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21.忘れえぬ人(米川さんの絵本)

はじめに

21回目は米川正利さんにとって大切な山仲間だった方のお話です。

20回目の遭難、そして21回目の忘れえぬ人、登山では起きてはならない事故についての米川さんのお話をあえて絵本に収める予定です。

加えて、米川さんとの20・21回からのお話から、だからこそ山を知り、山を楽しんでほしいという山好きな方々への米川さんからのメッセージも掲載します。

ぜひご一読していただき、そして皆様が笑顔で楽しむ事のできる登山となるガイド記事のひとつともなれば幸いです。

忘れえぬ人

天気の良い春の山で
「ちょっと登ってくる」と言って出ていった。
彼はベテランだからと信じていた。
でも 帰ってこなかった。

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解説

月の中旬のとても天気の良い日だった。
昔から来てくれている仲間が登って来た。彼はヒマラヤから帰って来て一時のんびりしたいと言っていた。
「今日は天気が良いので天狗岳へ行ってくる」と出ていった。
彼は日本国内の岩場やヨーロッパアルプス、ヒマラヤの山まで挑戦した山のベテランだった。
「久し振りだからゆっくり昼寝でもしたら」と私は言ってやった。
その後、天狗岳へ登っている人から緊急連絡が私のところに入った。
「雪庇が崩れて雪崩が出て、登山者が巻き込まれたらしい」第一報だった。
急いで現場に駆け付けた。
やはり天狗岳の斜面に大きな雪崩の跡が残っていた。もしかしてさっき分かれた彼ではと声を出して探して見た。
何処にも見当たらない、返事も無い。
現場を見た人に様子を聞いてみると、どうやら姿からして、彼らしい。
大きな雪崩なので直ぐには救助できない。
さっそく地元の救助隊を呼んだが長い時間が掛かった。
結局春の雪解けまで出てこなかった。
何年も小屋を手伝ってくれて、一緒に酒を飲んだ仲間だったのに。
気晴らしに登って来た山で。彼は帰らない人になってしまった。
山が好きで山に憑かれた人だったのに。

1970年頃登山ブームだった。大勢の人達が山に登った。
ヒマラヤ、ヨーロッパアルプス、日本の山、岩登り。
身近な知り合いが帰らない人となった。
何人も、何人も、そして今度は自分かと。

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saitou:米川さんも遭難にあった事ありますか?
米川正利:数えきれないほど。雪崩にあっちゃって、やっと自分で這い出してって。
saitou:死んじゃうって思います?
米川正利:死んじゃうって思います。なので、這い出した時「なんで生きていたんだろうな」ということってありました。
そういうことってありますよ。
saitou:確か、落雷にあったことも。
米川正利:雷に打たれたことも、岩から落ったこともありますよ。よく死ななかったなぁって。
仲間なんか、ほとんど半分くらいはヒマラヤ行ってとか、北アルプスとか。
だから山に登っている割にはよく生きてると思いますよ。
山は何が起こるかわからない。
だからこそ、装備はしっかりと、自分の体力を過信せず、時間に余裕をもって、山を楽しんでほしいと思います。

山を楽しむ方法 (米川正利)

頂上を目指す登山でなく、先を急ぐわけでなく、たまに立ち止まり自分の五感で自然と楽しもう。
四季おりおりの楽しみ方が有る。

(1)登山前に体力を整えよう。
(2)自分の体力・経験・技術を見極めた計画を。
(3)単独行動は避けて信頼できる仲間と。
(4)早寝早起き励行・夜間の行動は避ける。
(5)何時でも健康管理。
(6)山でのマナーを守ろう。
(7)山小屋でのマナーを知ろう。
(8)事故時の対応を覚えておこう。

おはなし絵:Yonekawa Masatoshi
共著:Yonekawa Keiko , Saitou

※この記事は米川さんの絵本proofreadマガジンに掲載中です



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