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【お薦めの一冊】 人生を変える逆転の発想 / 「その科学があなたを変える」 リチャード・ワイズマン

今まで多くの本を読んできました。

その中には、私の人生に良い影響を与えてくれた本が沢山あります。

そんな本の感想を書き留めておくことで、私自身の備忘のためにも、また、これを読んで下さった方の本選びにも、少しでもお役に立てばと思っています。

1.あなたの感情や考え方が簡単に変えられる?

皆さんは、自分の感情や考え方が簡単に変えられる方法があると聞くと、どう思うでしょうか。

例えば、一瞬で明るい気分になれる方法、一瞬で自分に自信をつける方法などがあるとすればどうでしょうか。

そんな魔法なような方法は、この世に存在しないと思う方もいるかと思います。

しかし、本書ではそんな魔法のような方法を紹介してくれます。

しかも、多くの科学的根拠に基づいた方法なのです。

2.著者 リチャード・ワインズマン氏とは

著者のリチャード・ワインズマン氏は、イギリスのハートフォードシャー大学の教授で、心理学を専門としています。

以前はプロのマジシャンでもあったというユニークな経歴も持っています。

科学的アプローチを用いて人の心に関する働きを研究しており、多くの科学書も執筆しています。

また、AmazonやGoogleでの公演も行っており、その知名度もかなり高い方です。

3.人は、嬉しいから笑う?

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皆さんは、「人はなぜ笑うのか」と聞かれたら、何と答えるでしょうか。

「嬉しいから笑う」「楽しいから笑う」と答える方が多いでしょう。

皆さんがこのように考える背景には、「人の感情が行動に影響を与える」という常識的な考えがあります。

この場合で言えば、嬉しいという感情が、笑顔という行動を引き起こすという考え方です。

しかし、100年以上も前に、この常識的な考えに疑問を持った哲学者がいました。

それがウィリアム・ジェームズです。

彼は、次のような説を唱え、以後、彼の説は多くの心理学的研究によって、その正しさが証明されていったのです。

4.人は、笑うから嬉しい

「人の感情が、行動に影響を与える」と常識的に思われていることに対して、ウィリアム・ジェームズは「人の行動が、感情に影響を与える」と主張したのです。

つまり、

今までの常識=「人は、嬉しいから笑う。怒るから顔をしかめる。」
新しい説=「人は、笑うから嬉しくなる。顔をしかめるから怒る。」

と主張したのです。

本当にそんなことがあり得るのでしょうか。

この説が正しいかどうかを検証するため、実際に自分自身で実験してみるのはいかがでしょうか。

【怒った顔になってみる】
まず、周囲に誰もいないことを確認して、怒った顔を20秒間してみて下さい。
眉間にシワを寄せて、口を固く閉じて、への字に曲げて・・・。
・・・
今の気分を何となく感じて下さい。

【笑顔になってみる】
それでは、次に、笑顔を20秒間してみて下さい。
口を少し開いて、頬を上げ、目尻を下げて・・・。
・・・

今、皆さんの気分はどうなったでしょうか。

怒った表情をした後よりも、笑顔の表情をした後の方が気分が明るくなってはいないでしょうか。

このように、たとえそれが作り笑いであっても、行動(笑顔)が、感情(明るい気分)に影響を与えているのです。

5.行動で気持ちを変えてみる

この「行動が感情に影響を与える」という現象を利用して、自分の感情を変える多くの方法が実証されています。

例えば、本書で紹介されている方法の一部だけでも、以下のようなものがあります。

・笑顔を作ると、気分が明るくなり、幸せを感じる。
・怒った表情を作ると、怒りを感じる。
・大股で、背筋を伸ばし、腕を振って歩くと、元気を感じる。
・のろのろと、うなだれて歩くと、沈んだ気分になる。
・胸を張り、背筋を伸ばすと、自信が出てくる。

それでは、また一つ、実際に体験してもらいたいと思います。

【明るく自信に溢れる言葉を口にすると、気分が上向きになる】
周りに誰もいないことを確認して、実際に自分が今どのような気分であるかにはかかわらず、次の文書をゆっくり2回ずつ声をあげて読んでみて下さい。
・今、私はとても気分が良い。
・今、私はとても自信がある。
・今、私はやる気に満ち溢れている。
・今、私は楽しくて仕方がない。

