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【読書記】シン・中国人:今の中国の若者をリアルに感じるために

春の読書週間第2弾、今回は「シン・中国人-激変する社会と悩める若者たち」(ちくま新書)です。著者の斎藤淳子さんは、随分前になりますが、北京でインターンをしている頃に仕事を教えてもらった先輩。現在は様々なメディアに発信するライターとして活躍されています。「結婚・愛」といった普遍的な切り口を通して、現代中国社会・経済のリアルがわかる一冊です。

金銭感覚についていけない!

ベトナム在住が17年目とだいぶ長くなったとはいえ、かつては都合6年半も中国・香港に住んでいた自分。ちょっとやそっとの中国話では驚かないぞと思いつつ、かなりのけぞったのは本著で紹介されている金銭感覚。直近で住んでいた2011年から考えても、その変化は激しすぎます。

億ションどころか2,3億円は当たり前の北京の住宅事情、それを「結婚条件」として求める新婦家族とそれに応えるために資本動員をかける新郎家族。ベトナムも「男が家を準備して当然」観念は一部あるので、息子を持つ自分も他人ごとではありません(苦笑)。

男性側から女性側に支払う結納金文化が農村から都市に大胆に持ち込まれ、貧困地域や内陸地域がより結納金が高いという著者の指摘は、農村も俯瞰して見ている流石の視点だなあと感心するばかり(北京でインターンをしていた頃を思い出しました)。

世界一のジェネレーションギャップ!?

著書内でも紹介されている多くのエピソードは、中国が「圧縮式経済発展」をあまりに短い時間で遂げたがゆえにできている、ジェネレーションギャップがゆえのものです。もちろん、どの国にも、日本にもジェネレーションギャップはありますが、そのギャップを越える深い溝が中国にはあると著者。

それぞれの人たちが(特に若い頃を)過ごした時代背景があまりにも違うため、各種の考え方、金銭感覚へ与える影響も大きく違っています。そこを理解すると、このジェネレーションギャップが理解でき、ひいては中国人を理解することにも繋がります。

昔の理解に惑わされず、今の中国人を理解するために

本著で紹介されている多くの中国人の声は、自分のように「2010年代前半には中国に駐在していたんですよ」という人間でも驚きを感じるところが多かったです。習近平時代になって以降中国に長期滞在する機会がなかった自分にとって、こんなに変わっているのかあ、都会人としての中国人がこんなにも増えて来たのかあと、驚きと共に感慨もひとしお。

自分も著者と同じころ、1996年に北京に留学しており、その頃の中国人との付き合いを思い出してしまいました。エリートなんだろうが本当に素朴で、まだ経済的には当時の日本人とはだいぶ違う状況だった彼ら・彼女らには、たくさんの良い思い出がある一方、金銭感覚が違い過ぎて日本人と一緒の遊び方が難しかったと感じたのを覚えています。今はその都会振り・発展振りが同等どころか日本を凌駕していっている中国都市部の人たちは、また大分違う心構えを持って接していきたいなあと改めて思った次第です。

しばし離れている中国での暮らしを懐かしみながら、あっという間に読み終わりました。今の中国の若者を理解するために、更には様々な世代の中国人の考え方を理解するため、長年北京在住で社会を見つめている著者ならではの視点が沢山詰まっています。それでいて読みやすく、おススメの一冊です。

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わたしの本棚

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。