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人間サイボーグ化による体験変化?UXの観点で現代のイケてなさを評価

前回記事では、UXデザインのためにテクノロジーを抑える重要性、一つのテクノロジーとしてサイボーグ化の現状、人間と電話(テクノロジー)の距離が0に近づいているトレンドを見ました。

すると、この前回記事の読者から一つの問いが寄せられました。

「電話・スマホが人体に埋め込まれた時の、最も大きな体験変化はなにか?」という問いです。

ぜひ今回はこの問いに答えることで、UXデザインの一事例を具体的に噛み砕いて理解するきっかけにしていただければ幸いです。 


早速本題に入りたいところですが、その前に一つ質問です。

あなたは缶詰の開け方の歴史を知っていますか?

唐突感あるとは思いますが笑、電話について語る前の助走として、クイックに缶詰の歴史を共有させてください。

缶詰は、1810年にイギリスで軍用保存食として発明されました。用途は、戦いの中で持ち運んでも腐らないように。そして開け方は3段階の進化を遂げていきます。

【開け方力ずく時代】

缶詰発明当初の開け方は主に3通りで、ハンマーで叩き壊すor銃で破壊するorナイフでこじ開けるでした。この開け方はなんと約50年続きました。

現代人からすれば意味が分からなくないですか?もっと穏便な開け方があったろうと。

でも、当時の人にとっては、保存できることこそが価値でした。何の疑問も無くハンマーで叩き割り中身を飛び散らせても、保存できる喜びは厳然とあったわけです。

【缶切り時代】

50年もの「開け方力ずく時代」を経て、1858年にやっと缶切りが発明されます。これによって、液体も缶詰に入れられるようになりました。これでも現在人にとっては物足りないはずです。しかし、当時の人々は、前より優しく開けられるだけで大喜びでした。液体も取り扱えるし、缶切りを持ち歩くくらい苦でも何でもなかったのです。この時代は100年続きます。

【指先でプシュッ時代】

そして、「缶切り時代」から一世紀、1959年に缶切り不要のイージーオープンエンド方式という画期的なものが発明されます。ピンとこない方は、プルタブと言えばイメージできますでしょうか?

細かくは分類は色々あるようですが詳細は省きます。これでやっと現代人にとってもしっくり来るものになると思います。


という風に缶詰の歴史を見てきましたが、わざわざ紹介して何を伝えたかったかというと、、、

「各時代の行動様式のイケてなさ、時代の当事者が気づくのは超難しい」

これが分かるのではないでしょうか?何の疑問も持たずに50年も力ずくで缶を開けていたし、100年間も缶切りを握りしめていたのです。


ここで本題です。缶詰と同じように、"ポケットにスマホ"がいかにイケてないかを考えるには、50年後くらいの完全にサイボーグ化された人類の立場から今の時代を振り返る必要があります。そこで50年後の人間になったつもりで「ポケットにスマホ」の体験を評価してみましょう。

UXデザイン_電話が体内埋め込み

(「ポケットにスマホ」の体験評価)

忘れる: 2020年頃の人たちは、スマホを家に忘れることがありました。言いしれぬ不安、ストレスはもちろんのこと、忘れている間は運動量などのヘルスケアデータは取れないし健康管理がずさんになっていました。

無くす: スマホのように個人情報がたくさん入ったものを無くす可能性があった時代は、無くさない工夫(GPSとか)をしていたみたいです。「肌身離さず」という言葉ははるか昔からありますが、体に埋め込めば肌身から離れないのになぜやってないのでしょうか。

取り出す: 一日何十回、何百回と使うスマホなのに、わざわざポケットから取り出す?その面倒臭さに気づかないのが2020年の人々でした。「取り出すのが面倒くさい」というような意見が、当時の文献にはほとんどありません。ポケットに入れたのか、カバンに入れたのか覚えていなくて慌てるなんて愚の骨頂。左手に埋め込んでおく、、というのがイメージできなかったのでしょう。

気づかない: 「すみません、電話がかかってきていたことに気づきませんでした」、こんな会話が許される2020年、、、ゆるい時代でした。非効率すぎますね。笑

壊れる: スマホ全盛期の人々は、落として割って何万も払って新品と交換していました。バキバキの醜い状態のスマホで耐え忍ぶ人もいたそうです。

汚れる: スマホはいつも使うものなのに、外気に晒して、トイレ空間にも持ち込んで、その上で掃除はたまにしかしていませんでした。そんな汚いものを持ち歩き、食事中も触っているなんて、、想像を絶します。。。

ケーブルまみれ: スマホ、タブレット、PC、スマートウォッチ、電子書籍等々全部別々の物理機器の充電で家がケーブルだらけでした。もはや、ケーブル好きだったのかな?と疑ってしまうレベルです。


ここまでの体験評価で、ポケットにスマホ入れて持ち運ぶことで発生する負の体験が明らかになりました。埋め込んだ場合は、このような負の体験はありません。つまり、この負の体験があるか無いかが、ポケットと埋め込みの手段の違いによる体験変化と言えます。


今回少し極端に表現してみましたが、遠い未来人になったつもりで、"現状の体験"を評価することで、よりドラスティックなUXデザインが可能であることが分かったのではないでしょうか。今日はここまで。

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