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#43 人生に最善を尽くしているか?!~映画【王の涙】に学ぶ【中庸第二十三章】~

2014年に公開された韓国映画『王の涙~イ・サンの決断~』(原題:『逆鱗』)、直近だと2019年日本の芸能人の間でも評判になり、大人気となった韓国TVドラマ『愛の不時着』で北朝鮮の軍人役を演じたヒョンビンが、自身の兵役復帰後に主演した記念すべき作品。

本国韓国では、ヒョンビンの復帰を待ち望んだファンの狂喜乱舞っぷりばかりが注目され、作品自体への評価はあまり宜しくなかったようで、日本での公開も限られた映画館のみだった。

ところが、どうした訳か、本国韓国よりも高い評判がクチコミで広がり、日本での上映期間が延長され、日本国内でもコアなファン層を獲得したという、異例の作品なのだ。

この作品が日本人の、特にビジネスパーソン達のハートを釘付けにしたのは、ヒョンビンの彫刻のように美しく鍛え上げられた背筋・・・ではなく、映画の中で度々引用された【中庸第二十三章】ではなかったかと思う。


【中庸とは?】

中庸(ちゅうよう)というのは『極端な生き方をせずに、穏当なこと。偏らず中立的な様』という概念や、語彙的意味を持つが、ここでいう【中庸】とは、儒教学の『四書五経』という学問のひとつを示す。(儒教の祖は孔子)

・四書・・・「論語」「大学」「中庸」「孟子」
・五経・・・「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」

「中庸」は「論語」、「大学」と学び、3ステージ目、もしくは最終ステージで学ぶ章にあたる。その第二十三章を映画の中よりご紹介しよう。

【中庸第二十三章】
小事を軽んぜず、至誠を尽くせ
小事に至誠を尽くせば、誠となる。
誠ある者は滲み出る。
滲み出れば、現われる。
現われれば、いよいよ著しく、
著しければ、感動を呼ぶ。
感動は変化を起こし、変化は万物を生育する。
天下において、至誠を尽くす者のみが
己と世を、変えることができる。

映画「王の涙~イ・サンの決断」より

『孫子の兵法』にも似た香ばしい匂いが漂ってくるが、それもそのはず、孫子も孔子も、紀元前500年前、中国「諸子百家」の一門として登場する超有名人です。この頃の中国の学問は面白いw(”墨家”とか大好きだし。)

『孫子の兵法』や『儒教学(論語)』は、その後千年以上の時を経て日本へ渡り、日本の名だたる戦国武将達が競って学んだ学問になるわけで。江戸時代になれば、それを寺子屋で学び、やがて「塾」になり、塾生達が明治維新を成し遂げと・・・、つまり、連綿と日本人のDNAの中に、しっかりと組み込まれている思考や思想の基礎、学問の楚は、2500年前の中国製だったりする・・・という大いなる皮肉w
(しかも、こういった学問の伝来は、なんと仏教よりも早いw)

でもだからこそ、「孫子の兵法」も「中庸第二十三章」も、どっかで、刺さるんですよね。日本人の心に。そして、2500年も前の学問から、問われているような気がして、ハッとする。

”お前は日々至誠を尽くしているのか?”と。

”誰かや何かに文句を言う前に、自分自身が最善を尽くしたのか?”と。

逆に、自分自身が「最善を尽くした。」という、自負や満足感があれば、他者からの目や評価なんて、気にならないのではないか?

「結果」が思う様なものでなくても、「最善を尽くした」なら、あきらめもつくってもんではないか?

他者のあり様に依存しなくても生きていけるのではないか?

他者に対して「お前は最善を尽くしてないよね。」と、いちいち腹の立つことも少なくなるのではないか?

「今日は最善を尽くせなかった・・・。」と落ち込むならば、明日、最善を尽くしてみればいい。明日がダメなら、また次の日・・・

そうやって、至誠を尽くすことを諦めなければ、いつか、『誠ある者』になれるのかなって。それが、一度きりしか生きられない人生を、最善のものにしてくれるのかも知れない ―――。


【 映画の見どころ 】

映画では、【 中庸第二十三章 】の内容を加味しながら、どの登場人物が最も『至誠を尽くし誠ある者なのか?』そして、それは、『誰の心を大きく動かしていくのか?』、王は、誰の為に、何の為に、涙を流したのか・・・。

そんな所に注目して観ていくと、まぁ、もう、号泣必至www

あと、韓国時代劇の「様式美」ですね。
兵役が明けて間もなくの、ガチの訓練で鍛え上げた心身で放つ矢の鋭さ、強さ、美しさには、惚れ惚れしちゃいましたねw

騎乗も、訓練のせいか、とても美しい姿勢で乗りこなします。私は映画俳優ではラッセル・クロウが最も乗馬は巧いと思っていますけど、ヒョンビンも、いい勝負してますね。

作品の構成も、「運命の24時間」と銘打って、米国ドラマ「24」構成になっており、中々にスリリングでテンポが良かったです。

【 キラリと光ったセリフ 】

天命、これを本性という。
本性に従うは道、
道を修むるは、「教え」
いかなる事でも、望みがあれば、
誠を尽くせ。
さすれば、成就する。

イ・サン(ヒョンビン)のセリフより

ちなみに、イ・サンは、李氏朝鮮王朝第22代国王である正祖(チョンジョ)の事。朝鮮史上もっとも長く続いた李王朝の中でも、”賢帝”として誉れ高い。韓国では誰でもが知っている歴史上の人物。

作品の舞台は1777年、イ・サンが即位して1年後。
1777年と言えば、日本は江戸時代、あの「鬼平」こと長谷川平蔵がまだ30代で、父親のお役目に付いて、京都御所へ赴任していた頃なんですよねw

海外の時代劇を観る時は、日本史と合わせながら観るのも面白いですよー。

最後は予告編で締めてみますw


※何度でも観たい、格好いい「中庸シーン」


いつか、金はなくても、『誠ある者』になりてぇ~なぁ・・・・w

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