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高学歴な馬鹿はなぜ存在するのか?~究極の思考法~

私の著書「高学歴な馬鹿はなぜ存在するのか?」~究極の思考法~の試し読み部分です。

全8章のうち、1章の90%の内容です。ここだけでも「思考」について新たな知見が得られると思います。

私は幼少時から「頭の良さとは何か」についてずっと研究してきました。この本では、知能の定義を行い、学校の勉強の致命的な問題点を示します。

そして、真の頭の良さを見につけるにはどうすれば良いのかを徹底解説した本がこの本です。

私は6歳の頃から「知能」について個人で研究してきました。なぜかというと「自分の発想がコントロールできないこと」に、言いようのない不快感を覚えていたからです。

そして、途方もない時間の末に、知能とは何かを解明し、発想をコントロールする方法を作成することに成功しました。

その方法、この世の全ての問題を解決可能な「究極の思考法」を徹底解説します。 情報は記憶するだけでなく、正しい使い方が大切です。

勉強しているのに仕事や人間関係で上手く行かない人は、「情報の使い方」が上手くない可能性が高いです。

究極の思考法は、情報を有効活用する最高の方法です。究極の思考法を身に付ければ、この世のあらゆる分野の問題に対する解決策を発想できるようになります。

従来の問題解決・論理的思考・ロジカルシンキングなどの本を読んで、結局、何をすれば良いのか分からなかった、という人は多いのでは無いでしょうか。

究極の思考法は、非常にシンプルで、記憶しなければならない知識量はごくわずかです。本書では極めて明確に何をすれば良いかを示します。

究極の思考法を解説する前に、「高学歴な馬鹿が存在する理由」を詳細に解説します。なぜなら、学校の勉強やテストにおける頭の使い方と比較することで、究極の思考法の理解がしやすくなるからです。

世界中で学校のテストで高得点を取れる人間・高学歴な人間が「頭が良い」と評価されています。

高学歴な人間は、世界中のあらゆる分野で優遇されています。何か他に大きな能力の違いが無ければ、ほぼ全員が、高学歴な人間を「頭が良い」と判断するでしょう。

しかし、高学歴な人間の「知能」に疑問を抱いている方も多いのでは無いでしょうか。高学歴な人間、テストが得意な人間は、ある程度優秀な気はする。

しかし、そうでないと感じることも多い。しかし、何が理由かは明確には分からない。こういう人は多いのでは無いでしょうか。

その理由は簡単で、テストでは「知能」のごく一部しか測定できないからです。

確かに、高学歴な人間・テストが得意な人間は「ある知能」が優れている可能性が高いです。

しかし、その一方で、「別の知能」は劣っている可能性が高いのです。その結果、状況によって、頭が良く見えたり、馬鹿に見えたりしてしまうのです。

現在、世界中で高学歴な馬鹿が莫大な資源を浪費している状況です。一刻も早くこの状況を改善し、学歴社会ではない、真に優秀な人間が活躍できる社会を作るため、本書の執筆を決意しました。

以下、各章の概要を記していきます。


1章「頭の良さとは何か」では、頭の良さの定義を行います。頭の良さとは何か、頭の良さと関係がある事象は何か。記憶の種類、情報の種類、思考の定義・思考の意義の確認を行います。

さらに、5例の思考の具体例を示すことで、思考とは何かを理解していただきます。問題の「解法」と「処理」についても解説していきます。


2章「記憶力と記憶術」では、記憶の性質、記憶力のメリット・デメリット、ひらめきの正体、人間とコンピュータの記憶の違いについて解説します。

さらに、学校の勉強における情報の特徴を解説し、学校の勉強で取り扱う情報の特殊性を理解していただきます。 また、記憶しやすくするための方法である「記憶術」についても解説します。記憶術の分類及び記憶術の欠点について解説します。



