マインドフルな学び

No.10|育児・教育|子どものマインドフルな学び#1:集中力を発揮するには

マインドフルな学びとは

マインドフルネスとは「今ここに意図的に意識をむける」と定義されている心の状態を表しています。わかりやすく言ってしまうと、雑念にとらわれずにやることに集中している状態です。子どもが勉強している場面でマインドフルネスの定義をあてはめれば、「(時間を忘れるほど)目の前の課題に集中して取り組んでいる状態」とも言えます。これは私は「マインドフルな学び」と呼んでいます。

これまでの記事においても、たびたび、マインドフルネスと集中力の関係について説明をしてきましたが、マインドフルな学びにおいても集中力はとても重要な土台になります。この記事では、子どもが集中力を巧く発揮するための基礎知識とコツについて紹介したいと思います。

集中力の種類について知っておきましょう
:注意の持続と精度

集中力は一般的に使われる言葉ですが、それが何かと問われると難しい概念かもしれません。心理学の分野では「注意」という概念で集中力の研究が行われています。私たちがよく口にする集中力は「注意の持続」「注意の精度」などに関する注意の側面を意味していると考えられますので、ここでは、これらの注意の概念について情報を整理していきます。

子どもが集中している(いない)時を想像してみるとわかりやすいと思います。「注意の持続」は注意を長く向け続けていることです。わかりやすく言うと、読書をずっとしていたり、絵を長時間描いていたり、長い時間をかけて特定の行動を続けていることだといえます。

長時間というだけでは集中力があるとはいえません。たとえば、読書をしていたり、雑に絵を描き続けている様子からは集中力があるとは言わないと思います。「注意の精度」は注意を細部にまで行き渡らせることです。わかりやすく言うと、丁寧に行うというように言い換えられます。

集中力の状態から子どもの学びを理解する

子どもがどのように集中力(注意の持続と精度)を発揮しているかということを観察していると、その学びについてさまざまなことを知ることができます。集中力がないと言われる子も、自分の好きな活動の時には注意が持続していると思います。また、好きな活動であれば丁寧に活動できることも多いと思います。つまり、集中力は「ある/ない」ではなくて、「発揮できる/発揮できない」や「制御できる/制御できない」という性質のものであるということを理解しておくことが大切です。

集中力は「やる気(動機付け)」と関連づけて観察することができます。楽しい課題や興味のある課題については、動機付けも高まりますので、興味のない課題よりは注意が持続します。しかし中には、やる気もあるのに、精度がすぐに落ちてしまう子どももいます。大好きなゲームをやり始めたはいいものの、しばらくするとミスばかりをしてしまい、イライラしながらゲームを続ける子どもを想像してみてください。この場合、精度が落ちることでやる気もなくなり、注意が持続しないこともあります。子どもの集中力が育ってない場合は、いくら好きな活動であっても、能力は発揮できないことも多くみられます。注意の持続と精度の両方を兼ね備えた集中力を身に付けるためには、子どもの好きな活動をさせるだけではなかなか育めないのかもしれません。

注意の持続と精度の両方を育むコツは?

集中力とやる気(動機付け)に関連があることは理解していただけたと思います。まず最初に取り組むことは、動機付けが得られやすい活動を選ぶことが前提になりますが、それは、好きな活動をするという意味だけではありません。

就学前園児の場合
短時間で完成がしやすい遊びや正解がない課題だと取り組みやすいと思います。たとえば、塗り絵などは小さな絵であれば完成もさせやすく、「できた」という喜びが、次の動機付けにつながります。塗り絵は「精度」を目的として短時間で仕上げられるものを初めのうちは用意するといいでしょう。ここで言う精度は、丁寧さを意味していますので、必ずしも「上手な塗り」である必要はありません。少しずつ塗り絵作品を大きくしながら、「持続」の視点も取り入れられるといいと思います。また、途中で完成できなくても、次の日には活動を再開できるように、完成まで継続できるようにすることも大切になります。

小学生低学年の場合
自分の好きな活動(趣味)を持続できるようにすることで、集中力がグングン伸びていきます。得意なことや好きなものを見つけたら、その活動で集中力(精度×持続)を鍛えていきましょう。集中力は「注意の制御」も大切な要素になりますので、適宜休憩するタイミングや中止する時間を自分で決められるようにサポートすることも大切になってきます。

正解がある課題や活動をする場合には、最初のうちは簡単な問題をたくさん行えるように設定することがポイントとなります。「ここまではできた!」や「ゴールに近づいている!」という感覚が動機付けには大切になりますので、間違っても難しい問題を長時間解かせようとはしてはいけません(それはもう少し注意と心が成長してからです)。

我が家で行っている集中力の促進活動

子どもたちが小学生になってから持続して行っている活動は、絵を描くことです。小学校になると低学年(兄3年・弟1年)は、絵を描く課題がたくさんありますので、3日間程度をかけて完成する絵を丁寧に描くようにしています。最初は絵を描くことが苦手な兄弟でしたが、大好きな動物の絵を描くようになってから、少しずつ上達し、今では兄弟で多くの賞をいただけるようになり、褒められることで自信がつき、またさらに絵を描きたいというサイクルになっています。

他にも行っている集中力と動機付けの活動は「スポーツ」です。子どもの友達(男の子兄弟)と大きな公園(モリコロパーク)に毎週行き、ラグビーの練習をしています(ラグビーの競技経験者なので私も楽しんでます)。スポーツは集中していないとすぐにミスとして明るみにでるので、集中が切れているかどうかが自覚しやすいのが特徴です。体をつかって、自分の集中力のバランスを保つトレーニングとしてスポーツは良い活動だと思います。ただし、運動が苦手な子の場合は、子どもが楽しめる・簡単にできる身体活動を設定してあげてください。

勉強に近い活動としては、足し算や引き算の計算問題を早く解く競争です。iPadのアプリを使って、簡単な100問を何秒で解けるかを家族で競い合っています。紙の計算ドリルではやる気にはならないのに、iPadのアプリだと楽しんでやれるということもありますので、子どもの動機や興味を惹ける工夫も必要になります。

【今日のポイント】

集中力は「注意の持続と精度」を育てることが、マインドフルな学習の土台となります!
子どもが楽しみながら達成できることを増やしていけるようにサポートするのが鍵です!

好きな活動を好きなだけ楽しめることで集中力は鍛えられていきます。しかし、子どもは成長するにしたがって、好きなことだけではなく、興味のないことや苦手なことに対しても集中する力が求められるようになってきます。次回は、マインドフルな学習と関連の深いマインドセットについて紹介したいと思います。

心理学の知識を楽しくご紹介できるように、コツコツと記事を積み上げられるように継続的にしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。