかけだろう、もう私も辞めようと。そんな感じでしたね。
非常勤の時短で働けるところに変わって。それまでは、都会のごみごみしたところに住んでたけど、これも良くないんじゃないかって思って郊外の方に引っ越しました。そこから劇的にぐーんって体調が改善して。薬もほとんど要らなくなるという不思議なことが起こりました。ずっと、睡眠薬を飲んでも寝られなくて明け方五時とか六時とかになってやっとうとうとしてたんですよ。起きられる訳ないでしょ。もう一般的な社会人生活に戻れないかもって思っていたのが、夜十二時くらいから寝られるようになって。
コ:更年期に入って体を温めることを始められたそうですね。
穂:なんでお腹痛いんだろうってずっと分からなかったんですけど、冷えると余計痛くなるって気づいて。冷房の時、結構きますよね。夏も腹巻を欠かしません。あとはカイロで温めたり、湯たんぽで足元ケアしたりとか。ちょっとした気遣いで体が変わります。お灸も良くて、せんねん灸をしています。この間ちょっとやけどしたので、みなさま気をつけてください。熱いのを我慢したらダメなの。
逃げろ、休んで逃げろ!
穂:私は一番やってはいかんことをやった。「もうちょっと頑張ったらよくなるかも知れん、もうちょっと頑張らんと」って思って。それ最悪だった。「しんどいから帰りまーす」って言っといたら良かったと思うけど、なかなかできない。だから、自分の体と心の声に従って「逃げなさい」と言いたいです。私こんなに頑張って倒れましたってなっても、誰も同情してくれないし何やってるのってなるし。だから自分は自分で守るしかないよって。自分と自分の大事な家族だけをギリギリ守って乗り切った方がいい。立ち向かわずに「逃げろ」「休んで逃げろ」と。そこから抜け出たらまた考えましょうね、と。私も、そこを間違えなければもう2,3年早く抜けれた気がするんです。結局、10年位かかって元気になりました。もう数年したら還暦ですけど、やっとやる気が出てきた。もうちょっと働いてもいいかなって思うようになった。もうちょっとお役に立てるような気がする。無理はしないけれど、もう少しやれる気がする。
年をとるって悪くない
コ:月経前症候群が大変だったそうですが、閉経したことでどう変わりましたか?
穂:月経前に些細なことにイライラしたりやたら泣いたりとかしてました。月経痛もひどくて薬飲んでなんとか働いてました。月のうち一週間ちょっとは使い物にならないですよね。閉経したらそういうのが一切なくなったから楽です。そんなイライラしない。変に泣かない。感動して泣く、気持ちいい方の泣き方に変わる。仲のいいnoter さんの記事で「更年期で荒ぶるんですよね」って書いてあるんですけど、絶対楽になるから、年取るって悪くないよって。
コ:閉経後に更年期のピークが来たんですよね?
穂:ピークは閉経後だと思います。ふらつきがひどかったです。自律神経失調みたいな、立ち眩みがひどくて血圧が下がる。机にこう横向きに突っ伏して、横目でモニターを見ながら仕事して。私いまサボってるわけじゃない、血圧がね、って言いながら。なにやってるんでしょう。そういう時期にダブルパンチで五十肩とかなるんですよ、しかも両肩。神様勘弁してください、スーパーで上の棚の物が買えません。
47歳で閉経したので50歳越えたくらいがピークで、そこからすーっと薄皮を剥ぐように楽になって。できなくなっていたことができるようになって、いろんなことが楽しくなった。食べないと死ぬからと義務みたいにしてたのが、このお芋おいしそうと思って買うようになった。食べないと死ぬじゃなくて、食べたいから食べる、美味しいから食べるっていう風に変わってきた。
やりたかったことを前倒し
コ:更年期に入って老後にやろうと思っていた犬を飼い始めたんですか?
穂:そう、やりたいことやり始めようと思った時に前倒しして。救世主お犬です。(ここで二匹のワンちゃんご登場。)ちょっと楽になってきた時に、もう仕事一辺倒ではなく別の世界を作らなくてはと思って。
大変だったことも意味がある
谷:家族が大事だと気づいたと言うのは?
穂:私、独身なんですよ。だからうちの家族といったら両親と弟の家族で、それまでは年に数回しか会わなかった。ああ大事な人たちだ、親に会いによく行くようになったり、弟夫婦たちとマメに連絡するようになったり。改めて私はこの中で生きてきたんだよねって再確認しました。一人で大きくなった訳じゃないのになんか忘れてたなって思って。更年期をきっかけにしたひどい不調がなかったら、それに気づくこともなく両親を見送ることになったかもと思うと、これでよかったんじゃないか。それがなかったら犬もここにいないし、noteも書いてないし。今誰とお話してたんでしょうね。だから大変だったことも意味があると思えるようになった、やっと。noteでいろんな方の書いたものを読ませて頂いたり、こうやってお話させてもらえたり。しんどかったけど、こんな人たちと出会えた! というのもあります。
そのままで生きていていいんだよ
谷:更年期中の自分に声をかけるとしたら?
穂:「もっとさぼって手を抜いていいよ」って。それをそのまま皆様に。仕事も家事も自分がやらなかったら回らないと思うじゃないですか。職場も家庭も。
がちがちの昭和世代は、我慢が美徳で、頑張るのが美徳で、辛いときも笑ってるのが美徳で、困難は乗り越えるのが美徳で、自分を殺して周りに合わせるのが美徳でってなるじゃないですか。全部やめてみ、って。自分が一番楽にありのままにやってみ、って。そのままで生きていていいんだよ。大概の人は、自分でちょっと我がままだって思うことしたって、全然大したことないと思うんです。もっと「できません」「これはわたしやりません」ってやってみようよ、って。それでちょうどいい位なんじゃない、特に女性はね、そう思います。
谷・コ:本日は貴重なお話をありがとうございました。
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