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【1分小説】美人でずるい彼女の秘密

私は、美人でいつも得している高校の同級生まやがずっと羨ましかった。私と同様に大学から上京しまやは、彼氏かわからない男からアップルのヘッドフォンをプレゼントされたり、いとも簡単に広告代理店に入社したり、まやのずるい生き方に私はただ憧れていた。

まやは誰もが認める美人で、彼女の鮮麗された顔立ちはそのまま「美人」という言葉の体現だった。彼女はまさに高嶺の花で、高校時代周りから憧れの目で見られていた。当時、年上の彼氏から高校生は手が届かないブランドの贈り物もされていた。そんな憧れの対象の彼女がなぜか私とは気が合い、私の前ではよくふざけ、他の人には見せない一面を見せてくれた。みんなが近づけない彼女に私は近づけることに、少し優越感を覚えたりもした。

「私、高校卒業後に二重整形したんだ。」ある日、仕事終わりに東京駅近くで飲んでいた時、まやはぽつりと呟いた。「へぇ、全然気づかなかった。」私は驚きを隠しながら、返事をした。元の素材が良い彼女が整形をしていたことにショックを受けていた。

「高校時代の彼氏、覚えてる?束縛がひどくてやっとの思いで別れられた。」彼女は続けた。「この前告白してくれた人がいたけど、最近愛想を尽かされたんだ〜。気持ちだからってたくさんプレゼントも渡されてたのに、同じ好きを相手に届けられなかったの。」笑ってるのか、泣いているのかわからないような表情だった。

今まで知らなかった。苦労しながらも、周りにはそんな一面を見せなかったなんて。

まやの話を聞きながら、私は心の中で彼女に対する見方が変わっていくのを感じた。美人でいつも得をしていると思っていた彼女にも、深い苦しみや悩みがあったのだ。彼女の話を聞いて、私は彼女に対してより一層の愛しさを覚えた。

みんなずるく生きているようで、みんなそれなりにしがみつきながら生きているのだ。その事実に気付いた私は、自分の平凡で泥臭い生き方にも価値があるのだと感じ始めた。

その夜、私はまやと一緒にいることが、これまで以上に特別に感じた。彼女の苦労を知り、その上で彼女を支えられる友人であることに誇りを持った。

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