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小さな命の生きようとする力を信じる~今にも消えそうな苗が、見違えるほどの成長を見せるまでの1ヵ月

都内の小さな畑で無農薬・有機の野菜づくりを始めて、最初に植えたのは、キャベツと茎ブロッコリーだった。どちらも日照りの中で苗を植えた。

植えてから、なぜか苗はどんどん元気をなくして、今にも消えてしまいそうな、弱弱しい姿になっていった。約1週間が経ち、本当なら成長しているはずのそれは、最初の時より小さくなってしまった。

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(左:キャベツ、右:茎ブロッコリー)

でも、できることと言えば、多少の水をあげることと、励ますことくらい。ほとんど何もできないに等しいことに無力感を覚えた。あの小さな命が、きつい日差しの日も、激しい雨風の日も、屋外でさらされていることを思い、心配になった。

さらに10日後、二つはまだ小さかった。他の区画ではすくすく成長しているのに、なんで自分の子たちだけ。もうこのまま成長しないかもしれない、大人にはならないかもしれない。そろそろ何か手を打ったほうがよいのではないか。

もうここで諦めて引っこ抜いて、新しい苗に植え替えるという選択肢はあった。けれど、「死んでいるわけではない。まだ生きようとしている」という畑のアドバイザーの言葉を聞くと、その選択肢はとれなくなった。ひょろひょろとした茎と葉には、確かにそこにはまだ宿っている生命を感じた。それを摘んでしまうことはできない。

そこで、小さくなった2つはそのままに、その側に元気な苗を2つ植えさせてもらった。

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(奥の2つが最初の苗、手前の2つが新しい苗)

奥の2つは、それからしばらく小康状態が続いた。手前の2つも、このあと少し元気がなくなった。最初の失敗の原因と思われるものを改善したのに。

それから気温が落ち着き、秋雨の日が続いた。さらに20日ほどが経った。雨の上がった畑を行ってみると。

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見違えるほど立派に育っていた。あのひょろひょろの体から、ちょうど1ヵ月後。奇跡の復活劇を見たようだった。相変わらず少し体が小さいものの、ちゃんとキャベツと茎ブロッコリーの姿に向かっていた。

そしてこの2つ、苗の時は見分けが難しいほど似ていたのに、もうすっかり個性ある形になっている。

小さな植物が、過酷な環境の中で、さらに体を小さくしながら、それでも確実にそこに宿していた、生きようとする力。それを信じてよかったと、静かな感動と安堵を覚えた。そしてこの日、ここにまた一つの新しい命が加わった。(左下:ナバナ)

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