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サステナビリティ100

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「サステナビリティ」の観点で優れた事例を収集し解説します。 環境分野だけではなく、社会活動や企業活動、日常生活まで、広い分野で事例収集しています。
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#循環経済

固形シャンプー:液体を固体にすることで容器が不要に (CASE: 34/100)

▲「固形シャンプー」とサステナビリティ シャンプーは液体である、という常識は覆されつつあります。 固形シャンプーとは、その名の通り、固形石鹸と同じ見た目をしたシャンプーです。髪を濡らし、直接シャンプーを頭皮につけたのち、手で泡立てて使います。 私の住むドイツでは、写真のようにすでに多様なブランドから異なる髪質・頭皮向けに商品が開発されており、紙のパッケージに入れられて、ごく普通にドラッグストアの棚に並んでいます。 消費者のエコ意識の高まりからこの数年で普及が進みましたが、日

60VISION:長く愛されるスタンダード品を再生させるブランディング (CASE: 26/100)

▲「60VISION」とサステナビリティ 私の30歳の誕生日、自分から自分へのプレゼントは、シングル掛けのソファーでした。広島県に本社を持つマルニ木工がつくる「マルニ60」というブランドのものでした。 私は、「マルニ60」以外にも「カリモク60」、「アデリア60」、「エース60」というブランドの製品を既に保有していました。これらのブランドの共通点は、ブランドネームの最後に「60」という数字が付くこと。 これらのブランドを高次で束ねる「60VISION」という、メタブラ

森は海の恋人運動:漁師が始めた植林活動が海を豊潤にする(CASE: 25/100)

▲「森は海の恋人運動」とサステナビリティ 2011年3月11日の未曾有の巨大地震の後、当時の東京大学の教職員や学生有志と共に宮城県気仙沼市を定期的に訪問し、「イノベーション」を学ぶ私たちだからこそ出来ることを、という思いを胸に、復興支援活動を始めました。その時に知ることとなった事例が、今回ご紹介したい「森は海の恋人運動」です。 1980年代、気仙沼にてカキ養殖業を営んでいた畠山重篤さんは、せっかく育てた牡蠣の身が赤く血のように変色するようになり、衝撃を受けました。水産試験

本格的な革靴:「安い靴を買うほど裕福ではない」から考えるサステナビリティ(CASE 20/100)

▲「本格的な革靴」とサステナビリティ 私はここ10年間ほど、仕事のシーンにおいては、敢えてカジュアルな雰囲気で行こうとホワイトのレザースニーカーを愛用してきました。しかし、Withコロナの社会において、在宅勤務が普通になり、他の人も以前よりもカジュアルな雰囲気で仕事をする機会が多くなったことから、逆張りを狙って私の定番の靴を変化させることにしました。 今年に入ってからは、いわゆる「本格靴」と呼ばれるような、一定価格帯以上の修理可能な革靴のみを、仕事で履くようになりました。す

びん保証金:少額の金銭的動機付けが良い循環の駆動力を生む(CASE: 19/100)

▲「びん保証金」とサステナビリティ 30年以上前のことです。私が小学生の頃、近所の小売店にコカコーラの1.5Lの空き瓶を持って行くと、30円をくれました。それは当時の小学生にとっては、いい小遣い稼ぎになっていました。 現代のコンビニエンスストアでは、ジュースはペットボトル、ビールは金属製のカン容器が大半です。それらは容器種別を考慮して回収され、リユースが試みられています。一方で、それを行うユーザーの動機付けは、「小学生の頃の30円」ほどには、十分ではないかもしれません。

吉野家の牛丼のタレ:継ぎ足していくので実は店舗ごとに異なる味になっている(CASE: 14/100)

▲「吉野家の牛丼のタレ」とサステナビリティ 「吉野家の中で一番美味しい店舗はどこか?」 何気なくつけていたテレビからそんな問いが聞こえてきて、思わず見入ってしまいました。チェーン店ならどこでも味は同じものだと無意識に(そしてあまりに勝手に)思っていたので、考えたこともない問いに興味が湧いたのです。 吉野家のタレのレシピは企業秘密で、工場で作られたタレが各店舗に送られます。一方で、タレは店舗で継ぎ足していくスタイルのため、店舗ごとに味が異なっていくそうです。そして、国内で最

