「経理アタマ」の鍛えかた
本日は自分の頭の整理アウトプットです。
■分かる範囲で予測する
将来の計画を立てようとすると分からないことがたくさん出てきます。
しかし、分からないからといって、そのままでいいわけではありません。
頼られる経理になるためには、分からないとあきらめるのではなく分かる範囲で予測をします。結果として予測が外れても、分からないからブランクとしているよりは、予測して数字を入れたほうが結果の数字とズレていないはず。
■変動要因は何かを考える
資金繰り表ではなく、翌期の事業計画書をつくる場合で考えてみましょう。例えば、比較的予測しやすい固定費の家賃について、今後1年間の家賃がどれぐらいになるか予測してみます。これは簡単ですね。
現在の家賃×12が今後1年間の予測家賃となります。
何もなければ予測と実際の数字は一致するでしょう。
ところが、事務所が1年以内にどこかに移転するとなると、途端に予測がずれてきます。
「だから予測はしたくない!」と思わないでください。
事務所家賃は、移転したり支店を別に開設したりすると変動します。
また、たとえ移転しなくても、更新時に家賃が増額になることもあります。更新時に交渉することで、逆に家賃が減額される場合もあります。
1年後の家賃を予測すると、家賃の変動要因を押さえることができます。
ここがポイントです。
どういった要因で経費が変動するのかは、予測しなければ、考えることはなかったと思います。
今後1年間の家賃を予測するには、経営者に「近々移転する予定はないですか?」とか、「支店を開く予定はないですか?」と聞いてみましょう。
そこで予定があるのなら、変動要因を計画に織り込むことができます。
経理に求められているのは、本当に事務所が移転するかどうかを当てる占いのような予測ではなく、事務所が移転した際の会社の数字に対するインパクトを計画書に織り込むための予測です。
経営者も事務所移転や支店開設でコストがかかることを把握しているはずです。予定を社長から聞き出したら、敷金や保証金などすぐに経費にならないものや、仲介手数料や引越費用など追加でかかる費用をもれなく把握するようにしましょう。
会社の移転のようなイベントごとに関連する経費にどのようなものがあるかを知って、もれなく計上することも、予測の精度を高めるポイントです。
移転先の敷金や家賃などは金額が予測できないかもしれませんが、近隣相場などを見て計画に入れ込むことはできるはずです。
確定していないから予測に入れないのではなく、確定していなくても通常発生することが予測できるものであれば、計画に織り込むようにしましょう。
経理の仕事を機械的にこなすのではなく、興味を持ちながら行っていると、こういうときに違いが出てきます。請求書や領収書の裏にある会社の活動を感じとるようにしましょう。
家賃の例で説明しましたが、売上や仕入、他の経費についてもそれぞれ変動要因があります。どのようなことがあると変動するのか意識して考えてみてください。変動要因が分かるようになると、分からなかった将来の予測ができるようになります。
■いくつかの未来を想定する
予測どおりにならないものについて、予測が外れたからといって落ち込むことはありません。
何か自分が見逃していた変動要因があるのか、分析をして予測の精度を上げるようにしましょう。
まったく予測がつかないものについては、いくつかのパターンで数字を出してみるという方法がオススメです。「うまくいった場合」「普通の場合」「うまくいかなかった場合」のような感じです。
予測は当てることが大事なのではなく、結果の想定範囲をあらかじめ把握してから、社長が実行するかどうかの意思決定につなげることに意味があるのです。
変動要因が分かると、経理が会社の未来をある程度の範囲内で予測できるようになります。
会社の未来は、経理が予測したとおりとなる場合が多くなります。
会社の未来を予測できるようになったら、必要な資金繰り計算もできます。また、会社のピンチに気付き、ロジカルに会社の問題点を指摘することができるようになります。
経営者は経理がピンチに気付いた時点で、たいていはそのピンチに気付いているものです。それは経営者としての勘に基づく場合が多く、経理からのロジカルな指摘があると心強いはずです。
帳簿付けという会社活動の後処理を行いながら、会社の未来を予測する力を身に付ければ、経営者の参謀としての働きをすることが可能となります。
経理という同じ仕事を日々行っていたとしても、意識を変えることで見えてくる世界が変わります。
過去処理を行っているときでも、常に会社の行く末を予測しながら仕事をするようにしましょう。
いまは経営者から必要とされていなくても、鍛え上げた予測力が経営の役に立つときがきっと訪れます。