「食文化」における微生物学的視点からの一考察
「食品」とは
ある意味で次のようなサイクルで確立されたもの
・身近にある「モノ」を口にしてみた
↓
・腹を壊すなど、トライ・アンド・エラーを繰返す
↓
・食べられたものを「食品」として認知
実はこの過程において腸内細菌の変化がある。
仏・ロスコフ海洋生物研究所は、
「紅藻類から、炭水化物分解酵素を発見した」
と2010年Natureに発表している。
さらにこの酵素、人の腸内細菌では日本人のみに存在していたとか!(欧米人n=18検出0名、日本人n=13検出5名)
その結果を受けて、海外科学系サイトの一部などで、
「日本人の腸は、寿司のために作られている」
(Japanese Guts Are Made for Sushi)
といった、見出しがつけられたほどらしい。
その昔、海藻は殺菌されておらず、また日本人が海藻を食べる慣習があったのでこの酵素が腸内細菌に常在するようになったのでは?
「食品」としての認知、さらに続きが…
・食品として認知
↓
・食の習慣化・長い食経験の積み重ね
↓
・「食文化」へ醸成
この独自の食文化こそが「和食」であり、世界にも認められるものとなった。
しかし、こういった食文化を支えるものとしては、海苔のような独特の食材が必要不可欠である。さらに、これらを分解する機能を持つ人種が、長い時間を掛けて産みだした、と考えると面白い。
余談だが、海外に輸出された「和食」の代表である寿司。この寿司に、海苔を使用しないで食されているのは、海苔を食べる風習がない地域だからなのだが、一方で、欧米人にはこの酵素を有していないことから、本能的に海苔を排除した、とみると興味深い。
参考論文
“Transfer of carbohydrate-active enzymes from marine bacteria to Japanese gut microbiota.”By Jan-Hendrik Hehemann, Gaelle Correc, Tristan Barbeyron, William Helbert, Mirjam Czjzek, & Gurvan Michel. Nature, Vol. 464 No. 7290, April 8, 2010.
“Genetic pot luck.” By Justin L. Sonnenburg. Nature, Vol. 464 No. 7290, April 8, 2010.
(2014.01.05 facebook ノートから転載・改編)
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