3章「思考と解法」では、問題解決のための2つの方法、思考による解法の作成と解法の使用について解説します。

また、思考科目と言われる数学という学問の特徴や、数学が難しく感じる理由を解説します。

そして、人間の脳の使用における「ある錯誤」について詳しく解説していきます。 また、受験数学で出題される問題の欠点について解説し、正しい受験数学・学校数学の勉強を詳しく解説します。

さらに、数学がほとんどの人にとって無駄であることの証明を行い、人類が数学どう向き合っていくべきかを解説します。

「数学で物事の考え方が身に付く」という意見の論破を行っていきます。 最後に、数学以外の特殊な分野、ボードゲームや、プログラミング、物理学などの学問における頭の使い方の特徴についても考察していきます。

4章「高学歴の特性と問題点」では、1、2、3章の内容を踏まえて、高学歴の知能の特性と、さらに高学歴の性格的な問題点についても解説します。

まず、問題の分類を行います。テストで出題される問題と、テスト以外での実際の仕事における問題の違いを比較します。

また、上司が馬鹿とよく言われる理由についての考察も行い、各種研究における人材配置の問題点についても考察します。



5章「究極の思考法・上」では、この世のあらゆる問題の解法を発想できる、究極の思考法を解説します。

思考の3領域、事象の結合の方法、事象の分解(分割・除去)の方法、直接因果と間接因果、独立した情報、抹消の除去、本質の除去、問題の設定方法、問題の明確化の手法などについて解説します。

最後に究極の思考法と不完全な思考法の比較を行い、究極の思考法の理解を深めていただきます。

6章「究極の思考法・中」では、究極の思考法において補助的に用いる知識について詳しく解説していきます。

前半部分では、情報の取得(想起・検索・実験)、因果関係のある情報の取得法、情報の判定法、情報の保存(記憶・記録)の使い分けの基準などについて解説します。

さらに、記号(文字)を用いた文章術の解説を詳細に行います。情報を伝達するとはどういうことか。価値の変更/価値の選択/伝達の距離/価値の加工/伝達の順序について詳細に解説します。 

後半部分では、特に人間が関係する場合に有益な知識を解説していきます。人間の知覚・認識の能力、人間の知識の想起のメカニズムについて解説します。

さらに、人間の感情・気分、意識・無意識的の行動の違いについて解説します。



7章「究極の思考法・下」では、5~6章の内容を踏まえ、練習問題を通して究極の思考法の理解を深めていただきます。この問題を通して、学校教育におけるテストの問題点を浮き彫りにします。

さらに、思考の実践的なトレーニング方法と、思考と才能の関係について解説します。

8章「現代に必要な知能」では、コンピュータ(人工知能)と共存する現代において、人間はどんな能力を伸ばして行けば良いかを解説します。

前半部分では、人間とコンピュータ(人工知能)の能力の比較を行います。感覚器官・運動器官、記憶力・知識量・思考力などを比較していきます。

さらに、問題解決力の比較と、大量実験による問題解決のデメリットを解説します。また、人間がコンピュータに仕事を代替される条件についても解説します。

後半部分では、いかにして人間の知能を正しく測定するかを解説します。短期記憶力・長期記憶力の測定法、知識量の測定法、記憶価値の高い情報の分類、思考力の測定法について詳しく解説します。

