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「尿痕の矛盾、遺体の状態について」飯塚事件(3)

 遺体の状態から被害女児に何が起こったのかを妄想する。
 遺体が遺棄された場所は飯塚市と甘木市(現朝倉市)の間にある八丁峠の第5カーブ付近から南方向9メートルの山中であった。

 遺体は道路から投げ捨てられたような状態で遺棄されていた。
 A子は黄色フード付きジャンパー、赤色上着、長袖シャツ、半袖肌シャツを身につけており、B子は白色フード付きジャンパー、茶色トレーナー、長袖シャツ、肌色肌シャツ、チェック模様入りベージュ色スカートを身につけていたが、2名ともパンツを脱がされていた。さらに遺棄現場から少し離れた場所に赤色の手袋が捨てられていた。

 一人は北側を頭にして仰向けに横たわり、黄色いジャンパーを着ている。もう一人は西側(道路側)に頭を向け、フードの付いた白いジャンパーを着て、うつ伏せになっていた。その身体の下に仰向けになった少女の脚が入り、二人は折り重なるように倒れていた。

「正義の行方」木寺一孝著 講談社 2024年

 九州大学医学部法医学教室にて永田教授の執刀のもと死体解剖を行なった結果、2名とも死因は頸部圧迫、つまり扼殺による窒息死であった。
A子の解剖結果
 A子の着ていたジャンパー表面には両袖及び前面に血痕が多数付着しており(付着していた血液はO型であり、A子の血液型はO型である)鼻腔からは血液が漏れ、その一部は右側を帯状に上方向に伸び、右眼内裂部に達し乾燥していた。頬、鼻、口周囲にも血液が接着状に付着していた。
 膣内からも血液が漏出し、小陰唇のほぼ全域と、大陰唇下部及び肛門部にかけてほぼ対象的に付着し、乾いていた。さらに処女膜の2箇所に新しい裂創があり膣前壁に出血を認め、指の爪が挿入された可能性が推察されている。
 胃の内容物はほとんど未消化の米飯粒を主とした粥状物が160グラムあり、一部に暗褐色の微細物と少数の白い菜片が混じっており、十二指腸に淡黄色粥状物を少量認めた。これら内容物は消化された米飯とキャベツ片とみられる(棚田・林葉鑑定では、これらはほぼ原型をとどめた米飯多数と大豆大のキャベツ片が識別できた)なお、胃内容物をスプーンで掬い取り、網の上にのせ水道水をかけて洗浄したところ、直径1ミリメートル以下の魚卵様の粒状物を認めた。
 A子は朝7時ごろ、大人の茶碗8分目のご飯に生の明太子の皮を外して混ぜて食べており、その後お茶を飲み、咳止めシロップを飲んだ後、家を出ている。さらに前日は午後5時半ごろから午後7時半ごろまで、カラオケボックスに家族と一緒に行き、焼きそば4分の1ほど、海苔巻きおにぎり1個、フライドポテトを食べ、カルピスを飲んでいる。
 胆汁がほぼ充満状態であり、また胃の内容物の多くが未消化で、食後1時間ないし2時間の死亡が考えられている。暗褐色の微細物は咳止めシロップが米飯と反応した結果と判断されている。
 胃内の残渣物については帝京大学医学部法医学教室で石山教授が消化の実験を行っている。成人用ご飯茶碗の8分目の約100グラムの米飯に皮を剥いた明太子を入れ、人工胃液250グラムを加えて攪拌し、37度で2時間振盪、一昼夜に渡って室温に放置すると、人工胃液のほとんどは米飯に吸収され、米飯の重量は250グラムとなった。さらに咳止めシロップは米飯粒を酸性下で混合すると褐色の沈澱が生じることがわかった。
 永田鑑定書では死後経過時間を死後1日から1日半程度としており(解剖開始時午後10時)死亡時刻を2月20日の午後6時から9時ごろとしている。さらに、食後1時間ないし2時間ぐらいで死亡したと分析している。
B子の解剖結果
 次にB子だが、A子と同じように膣内から血液が漏れ、大陰唇から肛門部にかけて血液がほぼ対象的に付着し、一部は帯状に伸び、乾燥していた。
 会陰部に小裂創があり、処女膜と膣前壁が損傷していたが、小陰唇部周囲には表皮剥離はなかった。内部のみ損傷していたことから、指が挿入されたと推察されている。
 胃の内容物は、約10ミリリットルの淡黄色の溶液を残すのみで、これは胆汁と考えられている。
 B子は午前7時半ごろ起床し、いちごミルク入りのカステラロールを4分の1食べ、ヤクルトを半分飲んだ後家を出ている。前日は午後7時半ごろに寿司(納豆巻き、シーチキン巻き、カニサラダ巻き)を食べている。B子も食後1〜2時間以内の死亡と考えられている。
 弁護側からは胃内容物の写真は、白色の膜状物が拡散しているように見え、ゼリー状の黄白色の細長い物質が存在し、赤色の薄い皮膜様のものが数個認められるという指摘があった。しかし、公判では写真撮影の際のストロボのせいという説明になっている。棚田・林葉鑑定書では内容物に固形物は認められなかったということである。
 鑑定の結果は死亡推定時刻は検死開始時間(午後10時半)から1日もしくは1日半、1日半がより近いという結果である。さらに、死亡推定時刻は朝食摂取後1時間ないし2時間と鑑定されている。

