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【展覧会レポ】龍のイメージ/龍に託された想い

約3,600字、写真23枚。長めなのでお時間あるときお読みいただければ。

今年最初の、展覧会。


行ってきたのは東京都港区三田にある大学ミュージアム KeMCo(Keio Museum Commons)。開館以来、毎年干支にちなんだ新春展を開催している。今年のお題は「龍の翔る空き地」

※2月10日まで


本当はもっと早く、正月三ヶ日開館してるミュージアムで、展覧会始めするつもりだった。しかし、元旦、2日と(それ以降も結構立て続けに)ショッキングなご時勢。頭からスッポ抜けてしまった。


ようやく新年の展覧会巡りをスタートしたが、世間も私もまだ本調子ではない。ゆるく気長に、お読みいただければ。




1.概要・特徴

2024年の干支は「辰」(龍)。干支のうちで唯一の想像上の生き物です。龍は洋の東西を問わずいろいろな文物に表されてきました。自然を操る龍、秘境に潜む龍、守護する龍、あるいは戦う龍など、そのイメージはさまざまです。本展覧会では、新年の幕開けに、慶應義塾のキャンパスで文化財を巡る活動を行う部門から、「龍」にまつわる作品を集め、みなさまを個性豊かな龍の住処にご案内します。

公式ページより

(美術系の)展覧会というと、まず絵画(挿絵等も含む)がメインにくるかな、と思ってしまう。それが、いい意味で期待が裏切られる。上記引用にあるとおり、「洋の東西を問わずいろいろな文物に表され」た龍が集められている。なので、個別の展示品もさりながら、それらをどう括り、そしてどう名付けたかを確認するのが、かなり楽しい。キュレーターの人も、そこを楽しみながら準備されたのではないだろうか。セクションタイトルが妙に壁の上の方にレイアウトされていたのも、きっとそういうことだろう(たぶん)。通常の視界・視線の高さで個々の展示品を楽しみ、一塊(グループ)を見終え展示品から視線を外しふと上を見る。すると、セクションタイトルが飛び込んできて、「なるほど」となる。


今回所要時間は、50分。ややゆっくり回った部類だと思う。



2.作品、風景、催し

まず、恒例のルールチェック。展覧会愛好家の嗜み。


さて、肝心のコンテンツ。

ここKeMCoらしい、言い変えると総合大学のミュージアムらしいバラエティに富んだラインナップ。多様な専門領域からなる展示全方位に最もらしくコメントをするのは、荷が重い。個人的に印象に残ったビジュアルと一言コメントぐらいの、ライトな感じで紹介させていただく。

なお、今回セクションタイトル、セクションテキストの類は基本掲載してない(一部例外あり)。理由は、上述のとおり。これから行かれる方の会場現地での楽しみを奪わないため。

また、記事中、写真掲載順と展示番号順や会場動線は特に一致させてない。念のため。

no.6 ラテン語時祷書, no.5 詩篇付き時祷書, no.4 詩篇唱集
西洋貴重書あるいは西洋中世専門家にオススメ。
no.2 新撰朗詠集色紙, no.3 詠歌大概
日本古典文学愛好家にオススメ。
no.12 井伊直政書状 [島津義久上洛等]
押印が、龍。 
戦国武将ロマン派にオススメ。
no.13 武田勝頼朱印状
朱印のロゴデザインが、龍。
戦国武将ロマン派にオススメ。
no.20 彦火々出見尊草子
日本むかし話にお世話になった人にオススメ。
no.34 刻字甲骨
いわゆる甲骨文字。今から3000年以上前の物ですよ、コレ。
人生においてこれより古い人造物と対面することは、なかなか難しいのでは。
白川静ファンにオススメ。
この掛軸だけ、展示の高さが低いのが気になった。
私は背は高い方ではないのに、作品を見ようとすると下にうつむく感じになる。
他の掛け軸系作品とも、展示の高さが合ってない。
この謎は、私には解けなかった。



ちょっと分かりづらいが、今回の展覧会は実は二部構成。展示の1/4ぐらいは「唐様前夜:林羅山とそのコミュニティ センチュリー赤尾コレクションより」

R1 藤原惺窩筆 和歌
この赤尾コレクションコーナーで1番良いと感じたのが、これ。
実は作品というより、その地(生地?支持体?)の美しい枯れ具合に見惚れた。
懐紙とか、短冊とか。
和歌を嗜まれる方にオススメ。