さらに、良くある不適切な思考問題の例を複数提示することで、思考に対する理解を深めていただきます。

本書(完全版)は13万文字とボリュームがありますが、コンテンツの質は保証します。本書で、あなたの思考が変わり、人生が変わることをお約束します。

究極の思考法を身に付け、今日から思考を変えて、人生を変えましょう

目次
◆はじめに
1章 知能とは何か
◆知能に関係する事象
◆記憶と知識
◆情報の種類
◆思考の定義
◆思考の意義
◆思考と記憶
◆解法
◆処理
・1章のまとめ
2章 記憶力と記憶術
「記憶力」
◆記憶力のメリット
◆記憶力のデメリット
◆ひらめきの正体
◆人間とコンピュータの記憶
◆学校の勉強と記憶力
◆記憶力の低さは補える
「記憶術」
◆記憶術の種類
◆記憶術の欠点
◆記憶力は伸びない
・2章のまとめ
3章 思考と解法
◆解法の作成と想起
◆数学の情報の特徴
◆数学が難しく感じる理由
◆解法の想起と思考の混同理由
◆解法の効果
◆解法の記憶の注意点
◆解法が使えない場合
◆数学が無駄であることの証明
◆数学と記憶力の関係
◆数学と教育
◆独立分野
・3章のまとめ
4章 高学歴の特性と問題点
◆問題の分類
◆感情と思考
◆高学歴の性格の特性
◆高学歴の知能の特性
◆上司が馬鹿な理由
◆仕事における問題解決
・4章のまとめ
5章 究極の思考法・上
◆思考の基礎知識
事象の結合
◆結合の方法
◆独立
事象の分割
◆分割法
事象の除去
◆末梢の除去
◆本質の除去
問題の設定と解決
・5章のまとめ
◆不完全な思考法
6章 究極の思考法・中
「副領域と思考者領域」
情報の取得
◆検索/実験
◆因果の情報の取得
情報の保存
◆情報の記憶
◆情報の記録
◆特徴
◆記号
計算
思考者領域
・副領域と思考者領域のまとめ
「人間の思考法」
情報と感覚器官
◆知覚
◆認識
◆想起
人間の行動の分類
◆行為
◆反射
◆感情
◆気分
人間の行動の誘導
◆伝達対象
◆本体
◆記号
◆情報源
・人間の思考法のまとめ
7章 究極の思考法・下
◆練習問題
全体の方針決定
捨てる
◆購入
◆食べる
◆保持
◆発見
◆移動
◆入れる
投棄
◆発見
◆移動
◆離す
客の行動後
情報伝達
◆伝達対象
◆本体
◆記号
◆情報源
・全体の補足
思考のトレーニング法
◆思考と才能
8章 現代に必要な知能
「人間とコンピュータの比較」
◆知能に関係する事象
◆記憶力の比較
◆知識量の比較
◆思考力の比較
◆問題解決力の比較
◆仕事の代替
・人間とコンピュータのまとめ
「知能の測定法」
◆記憶力の測定
◆知識量の測定
◆思考力の測定
◆不適切な思考問題の例
・知能の測定法のまとめ
◆おわりに


