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手放すことからはじめる ~「取材・執筆・推敲」読書メモ③

「取材・執筆・推敲 書く人の教科書」(古賀史健著)を読んで、特に心に残った3ヵ所をメモしている。

3ヵ所目は、最初に読んだ時には印をつけておらず、再読のときに目がとまって追加した。読むタイミングが変われば、視線も心の動き方も変わる、という当たり前のことを実感した。

取材を終え、さて書こう、となった時に、はたと手が止まる。何を書けばいいのか、何から書けばいいのか。どうやって「書くこと」を決めていけばいいのか。まさに今、自分がその状況にいる。それに対する著者の答え。

ぼくの答えは簡単である。「なにを書くか」を考えるのではなく、「なにを書かないか」を考えるのだ。(p212)

俳句と、同じだった。

俳句の17音という小さな器は、あっという間にいっぱいになる。ぎゅうぎゅうに詰め込まれれば、言葉は輝きを失う。何を言わないか、が常に問われる。俳句が「省略の文学」と呼ばれる所以だ。空間で、描く。そんなことをつらつらと書いたこともあった。

この箇所に追加の印をつけたのとほぼ同じ日、ヨガで呼吸について学んだ。呼吸が浅い人の多くは、「深く吸い込めない」と感じる。いくら頑張って吸おうとしても、なかなか呼吸は深くならない。では、どうしたらいいか。

吐くことから始める、のだそうだ。すべて吐き切る。すると、次の息は自然と深く内部を満たす。

まず吸うのではなく、まず吐く。先に不要なものを手放せば、自分に必要なものが入ってくる。手放して手放して、そこに残ったもの、本当に大切なものを掴む。それが、自身に平和や安らぎをもたらしてくれる。ヨガでは、そう考えるらしい。

何となく続けていた仕事。最初は何となくではなかったのに、いつの間にか何となくになったもの。人間には恒常性があって、現状を維持しようとする力が働く。

日々変わり続ける自分が、いま本当に大切と思える仕事をするには、「今の仕事をしながら次の仕事を見つける」のではなく、「まずは今の仕事を手放す」ことではないか。吸って吐くのではなく、吐いて吸う。手放すことで得た、大切なものを掴んでいく。断捨離も、同じ。買ってからではなく、まず絶つ。捨てる。離す。すると大切なものが見えてくる。

「何を書かないか」の選択は、きっと表面的なテクニックではない。結局はそういう生き方からしか、生まれてこないのではないか。

そう思って、その日、仕事を手放してみることにした。

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