Megloo:プラスチック容器を廃止するのではなく循環させることで持続可能な生活を(CASE 12/100)

▲「Megloo」 とサステナビリティ Megloo(メグルー)は、私が住んでいる鎌倉市で地域共通のリユース容器をみんなでシェアすることで、テイクアウト時の使い捨て容器を削減する仕組みです。 このリユース容器は、Megloo特製。通常の使い捨てテイクアウト容器に比べ、密閉性がよく持ち運んでもこぼれませんし、保温性も良く、おいしさが長持ちします。もちろん、そのままお皿としても利用でき、返却する際はテイクアウトした店舗以外でも、対応店舗ならどこでも大丈夫です。 Meglooが

IKEA:自分で組み立てる行為によって主観的な製品価値と修理可能性を高めている(CASE 11/100)

▲「IKEA」とサステナビリティ IKEAは1943年スウェーデンで創業し、組み立て可能な家具、キッチン用品、家庭用アクセサリーなどの商品を設計および販売している家具ブランドです。当初、田舎町で創業したIKEAは、都市に暮らす顧客に家具を販売するため、カタログから製品を選び、郵便注文する販売モデルで全国に広まりました。 IKEAの家具は、パーツや部品ごとに分けて隙間なく梱包し、開封後ユーザーが独自で組み立てる必要のある「フラットパック設計」の家具で知られています。1953

自動巻きの腕時計:人の腕に寄生する半永久機関 (CASE 9/100)

▲「自動巻きの腕時計」とサステナビリティ 私の家の中で、電気を使わずに動くものは、ほとんど思いつきません。ぱっと思いついたのは、一番下の子のお気に入りのミニカーくらいでした。 いや他にもあるはずだと、必死に部屋中探してみると、機械式の腕時計、特に自動巻きの時計が目に留まり、それが家の中で、異彩を放っていることに気づきました。 腕時計の中でも、機械式のものはその駆動力に電気を用いていません。一般的には渦を巻いたようなゼンマイ形状のバネが内蔵されており、そのゼンマイを物理的な

お祭り:持続可能性の原点は原始的な感情の解放(CASE: 7/100)

▲「お祭り」とサステナビリティ 長崎出身の私にとっては「おくんち」と呼ばれる地元の大きなお祭りが、年に1度大手を振って夜遊びできる、いい機会でした。今となっては笑い話のような感じですが、18歳くらいまで長崎しか住んだことがなかった私にとっては、「おくんち」は日本最大のお祭りだと信じていました。少なくとも、「日本三大祭り」の一つくらいではあるだろうと。 日本のみならず、世界中で長い期間伝承されている数多くのお祭りは、持続可能性の観点から大変興味深い事例です。その起源は、宗教

光触媒:光と水を用いてセルフクリーニングで消毒や防汚を行う(CASE: 6/100)

▲「光触媒」とサステナビリティ 博士課程の学生だった頃、光触媒の研究室に所属し、日々白衣を着て光触媒の薄膜を作成していました。 物質に光を照射したときに、その物質そのものは形を変えないにもかかわらず、その周辺の物質に化学反応を促すものを、光触媒と呼びます。 代表的な光触媒物質である酸化チタンは、その結晶構造を化学的に最適化し、紫外線を照射することで、主に2つの光触媒作用をもたらします。 一つ目は、有害物質の分解です。たとえば病院の手術室の壁・床を酸化チタンでコーティン

黒電話:停電時でも使えるレジリエンスな機械 (CASE: 4/100)

▲「黒電話」とサステナビリティ 私が小学生の頃、長崎県に超大型台風が直撃し数日間にわたって停電状態が続きました。その時に、家の黒電話だけが鳴り響き、小学校が休校となることがわかりました。 あまり知られていませんが、黒電話は停電時でも利用することが出来ます。なぜなら、黒電話は、コンセントなどからの商用電源を用いておらず、電話回線からの給電により動作しているためです。そのため、電話回線が正常な場合には、停電時でも黒電話の利用が可能となっています。 さらに、気温や湿度への環境的耐