見出し画像

ベトナム・まだまだ出口の見えない第4波(2021年6月5日夜現在)

ベトナムにおいて現在続いている新型コロナウイルス感染拡大は第4波と言われ、5月初の連休時期から始まり、ほぼ1カ月が経ちました。これまで強い感染対策により短期間で感染を抑えてきたベトナムですが、今回はやはり色々様子が違うよう(以下、以前書いたnoteもご参照ください)。

今回は約1カ月経った今回の第4波が現在一体どういった状況なのかを、概括的にまとめてみたいと思います。

ベトナムでは圧倒的な「波」となった第4波

まずは以下のグラフをご覧ください。赤字が今回の第4波、そして黒字が前回の第3波(注:リンク先noteでは2021年1-2月の感染拡大を「第4波」と呼んでいましたが、一般的には昨年12月の感染拡大を「波」としないようで、今回が第4波になっているよう)における感染者数ですが、その差は歴然です。第3波では早々に新規感染者が少なくなりグラフが平らになっていますが、今回の第四波では今でも200人超/日のペース(12日間連続200人超え)で伸び続け、第4波の新規感染者数は5421人(2021年6月5日夜現在)となっています。

画像2

そして、地域別にみると今回の感染者が多いのはバクザン(Bắc Giang)、バクニン(Bắc Ninh)、ホーチミン、そしてハノイとなります。最大規模の感染者を抱えるバクザン省はあるにしても、前回の第3波がほぼ北部ハイズオン省に集中しているのに比べ、今回は39地方省に広がり、今でも広がり続けているなど、なかなか収束の兆しが見えません。やはり変異株の感染力は強いというべきなのでしょう。

画像2

以下では主たる感染地となっている3つの地域について、経緯と現状を紹介していきます。

①北部地方省・工業団地での大規模感染

今回感染拡大で最も多くの感染者を出しているのは北部バクザン省(2,968人)、続いてバクニン省(1,053人)。両省とも工業団地での大きなクラスターが発生し、更にそれがデルタ変異株(「インド株」と呼ばれていたもの)であったこともあってか、多くの感染者が出てしまいました。

アップル、サムスンなど世界に名だたる製造業、そして日系企業も多数進出しているこの地域。これまでのように「とにかく工場閉めろー、ステイホーム!」とばかりも言えない、難しいかじ取りをベトナム政府も迫られたと思います。

ここへきて政府は「ワクチンを工業団地の労働者に優先接種する」として、実際に接種が始まっています。ワクチン全体量から考えると、どれだけできるかは疑問ではありますが、世界のサプライチェーンとも繋がる北部製造業への影響を抑え、ひいてはベトナム経済への影響を最大限に抑えたいという態度を示しているといえます。感染が収まる気配はまだありませんが、中期的にはこういったワクチンが効果を発揮して来るでしょうか(ただ工場労働者は職場を移るでしょうし、そもそもそんなにバクザン、バクニンにどれくらいワクチンをアレンジできるのか…?)。

ここにきて、5日夜のニュースではバクザン省の感染拡大は、現在ほぼ同省Việt Yên県のみに限定できつつあるという報道も出てきました。うまく感染が収まると良いのですが。

②教会団体からの集団感染に苦しむホーチミン

そして、ベトナム経済の中心ホーチミン市。当初は感染が北部中心かと思われ、ハノイ程の被害は無いなあと思っていました。ただその後、キリスト教系信仰グループにおける集団感染がかなりの広がりを見せ、周辺他省にも広がったことから、深刻さはむしろハノイを上回るかのような現状です。

その後、このクラスターは250人近くに感染を広げ、少なくとも6地方省への感染拡大にも寄与してしまっています。濃厚接触者(F1)、更にその接触者など検査を行った関係者は、6月5日までに39万人にも上るとのこと。その広がりの大きさ(そしてベトナムの相変わらずの徹底追跡ぶり)が伺えます。ここ数日は一日に30人ずつくらいのペースで市中感染者確認が推移しています。何と言ってもベトナム経済の中心地であるホーチミン市、ここでの感染が収まらないとベトナムの感染が収まったとは言えません。

上記クラスターが発覚して以降、5月30日からはほぼロックダウンとも言える強い措置が取られ始め、1週間が経った今もまだ強い対策は続いています。ホーチミン市自身はもちろん、周辺地方省が感染拡大を警戒する雰囲気は強く、経済圏を共有するドンナイ省では「ホーチミン市から来た人は21日間隔離!」と指示を出し、住民がかなり反発し施策が緩和されるなど、やや混乱した状態も続いています。

③当初感染が多かったハノイはやや収束傾向

今回第4波のある意味「震源地」とも言えたハノイ。特に国立熱帯病病院や国立がん病院でのクラスター発生はショッキングで、感染対策はどんどん強さを増してきました。5月25日には飲食店、カフェの営業もテイクアウトを除いて停止、各種サービス業も公園も閉まっていて、外に行っても職場とスーパーくらいしか行くところがないような、そういった状態が現在も続いています。

ハノイ市での市中感染者は最近減っており、ここ5日間ほどは一桁の新規感染者に収まっています。ただ、省境を接するバクニンなど北部各省での感染者は多いため、ハノイ市はまだ感染対策を緩める気配を見せていません。ハノイのカフェでベトナムコーヒーが飲めるのも、子供たちがオンラインでなく学校で登校できるのも、もう少し先になりそうです…。

他、ダナン市でも一時期多くの感染者がみられましたが、最近は落ち着きを見せ、感染対策は徐々に緩められる傾向です。この3日間は市中感染が報告されていません。

検査&追跡&隔離からワクチンシフトへ・・・

全体的にみると、200人以上の感染者が報告されるのが12日連続と、収まる傾向にあるとは言えません。これまで「検査&追跡&隔離」の速さと強さで勝負してきたベトナムの感染対策は、今も一定の効果を示しつつも、「どうやら今回はそればかりでは・・・?」とも感じられます。

それもあってか、今回はベトナム政府も一気にワクチン戦略のアクセルを踏んでいます。中国製ワクチンが今のところは入っていない、東南アジアをみてもかなり低いワクチン接種率(少なくとも1回接種した人の数が人口の1%強程度)をどう改善していくか、これらが焦点になって行きそうです。そういったベトナムでの新型コロナワクチン事情は、また改めて書いてみたいと思います。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。