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ペイザナ×とおのどぶろく プロジェクト その4

岩手県遠野市でどぶろくを造る佐々木要太郎さんと、山梨県勝沼でワインを造る、ペイザナ農事組合法人代表であり、ドメーヌ・オヤマダの小山田幸紀さんの対談の第4弾。
共に極力科学的なものを使用せずにお米やブドウを栽培している佐々木さんと小山田さん。それ故に、虫や気候に影響を受けます。今回は、小山田さんのブドウ栽培についてお伺いしました。
※敬称略

-ブドウは甘いので虫が多く寄ってきそうです。

小山田:
確かに寄ってきますが、虫を取っても悪あがきというか、気休めですね。最善を尽くしているという納得をしたくてやっています。笑
でも言うほど来ないですよ。長年やっていると、同じ虫に悩まされることはなくなります。

- 虫もブドウの味に飽きるということですかね?笑

小山田:
どうなんでしょうね。笑
その時には大量にある虫が発生しても、翌年には全く畑に現れないということもよくあります。
でも動物は飽きてくれないですね。猪や鹿は毎年来ます。
動物の生態系のバランスを変えようと思うと、その地域全体の話になってしまうので、自分の畑だけ変えてもどうしようもできないんです。

あと、ブドウは木の病気が出てしまうので、どうしても完全無農薬で栽培するということはできません。
よっぽど病気に強いブドウ品種を選べばできるかもしれませんが、そういう品種だけ選ぶとワインが美味しくならないです。

佐々木:
ブドウの収穫は、ハサミで枝を切って収穫するのですか?

小山田:
そうです。収穫時期は8月中旬から11月初旬頃までなのですが、真夏は朝6時前から10人くらいで収穫して、その後仕込み、片付けをして日が暮れる前には終わります。

- 去年東京から朝4時に起きて収穫の手伝いに行ったのですが、8時に着いた時にはもう終わっていました。笑

小山田:
夏は早朝の涼しい時間から始めた方が体が楽ですからね。8時はもうお昼くらいの感覚です。
明るくなったら朝、暗くなったら夜です。笑

佐々木:
それは正に農家の生活ですね。

小山田:
でも草刈は夏もお昼にやっています。山梨は最高気温40度になることも多いのですが、その中で仕事しているとかなり仕事をした気分になります。笑
特に最高気温が日本で一番の時は、すごく頑張った気になりますね。笑

佐々木:
暑さの話が出ましたが、田んぼを見ていて思いますが、やはり場所によってやり方は大きく変わりますね。
自然農法で有名な福岡正信(※)さんの本に書いてあることをそのままやってみたのですが、収量があまり上がりませんでした。
※愛媛県で「不耕起 無肥料 無除草」を特徴とする自然農法を体現し、多くの書籍・詩・画を通じて自身の哲学を伝導した農哲学者。

福岡さんのおっしゃっていることは、実際にそれを行っていた愛媛のような温暖な地域ではうまくいったのですが、遠野のような北の地域には合わなかったのです。
その場所の土地癖を見極めるということが一番大切だと、その時感じました。場所によって異なるので、本来は正解か、不正解か、ということはないんですよね。

慣行栽培をされている方から失敗したという話をたまに聞きますが、それは、慣行栽培のやり方、例えば薬を蒔いたのに思うように効かない、というような方法に当てはめようとすると「失敗した」という考えになってしまうのですが、そもそもそれに当てはめようとしなければ正解も不正解もないんです。自然栽培に失敗という概念はないです。

大事なことは、その土地をよく見て根気強く諦めないでやり続ける、ということですね。
失敗ととらえてしまうことがちょっと違うんですよね。

-小山田さんはブドウ栽培で失敗したと思うことはありますか?

小山田:
いつも小さく色々と失敗しています。毎年完璧を目指していますが、完璧にできたことはないです。笑
でも長年やっていると、良くも悪くも自分の型ができてくるので、例えば虫の話でも、そこだけ気にしている訳ではないし、周りから思われているほど収量も落としていません。
毎年、自分のイメージしている範囲の中に、ブドウの品質も収まってくる感じです。

-自分の型ができてきた、という感覚はいつ頃からありますか?

小山田:
ルミエールに入って5年くらいは、色々な化学農薬を使って栽培していましたが、うまくいく時もあれば、病気になる時もあって、結局科学農薬を使っても使わなくても病気になるなら、使うのをやめてみようと思い、会社にお願いして使用をやめました。
科学農薬を使わなくても、ブドウの木をしっかり見て、正確なタイミングでやるべきことをやれば、出来は変わらないですね。
それ以外にも、様々なことを試してみましたが、今はあまり新しいことはやっていません。
それよりもタイミングを正確に計って、精度を上げていくことに力を入れています。

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佐々木さんと小山田さん、お二人に共通しているのは、自分で現場を見て考え、お米やブドウを栽培し、お酒を造り続ける、ということでした。
私たちがお二人の造られるものに惹かれるのは、正にこの人たちにしか造れないものだからなのだと、改めて思いました。
次回はいよいよ最終回。その頃にはどぶろくも完成するかも…?

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