遺留品の発見
 遺体発見現場から離れたところに捨てられていた遺留品は翌22日、福岡県甘木市大字野鳥844番地から国道322号線を嘉穂町方向に約200メートル進行した地点の西方約5メートルの山中で発見された。
 そこで発見されたのは、
 ①A子の赤色キュロットスカート
 ②2人のランドセルなどの所持品
 ③2人の下着
 ④フリル付き白色靴下
 ⑤うさぎ柄白色靴下
 これら着衣の一部が、道路から投げ捨てられたような状態で遺棄されていた。発見された2人の下着は、各股間部付近に淡黄色の尿斑様のものが広く付着していた。
 鑑定の結果、各被害者の血液型と合致するヒト尿斑であることが判明している。2人の女児はどちらも失禁の跡があり、これらは扼殺によるものだと考えられている。
 なお、裁判記録には記載がないが、新聞発表の情報がいくつかある。これらは関連性がないものと判断されて語られなくなったのか、久間元死刑囚との関係性がないためにあえて語らなかったのか、それとも鑑定や分析により関係性がないものと判明したのかは不明だ。
 ①ランドセルからは複数の指紋が見つかっているが、これら指紋が鑑定されたのか、またその結果は明らかになっていない。
 ②一人のランドセルの外側金具にスーパーの青のビニール袋がくくりつけられていた。このビニール袋は氷入りのアイスクリームカップを包んでいた袋で、理科で使用するということで、家族は手に持たせて投稿させた。カップはジャンパーのポケットの中から発見された。
 ③2人とも顔面から出血があったとされ、頭と顔に硬いもので殴られたのか、遺棄で投げ捨てた際にできたものかわからない痕があるとされている。
 ④女児の一人の胃のなかに小麦粉を使った食べ物が残っていた。
 ⑤二人は靴をはいていなかったのに、足の裏がほとんど汚れていなかった。
 ⑥二人の靴はどちらも片方ずつしか見つかっていない。
 ⑦女児の衣類には、雑木林の遺棄現場付近にはない枯れ草のようなものが付着していた。
 ⑧体液は下半身を中心に数カ所に付着していた。体液がどんなものかは発表されていない。
 ⑨皮膚病に使用される塗り薬が女児に付着していた。
 ⑩さらに、遺体発見現場ではプラスチック製パック容器と緑色の包装紙が発見されている。このプラスチック製パックは「OPS」という表示があり、調べると岡山県倉敷市にあるメーカーで、福岡県穂波町の卸店から販売されていた。しかし、1日あたり200(1ケース2000個入り)ケースを配送しており、細かな特定は困難だった。

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 プラスチック容器の大きさは縦13×横19×深さ4cm。緑色の包装紙は「ウグイスロール」という表示であった。

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 女児の胃内に小麦粉様のものが見つかったことから、たこ焼きや焼きそばを死亡前に食べたのではないかと推察されていた。
 ⑪こたつ布団が現場の雑木林で発見されており、表は黒っぽく、裏は赤の下地、表には赤やピンク、白の花の柄のこたつ布団であった。発見されたこたつ布団の裏地の黒いシミは血液であることが判明し、女児の一人の血液型と一致している。
 これらの発見されたものは、意図的に隠されているかもしくは全く関係のなかったものか、それは不明だ。
 なお、小学校から遺棄現場までは距離にして28〜36キロメートル、自動車で35〜53分かかる。遺棄現場から遺留品発見現場は、小学校から八丁峠を死体遺棄現場に向かう途中にあり、距離にして3キロメートル、自動車で8分ほどかかる。

