「いつか日本の“黄金の丘”と呼ばれる日を夢見て」Rue de Vin(長野県東御市)訪問記
2023年5月訪問
はじめに
Rue de Vin(リュードヴァン)/長野県東御市
フランス語で「ワイン通り」の意味。
それは彼らの葡萄畑とワイナリーに通じる一本の通り、Rue de Vin から始まります。やがてこの通りにはレストランやオーベルジュが現れ、次にもまた新しいワイナリーや葡萄農家が誕生する。それはまるで点と点が繋がって線が出来るように、「ワイン通り」は延びていきます。
いつか日本の“黄金の丘”と呼ばれる日のことを夢見て・・・。
歴史やコンセプト
かつて一面に広がる豊かなリンゴ農園は、農業従事者の減少によって人の侵入をも拒むような雑木林へと姿を変えていました。
Rue de Vinは荒廃した農地にもう一度息吹を与え、豊かな農地として取り戻すべくブドウの木を植え育て、ワインを造り始めます。
「ゆくゆくはブドウだけで完結する循環を目指ざしています。」
そんな力強い言葉で出迎えてくださったのは、醸造家 小山英明さんです。
現在畑は11品種41箇所に点在、なんと植えられている品種比率は今年でほぼ同一になる予定です。今、正にご自身の畑だけでRue de Vin「ワイン通り」が出来上がってきています。
加えて約三年前に宿泊施設ができ、御堂に新しいワイナリーの建設と販売施設を施工中とのこと。
将来的にはヤギを放ち、チーズショップを併設予定と意欲的に取り組まれています。
畑について
小山さんの畑は、農薬を減らすことに拘っていますが、それはコストダウンのためで、いわゆる自然派と言われるものに拘る為ではないです。
病的要因はほとんどが環境中にある。
ベト病は水中におり、そこから這い上がってくるので逃れられません。
ボルドー液は表面のみに効果出すので、内部に入り込んでくる病気には効きません。内部に効くのは科学薬剤。しかし本質的にはどう悪いのか解明されきれていないところもあるのが事実です。ボルドー液もそういった意味では良い面だけとは言い切れないのが現状です。
新しいワイナリーの言う「減農薬をしています」の謳い文句は、新しい苗木にはまだ病気を蓄えていないから言えることだと、小山さんは危惧します。後から農薬撒かないことの恐ろしさを知ることもあるのです。
最初のうちに科学薬剤を適切に入れ、殺菌すれば(蔓が伸び切る迄3回ほど)、そのあとは少量のボルドー液の散布でほとんどが収まるのが小山さんの手法。最終的には環境に優しく、効率重視は流石の一言です。
撒かない≒正義、というアンチテーゼ。
知ること、そこから何を選び、どう使うか。
それこそがワイナリーの手腕であるな、と強く腑に落ちました。
醸造について
造りとしては、シャルドネのアンウッデッドが基本。
そしてソーヴィニヨン・ブランのあの香りの出し方にはやはり秘技がありました。
シュール・リーで基本は放置後、香りの出方をよーく観察。香りに還元が出る品種なので、そこに空気を含ませる量やタイミングであの唯一無二の香りは決まります。やり過ぎは香りが消えるので、もし消えすぎてしまったら泡ものの商品として出荷するといいます。ニュートラルな品種はとても泡やシャンパーニュに向くので、シャルドネやピノ・ノワールがとても良いそう。
ピノはタンニンが効いていて、メルローは少なめだが果実味が強い。ピノは15年目の畑からつくたものです。
基本や効率を大切に、やりたいことを有言実行されている。
向上心からのトライ&エラー。
テロワールを表現することに拘りすぎて本質を見失わないようにされていて、リカバリー力の重要さを知る方。
駄目な年ほどどうするか、造り手の思想や力が反映されると、これまたヒシヒシと感じました。
テイスティング
・シャルドネ2022
葡萄のパワーを素直に感じる果実味&コク深いが樽が効いていない分、爽やかさが引き立ち、白身魚の濃厚なクリームソースや鶏、豚までの肉料理をカバーできそう。
美味しい!と素直に感じる、シャルドネまっしぐら。
・ヴァンミニヨンルージュ2022
メルロー、山葡萄、ガメイの面白く美味しいワイン。濃密な果実味に伸びやかな酸が効いていて、やや乳のニュアンス。優しく丸いが柔らかい抑揚がある。
たかやしろ産のメルローと山葡萄は買い葡萄。酸がややボヤけていたので、自社のガメイで締めた。7.2.1.の割合。ガメイは中伊豆ワイナリーのガメイを譲り受け、自根で10年目とのこと。
IMADEYAが蔵元に求められていること
コロナが明ける頃、ワインを飲む客層にも変化が出始めました。
日本ワインだからと飲む人や凝り固まった概念の緩和。
面白みだけではない選択、本質的に「美味しい」を伝える仕事をお互いしていきたい、と強い気持ちでお話しいただきました。
その為の品質のレベルアップ、世界の中に並べるワイン、として文化レベルの活動をしていきたいと。
日本ワインそれぞれの特質に合わせた、飲み手タイプ別のアプローチが必要と考えるので、弊社でも力を入れている様々なイベントの中で、日本ワインの付加価値を如何に伝えるか、大きな期待を示していただきました。
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