以下、本文1章に入ります。

知能が低い状態が馬鹿である。「高学歴な馬鹿はなぜ存在するのか?」を解説する前に、まずは「知能とは何か」を明確にしておこう。

知能は知識を扱う能力であり、記憶力・知識量・思考力の3つの能力で決定される。記憶は記銘/保持/想起に分けられ、情報を脳内に取り入れ保存し、思い出すことである。

記憶力が高ければ、大量の知識を脳内に保存しておき、必要時にすぐに利用できる。知識は情報の中で脳内に保存しているものを指す。

知識量は単純な量ではなく、有益な知識量を指す。思考力は情報をいかに上手く利用できるかの能力である。

思考力が高ければ、同じ知識量でも、より多くの発想をすることができる。以下、これらの知能を決定する能力について、より詳しく解説していく。

◆知能に関係する事象

知能に関係する主な事象(物事及び現象)としては感覚器官/運動器官、性格/健康がある。

・感覚器官

「感覚器官」とは何らかの物理・化学的刺激を受け取り、情報を得るための器官である。主な感覚器官としては眼、耳、鼻、舌、皮膚がある。

感覚器官の能力が優れているほど、より多くの情報を取得できる。例えば、視力が優れていれば、より遠くの情報を取得できる。

しかし、テストで必要な知識は文字情報が主であり、情報を得るために特に優れた感覚器官は必要無い。

最低限の視力があれば良く、視力が低ければメガネやコンタクトレンズで補える。テストにおいては必要最低限の感覚器官の能力があれば良い。

・運動器官

「運動器官」とは全身の骨/関節/筋肉などの身体運動を行うための器官である。運動器官の能力が優れているほど、より多くの知識を取得できる。

ある街の情報を手に入れたい場合に歩く能力が優れていれば、広範囲を効率的に歩くことで、より多くの情報を取得できる。

しかし、学校の勉強においては、運動器官が優れていないと手に入らないような情報はほとんど無い。

優れた感覚器官、知識量、思考力を有していたとしても、運動器官が無ければ、思考結果を外部に伝達することができない。

意思伝達に使用する代表的な運動器官としては喉(声で伝達)、手(主に文字で伝達)がある。

テストにおいては文字を書く、マークシートを塗り潰すなどができれば、特に高い運動器官の能力は必要無い。テストにおいては必要最低限の運動器官の能力があれば良い。

 

・性格/健康

感覚器官/運動器官、知能の全てと因果があるのが、「性格」と「健康」だ。いくら知能が高くても、怠け者で勉強をさぼりがちなら知能を伸ばしにくい。

また、病気がちで体調不良なことが多ければ、長時間の勉強ができないので知能を伸ばしにくい。

その他の事象

その他の知能に関係する事象としては外見、声質、体臭などがある。これらが他者にとって不快であれば、他者の対応が変わり、得られる情報が減少してしまう可能性がある。

しかし、テストでは文字情報がメインなので、これらの能力が高い必要は無い。

◆記憶と知識

記憶力が高ければ、大量の知識を脳内に保存しておき、必要時にすぐに利用できる。以下、記憶の能力の種類について解説していく。

・記銘/保持/想起

 情報の記憶の過程は記銘→保持→想起という流れだ。記銘は情報を脳内に取り入れることである。保持は取り入れた情報を脳内に保存しておくことである。そして、想起は保持された情報を思い出すことである。

「記憶力が高い」とは、これらの各過程の能力が全般的に高いことを指す。例えば、記銘と保持の能力は高いが、想起の能力が低い人間は記憶力が高い人間とみなされない。 

・短期記憶/長期記憶

保持は短期記憶/長期記憶に分けられる。短期記憶はおよそ数秒から数十分程度の知識の保持を指す。

長期記憶はおよそ数時間から数か月以上の知識の保持を指す。両者の境界は明確ではない。一般に短期記憶力と長期記憶力は比例している。

短期記憶力が高い人間は長期記憶力も高いし、長期記憶力が高い人間は短期記憶力も高い傾向が強い。

 

・精度/容量

「記憶の精度が高い」とは情報を少ない回数で記憶できることを指す。「記憶の容量が大きい」とは多くの情報を記憶できることを指す。

一般に精度と容量は比例している。情報を少ない回数で記憶できる人間ほど、大量の情報を記憶できる。逆もまた然りだ。

 

・記憶と知識の種類

記憶は感覚記憶/運動記憶/一般記憶に分けられる。それぞれに対応した情報を感覚情報/運動情報/一般情報と定義する。

感覚記憶は色の違いや、音の違いなどの感覚情報を記憶する時に使用する。運動記憶はボールを投げたり、ジャンプしたりする時の体の動きを記憶する時に使用する。

一般記憶は感覚器官と運動器官のどちらでもない事象、主に文字情報を記憶する時に使用する。

テストで必要とされる知識はほぼ全てが文字情報、一般情報である。よって、一般記憶以外の記憶力は最低限で良い。

 

以上をまとめると、「記憶力が高い」とは「記銘/保持/想起」の各能力が全般的に高いことを指す。

さらに、記憶力は「短期記憶/長期記憶」「精度/容量」の能力に分けられる。一般にこれらの能力は互いに比例し、どれか1つが高い人間はその他の能力も全て高い傾向が強い。

テストで必要な情報はほぼ全て一般情報であるため、テストでは一般記憶力の高さこそが重要である。感覚記憶力と運動記憶力については必要最低限の能力があれば良い。

※以下、「記憶力」という表記は断りの無い限り「一般記憶力」を指すものとする。

◆情報の種類

・事象と要素

事象(物事及び現象)は時間的/空間的に分割することができ、分割された事象を要素と定義する。各要素の状態の組合せで事象を表現できる。

(事象と要素の状態の例)