妄想と考察
 遺体の状況から、A子は生前に顔を殴られ、鼻出血を起こしている。拳で殴られたか、鈍器で殴られたのかはわかっていないが、座位または立位の状態で鼻出血を起こしたことが推察され、衣服に滴れた様な形跡と、袖で拭いた形跡がある。殴ることになったということは、犯人のコントロールを外れたことを意味する。力づくで従わせないといけなくなった証拠だ。
 鼻出血は遺体発見時眼窩へ流れていた。鼻出血後仰向けでいたか、遺棄後一度凝固した血液が溶血(溶けて)して眼窩に流れた恐れがある。しかし鼻腔からの出血が持続したまま仰向けになっても、咽頭(喉)に血液は垂れ込むはずだ。喉や鼻腔に溜まった血液が溶血した後であれば、一度鼻腔を下にした後でないと垂れない。死後うつ伏せで持ち上げられたか、もしくは扼殺の直前に殴られた可能性がある。何か急に犯人を怒らせた、困惑させた、パニックにさせたことで殴られ、そのまま扼殺に至ったのだろうか。これらの鼻出血、陰部からの出血は床もしくは車内に落ちたはずだ。
 また、性的暴行を受けているが、犯人の精液は発見されていない。処女膜や膣内の前壁にしか裂創がないため、司法解剖では指の挿入が疑われている。下腹部や恥丘、大腿部に性犯罪特有の所見である内出血などの記載がないため、陰茎の挿入はなかったと考える方が自然で、やはり手指などによる性的暴行だった可能性が高い。死後であれば血液の循環が停止しているため出血は持続しないはずで、殴打、もしくは扼殺の前に猥褻行為を行なったと考えられる。
 胃の内容物から食後1時間〜2時間の間に扼殺されたと考えられているが、朝に食べた米飯は茶碗で8分目とされており、これは約100グラムほどしかない。発見時の胃の内容物は160グラムでむしろ多くなっている。
 さらに、胃からはキャベツ片が発見されているが、これは前日の焼きそばに入っていたものにしてはかなり消化が遅く、これが前日のものでないならば、犯人から与えられた可能性も十分にある。
 B子も性的暴行を受けており、陰部には出血した痕があるが、A子と同じように陰部周辺の傷や大腿部の内出血がなく、司法解剖ではB子も指の挿入が考えられている。なお、B子は顔面は出血していない。A子が殴られるのを見て抵抗をやめたか、先にA子が殺害されたのを見て抵抗をやめたのだろうか。
 B子の胃のなかには残渣物は何も残っていない。恐怖のあまり与えられても喉を通らなかったのだろうか。しかし、胃の内容物にストロボのせいと判断された黄白色のゼリー状物体がある。これが朝食で食べたもの以外であったならば、2人とも殺害前に何かが与えられた可能性もあり得る。
 B子が殴られなかったのはなぜだろうか。拘束された痕などの情報はなく、恐怖のあまりフリーズ状態となっていたのだろうか。
 そもそも、女児2名とも犯人による陰茎の挿入の可能性は著しく低かっただろうと私は考えている。もしA子を先に強姦しようとしたならそちらに集中してしまい、B子は完全に監視の対象から外れる。逃亡される危険性が高くなるなら拘束が必要となるがその痕跡はない。B子を強姦しようとして逃亡を図ったA子が殴られた可能性もある。
 なんにしても、生物である以上は三大欲求を満たそうとしている最中は絶対に無防備になるはずだ。そもそも、女児であっても監禁でもしていない限り2人を強姦しようとすることはかなり難しい行為であることは間違いない。故に強姦行為があったとどうしても思えないのだ。

