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i.lab社内R&D 「Voice Mask」プロジェクト:連載⑦ インタビュー方法

こんにちは、i.labです。

特許取得を機に活動を再開したi.lab社内の取り組み「Voice Mask」プロジェクト。前回の記事ではインタビューの準備の概要を紹介しました。連載第7回目の今日は、具体的なインタビューの方法についてです。

前回(インタビュー準備)の記事はこちら↓

インタビュー対象者探し

前回の投稿で、インタビュー対象者の3つの属性を設定しました。この属性に当てはまる対象者を探していきます。

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属性1:大部屋オフィスでオンラインミーティングしづらい人
属性2:コロナ禍で在宅ワークが主流になった共働き家庭(子どもあり)
属性3:外出/出張が多く、出先で打ち合わせ場所が必要な人


 1. 候補者のリストアップ

i.labでは同時に幾つかのプロジェクトが動いていることもあり、1-2ヶ月に1プロジェクト(その中で数件実施)程度は何らかのインタビューリサーチを実施しています。属性まで設定した段階で、知り合いに属性に該当する人がいないか、i.lab社内のコミュニケーションツールを使って情報を募ります。メンバーの個人的な知人や、以前仕事をご一緒したクライアントのプロジェクトメンバーで見つかるケースが多いです。過去には、ブログやSNSなどで情報発信している人に直接コンタクトを取って依頼することや、Facebookなどで呼びかけたこともありました。

2. 対象者を決定する

こうして集まった10-20人程度のリストの中で優劣をつけ、優先度合の高い人にインタビュー依頼を行なっていきます。属性へのマッチ度合が高い人、1人で複数の属性に当てはまっている人や、またスケジュールが合う人などが優先となります。

今回のインタビューでは、現在/過去のプロジェクトのクライアントから2名、i.labメンバーの知人2名の合計4名の方にインタビューを受けていただけることになりました。


インタビューガイドの作成

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インタビューガイドとは、インタビュー項目を書き出したもので、これに沿ってインタビューを進行します。ですから、インタビューを成功させるためにもっとも重要な準備がこのインタビューガイドの作成です。ガイドは具体的な対象者が決定した段階から作成を開始します。また、それぞれの対象者ごとに作ります。

1. インタビューをシミュレーションする

実際にガイドを作成する際は、シャドーボクシングのように相手との会話を想像しながら考えます。一つ質問項目を考えたら、それに対する相手の回答をイメージする。それに対して、次にこういう質問をしよう、さらにそれに相手が回答して...と次第に流れが生まれていきます。流れが自然になるように、質問の順番を調整していくとガイドが完成します。また、どうしても確認したいアイデアの仮説を検証するための質問がある場合は、そこに至る質問項目の流れを逆算して、布石となる質問項目を準備します。このように実際のインタビューをシミュレーションしながらガイドを作成していきます。

2. A4用紙1枚におさめる

通常インタビューはどのプロジェクトでも90-120分程度で行います。その時間内できちんと終わらせ、かつ聞きたいことを聞ききるためにはタイムマネージメントが重要です。i.labではA4のコピー用紙1枚におさまる質問量を目安として作成しています。ページが増えるようであれば質問項目を厳選し減らします。また、A4用紙1枚におさまっていると、インタビュー中に全体の流れを俯瞰して見やすくなります。 


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実際のインタビューでは、質問項目をチェックしながら進めていきます


インタビューの実施場所

i.labでは、なるべく対象者の活動の場に伺ってインタビューをするようにしています。なぜなら、実際に対象者の方の活動の場、生活の場に伺い実施する方が、例えばインタビュ中に普段使っている道具の話になったらその場で見せてもらえるなど、得られる情報が多いからです。

今回はテレワークシーンに関するアイデアなので、3名の方に関しては、実際に仕事をしているコワーキングスペースやオフィス、ご自宅にお邪魔させていただき、実施しました。(1名はi.labオフィスで実施)


当日の持ち物、参加者の役割

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1. 主な持ち物

当日の持ち物は以下の通り。

- インタビューガイド
- アイデア紹介資料
- アイデアのモック
- 筆記具
- 時計
- スマートフォン(録音用)
- カメラ
- パソコン(メモ取り用)


2. 参加者の役割

通常メインインタビュアー1名、サブインタビュアー1-3名程度のメンバーでインタビューに挑みます。基本的にメインインタビューアーがインタビューガイドに沿って、質問を進めていきます。サブインタビュアーはその間、パソコンでのメモを取りや記録写真の撮影を主に行いつつ、深掘りしたい点などがあった場合などには随時質問を加えていきます。

今回のインタビューはコロナ禍ということもあり、最小人数の2名が実地で参加、オンラインで1名が参加するという少し変則的なメンバー構成で実施しました。


インタビューの心構え

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以上がインタビューの準備でした。あとはインタビューに挑むだけです。最後に、インタビューの心構えについてご紹介します。

1. 相手に弟子入りするつもりで話を聞く

i.labでは初めてインタビューに参加する人に対して、「相手に弟子する入りつもりで話を聞く」といいですよとお伝えしています。自分たちで考え、時間をかけて議論し検討してきたアイデアなので、プロジェクトメンバーはアイデアへの愛着や自信を持っていることが多いです。しかし実際にユーザーにインタビューしてみると、否定的なことを言われることも少なくありません。そうするとつい、相手にアイデアの良さを伝えようと「説得モード」になってしまいがちです。ここでインタビューをする目的を忘れてはいけません。アイデアをブラッシュアップするために実施している、それはアイデアを壊して作り替えるために行なっていると言っても過言ではないでしょう。

ですから、相手のことを師匠だと思って、その人の発言の意図や背景にある考え方を習得するつもりで聞き、ブラッシュアップのヒントを探すことに注力しましょう。そういう心構えでやっていると、インタビュー後に「解釈」として、その人の発言にはなかったけど、おそらくこう答えるだろう、ということまで想像できるようになります。こういった「解釈」がのちのちアイデアブラッシュアップをする際に役立ってきます。


2. それってこういうことですか...は聞かない

インタビューを進めていると、対象者の方がこちらの問いかけへの回答に迷い、しばし沈黙が続く、そんなことが多々あります。そういう時は、こちらも間が持たない不安な気持ちになり、つい「それってこういうことですか?」と代わりに回答してしまいたくなってしまいます。その場合「そうかもしれないです」という肯定的な返事が返ってきたりしますが、相手の本心なのかはわかりません。また黙っているということは、相手がこれまで考えたこともなかったことを考えている時間だったりもするので、そこから新たな考え方を聞くチャンスを失うことにもなりかねません。沈黙に耐え、相手が自分の言葉で語り始めるのを静かに待ちましょう。


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いかがでしたでしょうか?本エントリーでは、ユーザーインタビューの方法についてお話しました。次回はいよいよユーザーインタビューの結果についてです。次回の更新もぜひお楽しみに!

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i.labでは、Voice Maskの実現に向けて一緒に協業していただける技術者や研究者、企業を募集しています。ご興味がある方は以下までお問い合わせください!

問い合わせ先
メール:h-suzuki<at>ilab-inc.jp
担当者:i.lab ビジネスデザイナー 鈴木斉