どうでしょうか。

実際に気分が上向きになったと感じた方が多いのではないでしょうか。

このように、明るく、前向きな言葉を読み上げるだけで、実際にそのような気持ちになれるのです。

したがって、楽しい気分になりたい時も、これからはお笑い番組をテレビで見たり、YouTubeで面白映像を探す必要もないのです。

ただ、自分で笑顔を作れば良いのです。

つまり、ある気分になりたいのであれば、今、あたかもその気分であるかのように行動すれば良いのです。

6.ドキドキするから好意を抱く

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ここまで、行動が感情に影響を与えることを紹介してきましたが、同様に、体感反応(※)も感情に影響を与えます。

(※)体感反応=心拍数の上昇、呼吸数の増加、発汗や体温の変化などの生理的現象

つまり、「感情が体感反応を引き起こす」のではなく、「体感反応が感情を引き起こす」のです。

例えば、一般的には「恐怖を感じたため、心拍数が上昇し、手に汗をかく」と思われていますが、実際には「心拍数が上昇し、手に汗をかくので、恐怖を感じる」のです。

この点で有名なのが、いわゆる吊橋効果です。

【吊橋効果】
風に揺れる危険な吊橋を渡ると、心臓の鼓動が早くなります。そのため、男女でそのような吊橋を渡ると、その際に感じた心臓の鼓動を、恋心によるドキドキと捉え、相手に好意を抱くというものです。

これはまさに

(1)「好意を抱いたので、心臓がドキドキした」のではなく、
(2)「心臓がドキドキしたので、好意を抱いた」

という点を示したものです。

また、ストックホルム症候群と呼ばれる現象も、この観点から説明できます。

【ストックホルム症候群】
立て籠り事件等で人質となった人たちが、犯人に対して好意に似た感情を抱くことがあります。これは、犯人が人質に対してある程度のやさしさを示した際に顕著にみられる現象で、その原因は、人質になったことによる心拍数の上昇や緊張が、犯人に対する好意と感じてしまうことによるものと思われています。

それでは、ここで一つ実験を紹介します。

ここまでの内容を踏まえると、次の実験はどのような結果となるでしょうか。

ある実験室で、相手に電気ショックを与えるという実験を行います。実験室内の温度を上げていくと、相手に与える電気ショックはどのように変化するでしょうか。
一方、冷たい水を飲んで体を冷やして同様の実験を行うとどうなるでしょうか。

【ヒント】
人は、暑い環境下では、心拍数は増加し、発汗します。そのような体感反応が行動にどのような影響を与えるでしょうか。

結果は、ぜひ本書でご確認下さい。

7.同じドキドキでも抱く感情が異なる

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「体感反応が感情を引き起こす」ことが分かりましたが、実は、同じ体感反応でも、その場の状況によって異なる感情が引き起こされることがあります。

例えば、心臓がドキドキする(心拍数の増加)という体感反応についても、

(1)それが、暗い夜道を一人で歩いていて、急に物陰から何か音が聞こえた場合であれば、恐怖と感じます。
(2)一方、それが、喫茶店で一人でいた際に、向かいに座った美男または美女から見つめらた場合であれば、好意やときめきと感じます。