 次に時間である。解剖の結果、死亡推定時刻は解剖開始時間である午後10時から1日から1日半、どちらか比べると1日半の方が近いと言われている。
 午後10時から1日半(36時間)前は午前10時ごろという計算になる。午前10時の死亡前1〜2時間に食事をしたとなると食事の時間は午前8時〜9時の間となり、午前7時に朝食を取った後に殺害されたと考えても確かにそれほどの矛盾はない。
 だが、疑問はいくつかある。
 ①A子の胃の内容物が朝より増えているのはなぜか。
 米飯茶碗8分目の重量は約100グラム、それより胃の内容量は増えている。犯人から何か食べるものを与えられた可能性を示唆している。
 ②遺体と一緒に捨てられていたプラスチックパックの存在。
 元々そこにあった全く関係のないものだろうか。もしくは、女児と一緒に捨てられたものか、車内にあったゴミと一緒に犯人が捨てたのだろうか。そもそも、犯人が食べたものなのか、女児が食べたものなのか。パックに指紋の付着はあったのだろうか。
 このパックがA子の160グラムと結びつく可能性はある。ウグイス色の包装紙がついていたということは屋台で購入したものと考えられる。商店街での目撃情報とも繋がりそうだが、昼間から商店街で女児2人を連れ回してる中年男性はかなり目立つ。
 ③被害者と同じ血液型が付着していたこたつ布団の存在。
 これに包んで捨てたのだろうか。女児と同じ血液型の血痕が付着していたのにこの証拠はなぜ裁判では検討されていないのだろうか。必ず分析されているはずだ。そして、なぜこたつ布団なのだろうか。車内にあったものなのだろうか。それとも、女児は誰かの家にいたのだろうか。
④被害者の足が汚れていないこと。
 屋内か車内での犯行が考えられるが、靴を履いたまま被害に遭った可能性もある。
⑤いくつかの指紋が付着したランドセル。
 ランドセルに真犯人の指紋が残っているのではないだろうか。この指紋たちと久間氏の指紋は照合したのだろうか。犯人が素手だったのであれば、確実に指紋が残っているはずだ。
⑥時間について
 潤野小学校からから死体遺棄現場まで車で1時間かかる。裁判で認定された事実の通り午前7時半に連れ去り、11時に遺留品発見現場で問題の分け禿げが目撃されようと思うならば、10時には小学校近辺を出発しないと間に合わない。
 攫う、どこか人気のない所に連れて行く、性的いたずらをする、殴る、2人を扼殺する、遺棄する、これらの制限時間はわずか2時間しかなく随分忙しい印象を受ける。
 短時間での犯行が不可能であれば、本来の司法解剖の結果である午後6時から午後9時を無視できない気がする。商店街での目撃情報、出店で購入したようなプラスチックパック、増えた胃の内容物、もしかして死亡推定時刻は司法解剖の結果の通りなのではないだろうか。

 実はかなり根底のそもそもが疑問だったのだが、成人男性が7歳女児の膣にどうやって陰茎を挿入したのだろうか。
 性暴行に関する詳細は報道や書籍、公開された裁判資料などでも詳細がやや不明瞭に語られることが多い。確かに最悪に胸糞が悪くなるだけだし、遺族の悲しみをより深くさせるだけで目を背けたい部分ではある。認定された事実としては久間元死刑囚は陰茎の挿入に成功したことになっている。だからこそ当時陰茎の病気で出血しやすかったとされる久間氏の血液が、女児の膣内にあった血液に混入したとされている。
 そういえば逮捕された変態たちは軒並み強姦には失敗している。宮崎勤は家に持ち帰って撮影しただけだし、小林薫も自宅に連れ帰り十分な時間があったにもかかわらず強姦、死姦ともに大失敗している。足利事件の真犯人も、実際の強姦行為には及んでいない。つまりは、身体の構造が未成熟な子供への性行為はそもそもかなり難しい。
 このような性被害の詳細が記された資料はほとんどないが、いくつかのヒントはある。

具体的行為としては、性交の伴わない事例が多い一方で、中学生以降では性交を伴う割合が増加している傾向にあった。

「潜在化していた性的虐待の把握および実態に関する調査」子ども・子育て支援推進調査研究事業 2020年

子どもの性被害に見られる身体所見として、妊娠、性器や肛門の開大・裂傷・出血、膣炎、性感染症(STD)、性器の掻痒や違和感、排尿障害や尿路感染症(UTI)の反復、大腿内側などの傷、反復する腹痛がある。