「りんごが存在する」という事象はりんごの大きさ、形、色、固さ、重さ、味、成分、位置などの要素に分けられる。そして、各要素がどういう状態であるかで「りんごが存在する」という事象を表現できる。大きさの状態、形の状態、色の状態、固さの状態、・・・、という各要素の状態の組合せで、全ての「りんごが存在する」という事象を表現できる。

本質と末梢

事象は本質/末梢に分けられる。ある事象において、因果(因果関係)が強い事象(の情報)を「本質」、因果が弱い事象(の情報)を「末梢」と定義する。

他の事象に影響する事象が「原因」、他の事象から影響される事象及びその変化後が「結果」である。影響するとは「事象の状態が変化すること」である。状態が変化しない事象同士の間には因果が存在しないということになる。

「因果の強さ」は以下の2つから総合的に判断する。

 1.影響の大きさ

 2.影響する確率の高さ

影響が大きく、かつ影響する確率が高い事象が本質である。単に因果が「存在する」ことを確認するだけでなく、必ず影響の大きさ/影響する確率の高さを確認しなければならない。

本質と末梢は相対的な基準である。同じ事象でも、どの事象に含まれるかで末梢となったり、本質となったりする。

(因果の強さの例)

「家から短時間でスーパーまで行きたい」という問題について思考するとしよう。「道中に隕石が落ちる」という事象は、影響は大きいが確率は極めて低いので末梢である。「ズボンの素材」という事象(ズボンの要素)は、肌に接触しているので影響する確率は高いが、問題に対する影響はかなり小さいので末梢である。「通る道」という事象は、問題に対する影響が大きく確率も高いので本質である。

(因果が相対的である例)

「本を読んで料理の有益な知識を増やしたい」という問題を設定したとしよう。本という事象は大きさ、形、色、固さ、重さ、内容(文字)、・・・などの要素に分けることができる。この問題に対しては本の内容が本質である。本の大きさ、形、色などの要素は料理の知識を増やすこととは因果が弱い末梢である。一方、「本を武器として利用したい」という問題を設定したなら、本の大きさ、形、重さなどの要素が本質となり、色や内容という要素は末梢となる。

・本体と記号

事象そのものを本体、本体を別の事象で表したものを記号と定義する。なぜ記号が存在するのかと言うと、本体のままでは情報の伝達が不便だからだ。記号として代表的なものに言語(文字)がある。

(記号による伝達の例)

「近くのスーパーでりんごを買って来て欲しい」という情報を伝達するために、これから買おうとしているりんごの本体や、スーパーの本体を相手に見せて示すのは困難だ。そのため「スーパー」「りんご」という文字(記号の一種)を用いて伝達することになる。

記号はほぼ全ての状況において、他の事象と因果が弱い末梢である。

「りんごが存在する」という事象において、「りんご」という記号はりんごの大きさ、形、色、固さ、重さ、味、成分、位置などの要素とは全く因果が無い。記号を知覚/認識することで、人間は影響を受ける。

◆思考の定義

「思考」を、問題解決のために因果に基づいて事象を結合/分解する行為と定義する。結合に必要な情報は本質(因果の強い事象及びその情報)であり、末梢(因果の弱い事象及びその情報)は不要である。

結合

結合は事象の情報を因果に基づいてつなぎ合わせる行為である。A-A´→B-B´(A-A´ならばB-B´)という知識がある状態で、B-B´→C-C´という情報を取得すれば、2つの事象を結合してA-A´→C-C´ということが分かる。A-A´を実際にやらなくても、C-C´という結果になることが予測できる。

※因果を表す場合において、「→」は原因と結果を、「-」は変化の前後をつなぐ記号とする。

 

(結合の例)

「日焼け止めは紫外線を強く反射/吸収する」という情報を知っているとしよう。さらに、「肌に紫外線が当たらなければ、肌が黒くなりにくい」という情報を取得した。

これらの事象を結合すると、「日焼け止めを塗れば、肌が黒くなりにくい」となる。日焼け止めを塗る部分と塗らない部分に分けて、紫外線に当たるなどの実験をせずとも結果を予測できる。

