見出し画像

画力が上がる模写と上がらない模写の違い

すごくたくさん模写して、かなりの時間を費やしたのに、ちっとも絵が上手にならなかったという話をよく聞く。

でも、模写は画力をあげるのに有効だと語る人も多い。

つまり、がむしゃらの模写には画力向上のために必要な何かが足りないはずだ。

そこで何が必要なのかを探すべく、基本的なことから調べて、効果の出る模写のやり方のポイントを踏まえて実際に練習して効果が出るか試してみた。


デッサン、模写、クロッキーの違い

この3つの差がそもそもよくわかってなかったが、こちらの本を読んでやっとスッキリわかった。

✅デッサンは、人体の100%の情報を学ぶ方法。
本当に鍛えられるのは「見る力」なんだよね。手で描く一方、例えば絵画の入り組んだ線を理解し、バランスを適切に取り、引く線を補正する。そういう「目」で見る作業すなわち「観察力」を高めるものなので「見ること」が大事。観察力をつける訓練とも言える。

✅模写は、先人の知恵を知る行為。
ここで学ぶのは、先人が「何を残し、何を捨てたか」ってこと。でも模写だけだと、先人が「何を捨て、なぜ残したか」がわからないから、デッサンも同時に行う。人体の100%の情報を元に捨てたものと残したものを照合すると初めて「先人の配合表」が理解できる。

✅クロッキーは、描く速度を早くする練習。
特徴を素早く観察してシルエットで捉えるのが基本。ただ観察力がないと難しいので、クロッキーにはデッサン力が必要。


この本を読むまで「模写」も「デッサン」も、見えている部分をカメラのようにパシャっと切り取ってキャンバスに写すイメージだったが違うとしっかり理解できた。それはデッサン。

デッサン力をつけるということは、観察力を上げることなので、カメラのセンサー感度やレンズの質を上げるようなものなのだろう。

全くデッサン経験がない状態は、観察力がない状態で、カメラに例えると、レンズが曇ってたり、ひずんでたり、割れてたり、写し取る感度が非常に低い状態なんだろうなと理解。


模写する意味はあるのか?

最近楽しんで見ているお絵描き系YouTuberのなつめさんちでも、同じトピックがアップされていた。厨二病の夫婦のやり取りと絵を書くのを見てるとすごく楽しくて絵が描きたくなってくる。

プロの絵師のなつめさんちの2人はこの動画の中で、こう言っている。

ある3つのポイントをおさえて
正しく模写をしないと、その時間が無駄になります。


つまり、たくさん模写しても上達が実感できない人は、この3つのポイントをおさえていない可能性がとても高い。

逆に言えば、その3つのポイントを押さえれば模写で絵の上達が見込めるはず。

気になるそのポイントを盛り込んだ模写の方法と実践の様子はこの記事の最後に記載。もちろん気になる人は、先になつめさんちの動画をどうぞ。とにかく楽しいのでおすすめ。


たくさん模写をしても絵がうまくならない理由

上記の本にも模写のやり方が書いてあって、なつめさんちの動画と同じことを言っていた。

意識するのはレイアウト。模写元の対象だけをみるのではなく、模写元のキャンバスの上に絵や写真がどんなふうに配置されているのかをよく観察する。するとモチーフと空間の関係や正確な配置が見えてくるので、全体のバランスが取りやすくなる。

模写で最も多いミスは、線をただ追って描くような単なるコピーをしてしまうこと。模写では作者が何をテーマとし、どこを最も見せたいかを考え、2番め、3番目とどう力を抜いているのか、どう構図を選び、同演出を施したのかを観察し、想像しながら描くことが重要。そうすることで、うまい秘密や早く描くコツをつかめるようになる。


要するに、

✅模写は、先人が100%の情報が見える中から、何を取捨選択したかの先人の頭の中を知る作業


そう考えると、線をなぞるだけのコピーを作る練習をいくらしたところで、先人(憧れの絵師)と同じような考え方や景色の切り取り方ができるようになるわけではないので、うまくならないのも当然だと納得。


効果のでる模写のやり方

なつめさんちの動画と上記の本を参考に画力の上がる効果の出る模写のやり方をまとめるとこうなる。

✅効果の出る模写のやり方
STEP1:この模写から何を学びたいか?の目的を決める

目や髪の描き方、体のバランス、色のバランス、構図などなど。

STEP2:お手本を観察して、先人の思考と技術を見つける

絵のテーマはなにか、一番見せたいところはどこか、そのためにどんな構図で、どんな線を引き、どんな線を引かなかったのかなど、先人の脳みそを覗く気分でお手本を徹底分析する。

STEP3:STEP1とSTEP2を踏まえて描く

STEP4:描き終えたら、お手本と比較して良い点悪い点を洗い出す
うまくできたところを褒めてあげる。その次に出来なかったところを課題として練習する。


よくあるがむしゃらに模写しまくっても絵が上手にならない問題は、考えたり、技術を盗んだりするSTEP1,2と4を抜かして、STEP3でただ単にコピーをしているだけだから。

じゃあ、STEP1, 2, 4を入れたら絵は上達するのか?は気になるところなので、実践してみることにした。


効果の出る模写を実践してみた結果

実際に「人の笑顔のイラスト」を描けるようになるために、上の4ステップに少しアレンジを追加した練習をしてみた。

その実践結果をまとめたのがこちらの記事。

むちゃくちゃ恥ずかしいが、途中に「練習前のひどい下手な絵」も載せている。そこから、だいたい4時間でどれくらいかけるようになったかは見てもらえればわかると思う。

もとが下手ってのもあるけれど、個人的には4時間でかなり上達が実感できた。

こういう「できるようになった!」を重ねていくと、絶対もっとうまくなれるという自信が湧いてくるし、絵を描くのが楽しくなって、爆速でイラストが上達できるんじゃないだろうかという淡い期待も出てくる。


まとめ

ここまでの内容を3行でまとめるとこうなる。

✅模写は、お手本の絵師の頭の中を知る練習(何を取捨選択したか)
✅模写の目的を決め、思考と技術を盗む気で観察してから、実践して振り返れば模写で絵はうまくなる
✅線をなぞるだけのコピーを作る模写は無意味。時間の無駄


模写してもオリジナルの絵が上手にならないのは、絵の上手い人の技術や思考を盗めていないからだろう。

ここで敢えて「盗む」という表現を使ったのは、この本の一節を思い出したから。

以前、この本を読んでいてハッとさせられたのが、この一節。

Don't just steal the style, steal the thinking behind the style.
You don't want to look like your heroes, you want to see like your heroes.

単にスタイルを盗むだけではなく、そのスタイルの後ろにある考え方を盗むのだ。
ヒーローのように見せたいのではなく、ヒーローと同じように世界を見たいのだ。

まねるその背後にあるのは、その憧れの人の思考を盗むこと。

模写ってそのための練習なのだろう。

しっかりとスタイルの背後にある考え方を盗む気でたくさん模写して、イラスト上達に励んでみようと思う。

■あわせてよく読まれている記事もどうぞ

過去のオススメ関連記事
・笑顔が描けるようになる練習法と3つのコツ
・イラストのぎこちなさの原因:大ラフとアタリ
・12時間でiPadイラスト制作はどこまでうまくなるのか?

▼風の時代にワクワク楽しく自分を知るマガジン(随時更新中!)

人生をちょっぴり楽しくするための 知識や小ネタを発信しています。 スキやコメント、フォローが 創作活動の励みになってます! ● 面白かった〜 ● もっと読みたい♪ と思っていただけたら 「これで塩ようかん食べな」的な感じで サポートしていただけたら嬉しいです。