デザイン思考とは何か?①従来型の問題解決と何が違うのか?

"デザイン思考"、「分かったようでわからない」言葉だと思っている人も多いのではないでしょうか?そこで、今日のNoteは"デザイン思考"についてクリアにします。


- デザイン思考とは何か?

- デザイン思考でできること/できないことは何か?

という切り口で考えていきます。

 

デザイン思考とは何か?(概要)

一言で言うと、デザイナーが"デザイン"(=問題解決)を行う時に駆使する"思考"(=考え方)を、フレームワーク化したものです。問題解決の方法論の一種で、これを活用するのは元来デザイナー以外の人たちを想定されています。(個人的には、フレームワーク名として"デザイン思考"というのはどうもしっくりこないのですが、割愛します)


デザイン思考は従来の問題解決とどう違うのか?

①まずプロセスの観点で比較します。

従来型問題解決は、

0. 目的設定→1. 現状整理→2. あるべき姿定義→3. ギャップ整理→4. 解決策検討→5. 実行

のような流れです。 

デザイン思考では大まかに、、、

1. 共感→2. 問題定義→3. 創造→4. プロトタイプ→5. テスト

のような流れを取ります。 

ターゲットとする人(ユーザー)を徹底的に観察し、その人に共感できるほど理解を深めた上で、その人が抱える問題が何かを定義します。(1. 共感→2. 問題定義)

その問題を念頭に置いた上で、解決策をブレインストーミング等で洗い出し、筋の良さそうなものからプロトタイプ(簡単な試作品のこと)を作ります。(3. 創造→4. プロトタイプ)

そして、実際の人(ユーザー)に使ってもらい、意見を反映して改善していくような流れです。(5. テスト)

このプロセス比較から明らかに分かることは、"実行"に対するスタンスの違いです。従来の問題解決では、考えて考えて最後に"実行"します。一方、デザイン思考では、ある程度考えたら、試しに"実行"(=プロトタイプ作って、テスト)してどんどん改善していくことを志向しています。このスタンスの違いは、デザイン思考の根底にあるユーザー(人間)中心の考え方にあります。「答えはユーザーのみぞ知る。机上でとろとろ考えずに、早く形にしてユーザーに使ってもらうこと」との価値観があるかどうかがスタンスの違いを生んでいると考えられます。

②次は問題解決の対象(論点)についての比較です。

従来型の問題解決では特に制約はありません。ビジネスだと大体「どうすれば売上が上がるか?」や「どうすればコストが下がるか?」など、企業のKPIを起点とした論点が大半です。そのようなKPIにおけるゴール設定がなされ、施策を検討し、最後に「顧客にどういう影響があるか・どういうサービスが提供できるか?」や「従業員にどう働いてもらうか?」が論じられます。

一方、デザイン思考で取り扱う論点は、プロセスが共感から始まっていることでも分かるように、人(User)起点に限定されます。デザイナーは、常にユーザー(人間)を起点に問題解決を行うのです。「普通のビジネスパーソンもユーザーのことを大事にするよ」という声が聞こえてきそうですが、「大事」にするよレベルではありません。「起点」にするのです。

最初に、「顧客が(従業員が、ビジネスパートナーが)どのような体験をすべきか?」を定義し、それを実現する手段としてどのような施策が必要なのかを考えます。そして、その施策がビジネスに対してどのようなインパクトを持つか、KPIなど定量的な効果試算を行います。


デザイン思考でできることは何か?

これまで論じてきたような違いから、デザイン思考で次の2つのことがやりやすくなります。

1. 対象とする人(ユーザー)が嬉しいと思える解決策立案

出発点がユーザーの徹底的理解であり、問題もユーザー目線で決めていくので、従来の問題解決に比べてユーザーに優しいものができる可能性が高いです。

2. より現場感覚を捉えた解決策実行

本物を作る前に、試作品を使って実際のユーザーに意見を聞く。そして意見を反映する。そんなステップが用意されているので、机上では気づきにくい、痒いところに手が届く解決策が実現する可能性が高まります。

 

デザイン思考でできないことは何か?

1. 良い解決策が生まれるかどうか、は担保できない

デザイン思考は、あくまでフレームワークです。

一方、このフレームワークを使っての問題解決では、ユーザー中心で考える、ワクワクしながら考える、既成概念に囚われず考える等のマインドセットが不可欠です。

学んでそのプロセス通りにやれば万事OK、ではありません。使う人のマインドセットが超重要です。

2. イノベーティブな何かが生まれるか、には疑問が残る

"創造"というステップがありますが、これは大まかに言うと

①ブレインストーミングで解決策候補をとにかく洗い出す

②多数決をして筋の良さそうな解決策を絞り込む

の2つから成り立っています。

本当にイノベーティブなものが、多数決で見いだせるのでしょうか?

iPhoneを想像していただければと思いますが(初めてiPhoneを見た時に、物理ボタンが無いなんてありえないという声が非常に多かったはず)、

イノベーティブなものは情熱ある少数の力で、あらゆる批判に耐えながら実現していくものです。

よって、デザイン思考を使ってイノベーティブな何かが生まれるかについては疑問を持たざるをえないと思います。

問題解決のフレームワーク云々というより、そこにセンスの良い人がいるか否か、多様な人が集まっているか否か、奇抜なアイデアを尊重する風土があるか否か、がイノベーティブなものを生むかどうかを決定づけると言えます。


以上が、デザイン思考概要、できること/できないことです。ここまで噛み砕くと、デザイン思考とは何かがクリアになりませんか?

ここら辺は、私自身がコンサルを行う際に、一番最初にお客様にご理解いただくところです。なんとなくの流行り言葉として"デザイン思考"と使っているのか、このような本質的な違いを理解した上で活用するかは雲泥の差です。

ぜひとことん腹落ちした上で、活用していければと思います。

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