「潜在化していた性的虐待の把握および実態に対する調査」子ども・子育て支援推進調査研究事業 2020年

 最近はネットでいくらでもグロテスクなゴア画像、動画を視聴することができる。それらを見ていくと暴力的にレイプされた女性には共通する外傷がある。陰部周辺(正確には大陰唇や恥骨部)の内出血や大腿部内側の内出血、あるいは外陰部(正確には小陰唇)の裂傷や表皮剥離だ。性的に興奮していない状態での強要された性行為は成人女性でも簡単に外傷や内出血を形成する。陰茎を挿入しようとした、あるいは挿入したのならば、あまりに2人の女児の性器周辺には外傷が少ないのだ。
 そもそも腟は、腟口と子宮を繋ぐ筒状の器官で、成人女性で直径は1〜2cm程、腟の長さは前壁約7cm、後壁約9〜10cmと言われている(この長さは性交時はさらに伸びる)第二次性徴により膣は急速に発達するため、それまでは未熟で傷つきやすく、小さな器官であることは間違いない。
 普通に考えても、勃起してもウィンナーほどの大きさしかない小陰茎症でもない限り、7歳の女の子に興奮しきった成人男性の陰茎が入るわけないのだ。やはり指の挿入により出血したとしか思えない。

 通常、初潮前の膣粘膜はホルモンやpHの影響で未成熟なため膣組織は脆弱であり、異物は容易に膣壁を損傷する。

「小児膣異物の1例ー腹腔鏡観察下経膣的異物全摘除の経験ー」古田繁行他 日小外会誌 2015年

 そして、もう一つ不思議なのが尿痕だ。遺留品の状況は、
 ①女児2人の下着には尿痕があった。
 ②膣よりの出血があった(肛門にかけて垂れて凝固していた)
 ③下着は遺体と一緒ではなく別の場所で捨てられていた。
 というものだ。
 まず遺留品遺棄現場に捨てられていたもの、これらは死亡時に身につけていなかったものか、もしくは死亡後に女児から「わざわざ」ひき離されたものだ。
 この事実は、猥褻行為の際は2人は下着を全く着用していなかった事を意味する。なぜなら、膣の損傷で出血していたはずなのに、下着に尿痕はあっても血液の付着はなかったからだ。仮に猥褻行為のあと下着を再び履かせ扼殺したとしても、すでに出血はしており下着に付着していないとおかしい。司法解剖の結果は扼殺による失禁ということになっているが、それならば扼殺時に下着を履いていないといけない。
 では、扼殺後に下着を脱がして猥褻行為を行なったのであろうか。しかし死後は血液の循環が停止しており、粘膜の損傷があっても心臓が停止しておりそもそも血圧がないため流れるほどの出血はしない。生前の性暴行でないと出血しないのだ。つまりは認定された内容は事実から考えるとなんだか順番があべこべなのだ。
 さらに、靴下も靴も女児自身が脱いだか、もしくは脱がされている。車内であればわざわざ靴を脱ぐ必要はなく、どこか屋内で殺害された可能性も考えられる。または靴も靴下も尿で汚れたため脱がされたとするならば、立位での失禁ということになり、それならば車中では無理だ。
 状況から考えられるのは、何らかの原因により失禁し、濡れた下着を脱ぎ(脱がされ)、猥褻行為が行われ、トラブルが発生し殴打後に扼殺したというストーリーだ。とにかく靴下やスカートに尿痕はなかったのかがものすごい気になる。
 車内で扼殺により失禁(扼殺時でなくても)したのなら、車内は尿まみれになるはずだ。女児2人分(小学校低学年の子供の尿量は最大でおよそ250mlほど)の尿が500mlほどだとしたらペットボトル1本分の尿が車内にこぼされたことになる。これは3〜6時間もすれば尿素が分解され、アンモニア臭が立ち込める。さらに血の匂いも混ざり次の日には車内はかなり強い臭いがしたはずだ。

 他にも気になるポイントは沢山ある。先に捨てたのは遺体だろうか、それとも遺留品だろうか。しかも、わざわざなぜ分けて捨てたのだろうか。
 もし私が遺体を捨てるなら、より山深い方(あるいは最も人里離れたところ)に捨てたい。できることなら、拠点(自宅)から最も離れたところに捨てたい。
 この犯人は八丁峠の朝倉市に近いところにに遺体を捨て、峠の頂上付近に遺留品を捨てている。飯塚市から見れば最も遠いところに遺体を捨て、その途中に遺留品を捨てているが、朝倉市から見れば遺体遺棄現場が近く、遺留品遺棄現場が遠くなる。なぜこんな不思議な捨て方をしたのだろうか。

