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おしゃれに恋焦がれる美智子

美智子はおしゃれに憧れていた。彼女のインスタは、最新のトレンドを紹介するアカウントに溢れ、それらをひたすら真似した。洋服は大好きだったが、自分のセンスにはまったく自信がなかった。

「どうしてみんなあんなにおしゃれに見えるんだろう?」と、流行りの黒レースのビスチェを白のTシャツに合わせて美智子は鏡の前で悩んでいた。インフルエンサーのように着こなそうと試みるたび、なんとなくしっくりこない。流行の服を買っても、実際に着てみると自分には似合わない気がしてしまう。

そんなある日、友人の千佳子と一緒にショッピングに出かけた。千佳子はいつもセンスが良く、何を着てもおしゃれに見えた。千佳子のパーマヘアを引き立てるカラフルなバンダナも、自分が付けたら浮いて見えるんだろうなと美智子は密かに彼女を羨ましく思っていた。

「そのワンピースすごく可愛いじゃん!」美智子が手に取った鮮やかな花柄のワンピースを見て、千佳子が言った。

「すごく素敵だけど、私にはちょっと派手かな…」と、美智子は控えめに答え、元の場所に戻した。

「試してみたら?きっと似合うよ!」と、千佳子は笑顔で勧めてくれた。美智子は少し勇気を出して、そのワンピースを試着してみることにした。

試着室でワンピースに着替え、鏡の前に立つと、思っていたよりもずっと自分に似合っていることに驚いた。鮮やかな花柄が肌のトーンを引き立て、腰元が絞られているシルエットも美しかった。

ワンピースを着た自分と目があった。選んだ服を着て、心躍っている自分に嬉しくなった。

「すごく似合ってる!おしゃれなんて自分が好きなもの着たもん勝ちなんだから、もっと自信持っていいんだよ」と、千佳子が嬉しそうに言った。その言葉に、美智子は少し照れながらも心から嬉しかった。

その日から、美智子は少しずつ自分のセンスに自信を持つようになった。いわゆる量産型の洋服だらけだったクローゼットは少しずつ個性をもち、彩られていった。これまで、ダサイと思われないための洋服選びが、1日で自分自身をもっと輝かせるための素敵な時間に変わった。

ある日の週末、美智子は自分のスタイルで街に出かけることを決心した。彼女が選んだのは、あのワンピースに合わせたシルバーのシンプルなアクセサリーと低めのヒール。街を歩いていると、自然と背筋が伸び、歩く一歩一歩に自信が感じられた。思わずビルの窓に映る自分を横目で見つめてしまった。


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