といった正反対の感情を抱くことがあります。

これは、人は、体感に変化が生じると、周囲を確認し、自分の体感に変化が起きた原因を選び取り、それにふさわしい感情を抱くためです。

つまり、同じ体感反応であっても、それをどのように解釈するかで、本人の抱く感情が異なるのです。解釈次第で、激しい動悸は怒りにも、幸福感にも恋心にも変わるのです。

そして、このように、同じ体感反応でも、解釈次第で異なる感情を抱くという点を利用することで、鬱や恐怖症など心の悩みへにも対処することができるのです。

8.同じ体感反応でも解釈で気持ちは変えられる

このように、同じ体感反応でも、その解釈によって抱く感情が異なることを利用すし、パニック障害や鬱を和らげる方法が提案されています。

例えば、パニック障害の方は、自分の体に起きる体感反応をマイナスの方向に解釈する傾向があると考えられます。

つまり、心拍数の増加や手のひらの汗を、悪い方に考えやすいと言われています。

その対処法は、自分の体に感じた生理的変化をプラスの方向に解釈することです。

例えば、「人前で話をする際に心臓がドキドキするのは、緊張しているのではなく、やる気によって興奮していると解釈する」などです。

また、鬱の傾向がある人も、何か悪いことが起きた場合に、自分のことを攻めることが多いと言われています。

鬱の傾向がある人は、何か失敗が起きると、それは自分の責任であり、将来もまた失敗すると思い、それがまた他の場面にも及ぶと考えてしまいます。

一方、鬱の傾向が無い人は、自分の欠点に目を向けることが少なく、将来を楽観的に捉え、失敗してもそれが他の場面にまで影響することは無いと考えます。

このような解釈の違いによって、同じ現象に対しても、自分自身で抱く感情が大きく異なってくるのです。

そして、このような鬱に対しても、やはり行動することによって対処する方法があります。それが、行動活性化療法と呼ばれるものです。

その詳細や具体的な実行方法は本書で解説されていますので、関心のある方はぜひご確認下さい。

9.行動で痛みや怒りを抑える

ここまでくれば、「行動が感情に影響を与える」という法則もだいぶ分かってきたかと思います。

この法則を利用すれば、行動で痛みや怒りも抑えることもできます。

例えば、注射を受ける際、どちらの行動と取った方が痛みを感じにくくなるでしょうか。

(1)注射されている所をしっかりと見つめ、肩をしぼめ、顔をしかめる。
(2)注射されている所は見ないで、胸をはり、背筋を伸ばし、力強い姿勢をとる。

また、怒りを感じた際、どちらの行動を取った方が怒りを鎮めることができるでしょうか。

(1)怒りのままに、サンドバッグを叩く、叫ぶ、悲鳴をあげる、物を投げる。(2)しばらくの間、静かに座っている。深呼吸をゆっくりする。

皆さんであれば、答えはもう分かるかと思いますが、気になる方は本書でご確認下さい。

10.行動で、人の信条や考え方を変える

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今までは、自分自身である行動を取ることによって、自分の感情を変えることを学んできました。

そして、これを更に応用させると、相手に一定の行動を取らせることで、相手の信条や考え方も変えることに繋がります。

・自分の感情を変えたい=自分でその行動を行えば良い
・相手の感情を変えたい=相手にその行動を行わせれば良い

例えば、あなたが環境保護の募金を募っている場合、どのようにすれば、多くの人に募金をしてもらえるでしょうか。

「行動が感情に影響を与える」という考えを利用すれば、相手に環境意識が高い人であるかのように行動してもらえば、募金に応じてもらえる割合も高くなるはずです。

本書で紹介している実例を参考にすれば、

(1)とにかく募金だけを依頼する。
(2)まず、環境保護に賛成する嘆願書に署名をお願いする。その上で、募金を依頼する。

といった方法がある場合、(2)の方が、嘆願書に署名をすることによって、環境意識が高い人であるかのような行動を取ることになるので、募金に応じてもらえる割合が高くなるはずです。

また、ある意見に賛同するかのように行動すると、その意見に賛同する気持ちを持つようになります。

具体的には、頭を上下に動かしながら話を聞くと、賛成する気持ちになりやすいと言われています。

そこで、あなたが何かで相手を説得させたい場合は、あなた自信がうなづきながら話すと(人は無意識に相手の動作を真似る習性があるので、相手は無意識にうなづく可能性が高い)、相手は知らぬ間にあなたの意見の同調する可能性が高くなります。

一方、頭を左右に振りながら話を聞くと、話を否定する気持ちになりやすいです。

話を聞きながら、何か騙されるているかもしれないと感じた際は、決して頷きながら聞くのではなく、頭を左右に振りながら聞いてみて下さい。

11.外見で性格を変える

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ここまで、行動で気持ちを変える方法を紹介させて頂きました。

その根本にある、「ある気分になりたいのであれば、今、あたかもその気分であるかのように行動する」という考え方は、行動のみならず、外見にも応用することができます。

つまり、外見も自分自身の感情に影響を与えるのです。

例えば、服装は、第三者からの印象に影響を与えるだけでなく、自分自身の感情にも影響を与えます。

ある実験では、看護師の白衣を着ると、他人への攻撃性が低くなることが明らかになっています。

また、アメリカのある地域では、警察官の制服を、厳しい紺色の軍人風のものから、よりカジュアルなブレザータイプものに変えた結果、警察官が威圧的な態度をとることが少なくなり、市民に傷害を与えた件数も5割低下しています。

そのため、私たちの実生活においても、仕事などの重要な場面できちんとした身なりをすることは、他人からの印象が良くなるだけでなく、着ている本人の自信が増すという点においても、非常に理にかなった行動と言えます。

12.行動を変えると全てが変わる

このように、本書では、「人の行動が感情に影響を与える」という法則に基づき、自分や相手の感情を変える方法を多く紹介しています。

ここで紹介させて頂いたこと以外にも、

・恋愛に効果的な方法
・人と絆を強くする方法
・禁煙に効果的な方法
・性格を変える方法

・更には、老化を防ぐ方法

までも紹介しています。

また、本書は、理論や実験データだけでなく、それらの実生活での具体的な活用方法についても「メソッド」という形で数多く紹介してくれています。

そのため、ただ読んで終わりといった本ではなく、学んだ知識を日常生活に簡単に取り入れることができます。その点でも非常にお薦めの一冊です。

本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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