 犯人は八丁峠周辺で遺棄場所を探しながら行ったり来たりしていたのだろうか。拠点が飯塚市側にあるなら最も遠いところに棄て、帰り道に遺留品を遺棄したということになるが、朝倉市がかなり近い。拠点が朝倉市側になるなら遺体を遺棄して更に山頂に登り、遺留品を遺棄しUターンしたということになる。

 YoutubeやGoogle Mapで八丁峠をトレースしたところ、八丁峠は緩やかな登りと下りが続く標高500メートルほどの山だ。ほぼ片道車線で対向車が来るとどちらかが停まって車を寄せないと進めない。遺体遺棄現場も遺留品発見現場も少しだけ路肩があり停車スペースがあるところだ。
 なぜこんなことを考えるのかというと、人間は通常目的地がある際はそこまで行き、用事を済ませ、そこから帰るもので、後に捨てたか、先に捨てたかがわかれば、拠点の方向がわかるかもしれないと感じるのだ。
 この場合の最終目的は「遺体を捨てる」ことのはずでさらに「捨てやすく、見つかりにくく」のはずだ。この行動は「運転しながら捨てるのに適したところを探し、車を停めるところを探し、駐車後可能な限り誰にも見られないように適切な場所まで遺体を運び、遺棄する」という内容となる。さらには遺留品の遺棄もしなければならない。
 これらを日中に行うのは夜間に比べて目撃されるリスクが跳ね上がる。可能な限り1度で済ませたいはずだ。しかも2体の遺体があるため、何か袋のようなものに入れて2体を同時に捨てる方が効率が良く、こたつ布団はやはり遺棄に使われた可能性が高い。

 余談だが、女児に強姦を行なったとされる久間元死刑囚は「亀頭包皮炎」に罹患しており、簡単な刺激で亀頭から出血する状態であったとされる。そこから出血した血液が女児の膣内の血液の中に混入し、亀頭包皮炎の治療薬の軟膏が女児に付着していたとされた。
 そもそもであるが、まず自分の生殖器がそのような状態で果たして強姦をしたいと思うだろうか、というのが純粋な感想である。この亀頭包皮炎は糖尿病を原因としていたようで、糖尿病はその名の通り、糖を分解するホルモンが出ないため行き場のなくなった糖が尿に出る病気だ。この尿道に付着した糖が細菌の温床になる。また糖尿病は免疫機能も低下するため、糖尿病患者は健康な人では普段起こらないような感染症が起こりやすい。この亀頭包皮炎も普通の生活の中ではそうそう起こらない病気である。
 このような皮膚粘膜の感染症が起こっていたということは、糖尿病はかなり増悪した状態であったことが伺える。さらに、本人は事件当時「性欲はなかった」と語っている。事実は確認されていないが、糖尿病は神経の障害も起こるために男性患者の30〜70%は勃起不全(ED)が起こると言われている。

日本人のデータも含むレビューによれば、糖尿病患者の35〜90%にEDが発生するとされている。EDの発生時期も、糖尿病患者では非糖尿病患者より10〜15年早いといわれている。3299 名のデータからなるシステマティックレビューによると、不良な血糖管理、年齢、糖尿病罹病期間、末梢神経障害、BMIがEDの発生に有意に関連しているとされる。

「ED診療ガイドライン 第3版」 日本性機能学会・日本泌尿器科学会編 2017年

 もし久間元死刑囚が糖尿病による勃起障害だったなら、血は出るわ勃たないわでむしろどうやって性暴行したのだろうか。

 プラスチックパックやこたつ布団は、久間氏を有罪にするためには関係ないと判断されたのか発見後どのように分析されたのか明らかになっていない。それらの全てを知ることができれば犯人の考察はまた大きく変わるかもしれない。
 検察側の創作したストーリーである強姦は現実味が薄すぎて私は信用できない。何なら、せっかく手に入れた念願のものを短時間で捨てたくないし、もっと車通りの少ない深夜に捨てたい。ただし、次の日になると遺棄しようと移動した時に捕まる恐れもある。題材的に警察が動き始める前であるその日の深夜から早朝に捨てにいきたい。午前11時に目撃された分け禿げが真犯人とするならばわざわざ日中に捨てに行った理由はなんだろうか。早く死体と離れたかったのか、それとも時間がなかったのだろうか。
 やはりこたつ布団、プラスチックパック、ランドセルの指紋、これらはもっと分析されるべきだ。そして、靴を持ち帰ったのはあの時の興奮を反芻するためだろう。クソ変態め。

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