ファンドレイジングの責任と聞くと胃が痛くなる方へ「ジョイント・アカウンタビリティ」のご提案
NPOの伴走支援をしていると、よく見えてくるのが、その団体さんのファンドレイジングへの責任の持ち方です。
責任と聞くと、クラウドファンディングの目標不達成、助成金の不採択、寄付金減少、といった思うような成果があがらなかった時に問われるものと考えられがちです。
もしそうした責任の持ち方だけをしていたら、その団体のファンドレイジングは低迷していくと思います。
ファンドレイジングは団体がしている様々なことの結果ですから、いち担当者の責任をいくら問うても改善は見込めないからです。
その担当者は「団体の事業のいいストーリーを聞こうと思っても現場が協力してくれなかったから」「つかえるいい写真が現場から提供してもらえなかったから」「代表のコメントをお願いしても、忙しくて断られたから」「理事の方にシェアをお願いしてもナシのつぶてで無視されたから」「そもそもファンドレイジングが重要と団体の人が思っていないから」と達成できない理由をどんどん挙げるか、心の中に溜めていくことになります。
一方、ファンドレイジング担当以外の人からすると、「本業の業務が忙しいのにファンドレイジングに関する協力はできるだけしたくない」と思うでしょうし、ファンドレイジング担当から「うまくいかないのはあなたたちの非協力的なことが原因になっている!」と言われたら、「余計な責任を負わされないようにできるだけ関わらないでおこう・・・」と、双方の距離は拡がっていくことになるでしょう。
こうしたやりとりを経て、ファンドレイジング担当や業務委託者が辞めて、団体のファンドレイジングが止まることになります。
ファンドレイジングがうまくいく責任の持ち方はどうしたらいいのか?
今回は、この責任の持ち方について、書籍:主体的に動く~アカウンタビリティ・マネジメント~を参考にしながら見ていきます。
※本書では、責任のことを「アカウンタビリティ」と表現しているため、このnoteでも同様に表記します。
過去ではなく「今」できることを焦点にする、新たなアカウンタビリティ
本書では、従来のアカウンタビリティと新たなアカウンタビリティを以下のように説明しています。
従来のアカウンタビリティは、過去やったこと・やらなかったことが焦点となり、今起きたことについて責任が問われます。一方、新たなアカウンタビリティは、より良い結果のために「今」できることは何かが焦点となります。
アカウンタビリティの捉え方によって組織の人の行動は変わってきます。下図の上部は新たなアカウンタビリティによって起きる行動、下部は従来のアカウンタビリティによって起きる行動になります。
従来のアカウンタビリティ下で起きる6種類の行動
従来のアカウンタビリティ下では、責任を負わされたくない(失敗の犯人になりたくない)ためにこんなことがおきます。
①無視する/否定することで、問題をなかったことにしようとする
わが団体はファンドレイジングには困っていない。別にファンドレイジングしなくても従来の支援はできると言い張る
②自分の仕事ではないと、責任の対象から外れようとする
ファンドレイジングは自分の仕事ではない。余計な仕事を増やさないでくれと迷惑そうに言ってくる
③責任を誰かに押し付けることで、自分の責任はないと主張する
自分は情報提供したのに、広報担当者が失敗して寄付者が集まらなかったんだと責任を1人のせいにする
④混乱し、従順な指示待ち人間になるが、最終的に指示者の責任にする
ファンドレイジングなんてやったことがないので、何したらいいか全くわかりません(汗)。と小さくなって黙り込み、最終的に代表からの指示に従った行動をするが、結果が失敗したら「私は代表に言われたことをしたまでです」と開き直る。
⑤言い逃れや逃げ隠れをして、責任に負う場面から逃げる
最初の頃は出席していたファンドレイジングの打ち合わせに、なんだかんだ理由をつけて出席しなくなる。
⑥様子を見て何もしない
ファンドレイジングについて代表やマネージャーはファンドレイジングの取り組みについてどう思っているのかが明確にならない限り、何を言わない、何もしないを決め込む。
団体のお金のことは代表に任せているので!とさわやかにファンドレイジングの活動を拒否る職員さん達は、私の体感値でも多いです。従来型のアカウンタビリティは根強いようです。
責任の共有:ジョイント・アカウンタビリティという考え方
従来のアカウンタビリティ下では、悪い結果の責任をとるべき犯人が特定されれば、残りの人は安堵しますが、そもそも組織の成果は、いち個人の活動ではなく集団活動で生み出されるものです。犯人の1人を特定したとしても失敗した根本原因は解決されていません。同じようなことが続くことになります。
一方、新たなアカウンタビリティ下では、複数のメンバー間で、①現実を見つめる、②当事者意識を持つ、③解決策を見出す、④行動に移す、といったプロセスがうまれます。
この複数のメンバーで責任を共有する:ジョイント・アカウンタビリティはとても重要な考え方です。
こう言うと、組織全員が共通の結果に対する責任を担うことなんて本当に可能なの?と疑問に思う人もいるかもしれません。
従来のアカウンタビリティと新たなアカウンタビリティでは、担うのは誰か?が異なります。
従来のアカウンタビリティでは「あなた」もしくは「私」でした。
一方、新たなアカウンタビリティでは「私たち」になります。
事業で行政・企業・NPOのセクターの枠を超えてボーダレスに取り組むのと同様に、ファンドレイジングにおいても資金提供者・活動団体・支援対象者を一つのチームとして捉えて、プロセスを回すことが重要となります。
問いの共有が鍵となる
ファンドレイジングにおいて多くの人たちに責任の共有をしていくために重要になってくるのが問いの共有です。
例えば以下のような問いをなげかけて、意見を出し合って、行動をして、反応を見ていくことができると、それぞれに当事者意識が生まれてくるのではないでしょうか。
・1年後、寄付で支援をしてくれている人にどんな心理的状態になってもらいたいか?
・職員が自信を持って寄付を募れるようになるには何が必要か?
・寄付者も私達と仲間だと思ってもらえるにはどうしたらよいか?
・私達が支援している当事者の方々に、資金提供者のことをどのように伝えたらいいだろうか?
・現場職員の熱意をどのように寄付者に伝えることができるだろうか?
・支援している当事者の成長や成功を寄付者と共によろこびあえるにはどうしたらいいだろうか?
さいごに
ファンドレイジングの責任は誰か1人が負うものではなく、組織全体で担うものです。
いくら当事者に質の高い支援を届けることを重要視したとしても、資金獲得ができなければ支援自体が届けられなくなります。
対人支援をしているメンバー、人事などバックオフィスの職員、代表、理事、ボランティア等のなんらかの役割を持っている人たちは、それぞれの役割を果たした上で、組織全体に関わりのあるファンドレイジングにも責任を持ってもらう必要があります。
・主語を「私たち」にしていくにはどうしたらいいのか?
・「私たち」の中に寄付者や支援対象者を含めるにはどうしたらいいのか?
こんな対話を重ねながら当事者意識を高めていくことが新たなアカウンタビリティへの第一歩になっていきます。
NPOの伴走支援者の役割は、そうした対話のお手伝いや、新しいアカウンタビリティへの移行を伴走することでもあります。
私はNPOの伴走支援をしています。今回のnoteを読んで、新しいアカウンタビリティへの移行に伴走をして欲しいと思われた方は、公式LINEやホームページからお問い合わせください。
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