展覧会あるあるだが、「これ面白い!」と思う品に限って「撮影NG」や「ネット公開はご遠慮ください」だったりする。なので、ここで紹介してない範囲にも面白いものがある。見に行けないけど、せめて何が展示されているか知りたい。そこですかさず、公式サイトで展示リストが公開されてないか探そうとする貴方。さすがです。リストはきちんと公開されてます。お節介リンク、貼っときます。



***

ここで一つ、シリアスな考察。新年最初の頭の体操として。

今回は龍をコンセプトにした展覧会だが、そのわりに、欠けていたモノがある。それは龍の「大きさ」とそれに付随するイメージ/表象(迫力や威圧感等々)。そーいう感じの品が、見当たらなかった。

昨年は兎というこじんまりとした動物がテーマで、会場も展示品もそれとうまくマッチしていた(建物外観ベースカラー(黒&白)ともマッチ)。

今年の企画・デザインでは、龍の「大きさ」に関しては、見送ったか。まぁ大学内の各学部・各機関で所蔵している龍と関連したモノを一堂に会して展示する企画なので、いた仕方ない。そもそも大学で巨大なモノはあまり所蔵されてないというのが、実情なのだろうから。


この点について、もし自分が自由に展示設計できるなら、どうしてみたいか。

金に糸目をつけないのであれば、一案として、展覧会の会場入口を巨大な龍の口みたいにすることが考えられる。しかしこれだと、展覧会というより中華街か運動会の門あるいはディズニーランドのアトラクションっぽくなってしまうので、ボツか。

ではこうしてはどうか。エントランス右手上方のタイトル・ウォール(以下エントランス写真右の黒地に白字のところ)を、カラーリングはこのままで、ただし書体を変える(書体で遊ぶ)。書道家に頼んで龍のダイナミックで力強く巨大なカリグラフィーを書いてもらい、それをプリントする。これで「龍、どどーん」みたいな。全体基調デザイン(ロゴやキービジュなど)との調整は必要になってしまうだろうが。

ドリップペインティング風やグラフィティ風でも、面白いかも。むしろ書家vs現代画家vsグラフィティアーティストの新春競演ライブペインティングまでやっちゃいたいかも。もしくは今風に、画像生成AIにそんな感じの作品を沢山描かせ、出来がいいのを採用するとか。そしてさらに、来館者に投票させて人気no.1を決めたりして。

妄想拡大

さらに、左手の階段にも、手を加える。龍の胴体っぽく飾り立てる。良く見るとそれっぽい形状してるので。いかがでしょう?

エントランス



3.今回はテラスを歩ける!

今回のスペシャリティ。テラスを、歩ける。

ここKeMCoに来たことのない人にはナンノコッチャだと思うが、ここの3Fはなかなか見栄えのいいテラス。主にスタッフの休憩場所かなと思っていた。今回は、このテラスを散策させてもらえた。これでまたKeMCo経験値アップ。自分の知る限り、ここが一般開放されたのはこれが初めて。

こんな感じです。

このアングルだと、映画スターウォーズのスター・デストロイヤーを想起(?)
なんとなく、天空の城ラピュタのロボット兵人間サイズをここに置いてみたい。
色彩、雰囲気的にきっとマッチする。



4.会場去りし後に1:「Century Museum」の残り香

帰宅後持ち帰った物を整理してて気づいたこと。絵葉書の裏面に「Century Museum」。これ、ここKeMCoがコレクションを引き継ぎ、閉館して今は無いミュージアム。新宿にあったらしい(行ったことはない)。その時代に作られまだ残っていた絵葉書を頒布したのだろう。なんというか、そのことに気づいてしまうと、感傷に浸るアイテムと化す。


この Century Museum に関しては、noteに優れた解説記事がある。折角なのでここで紹介させて頂く。

ついでに、ネット空間に残存していたミュージアム・データも見つけたので、リンクを貼っておく。



5.会場去りし後に2:神出鬼没オブジェクト?

この記事を書いてて気づいたこと。

KeMCo公式noteの以下記事(すごい文量!)末尾の写真に写ってる、「中等部学生とワークショップで作った筆」と「メディア・アーティスト三原聡一郎さんから借りているコンポスティング装置」。展示したと書かれてるが、全く目にした記憶がない。見逃した・すっ飛ばしちゃったか?と思いきや、記事をよく読むと、どうやら私が鑑賞したタイミングでは展示されてなかった模様。この記事中盤に貼った、エントランスの写真にも写ってないので。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。



参考

KeMCo新春展2023 うさぎの潜む空き地

と、そのレビューnote


KeMCo新春展2022 虎の棲む空き地

これも観たのだが、noteは書いてない。。



以 上


誠にありがとうございます。またこんなトピックで書きますね。