分解

分解とは事象を要素に分割したり、末梢などの不要な情報を除去(思考対象から除外)したりする行為である。

事象そのままでは因果が判定しにくい場合であっても、分割してより小さな部分に着目することで、因果が把握しやすくなる。また、不要な情報を除去することで、事象の結合がしやすくなる。

思考例

思考について詳しく解説する前に、まずは思考例を見て、思考とは何かを大まかに理解して欲しい。

 

(思考例1)問題:服を簡単に着脱したい

草むらを歩いた後、ある植物の実が服に付着していた。この植物の実の形を応用して、服を容易に着脱できるテープを開発した。

事象を分割して要素に着目すると、植物の実の色は「植物の実が服に付着する」という事象と因果が弱いので除去(思考対象から除外)する。植物の実の味も「植物の実が服に付着する」という事象と因果が弱い。

植物の実の重さも、十分に軽いはずなので、因果が弱いだろう。植物の名前なども因果が弱いので除去する。こうして分割された要素ごとに因果を確認していくと、因果が強い要素は植物の「形」の要素であることが分かった。

 

(思考例2)問題:高速で移動する乗り物の音を小さくしたい

ある鳥は獲物を捕らえる時、高速で移動するが音もなく獲物に近づくことができる。この鳥の羽の形を応用し、乗り物の移動音を小さくすることができた。

鳥の名前、鳥が捕らえる獲物の種類、鳥の羽の色などは「高速で音も無く近づく」という事象と因果が弱い。因果が強いのは鳥の羽の「形」、「位置(時間)」(移動速度)の要素である。

(思考例3)問題:網で魚を上手く捕獲したい

ある戦争では隙を見せて敵軍をあえて中央に進行させ、回り込んで後ろから攻撃して倒したらしい。また、あるビルで、芸能人がガラスのドアに衝突して大けがをしたというニュースを見た。

これらの情報を応用して、網の一部を透明の素材にし、そこから脱出しようとさせて、網で後方から囲み捕獲するという方法を思い付いた。その結果、以前の方法よりも3倍効率良く捕獲できるようになった。

戦争名や戦争のあった土地の名前、兵士の鎧のデザイン、指揮官の体重、ビルの名前、芸能人の名前、ビルのデザイン、ビルの場所などは因果が弱い。

戦争について、因果が強いのは隊列の「形」だ。細長い形のものは曲がることで中央付近の物体を囲むことができる。

芸能人のガラスのドアへの衝突について、因果が強いのはガラスの「色」と「知識」という要素である。透明な色のドアという知識が乏しかったから、通り抜けられると判断した訳だ。魚も同様に、透明な色の物体という知識が乏しい可能性が高いため、応用できたということだ。

 

(思考例4)問題:人間の寿命を延ばしたい

マウスにある薬を投与すると寿命が延びた。この情報を応用して、人間に同じ成分を投与すると寿命が延びるかもしれないと予測した。

マウスに効果があったということは、何らかの臓器(動物の要素)にその薬が影響を与えたということだ。マウスと人間は哺乳類であり、臓器が類似している可能性が高い。

爬虫類で実験するよりも、哺乳類のマウスで実験した方が体の構造が類似している可能性が高く、応用できる可能性も高いということだ。

 

(思考例5)問題:商品を上手く陳列して売り上げを上げたい

ゲーム内の複雑怪奇なダンジョンを探索していた時、苦労の末、レアアイテムを見つけて非常に嬉しかった。

この情報を応用し、商品の陳列を分かりやすい陳列ではなく、あえて分かりづらくして、思いがけない商品を見つける楽しみを演出した。すると、大幅に売り上げがアップした。

因果が強いのは物体の「位置」の要素と、苦労の末に発見した時に嬉しいという「心(感情発生の構造)」の要素だ。

 

以上の思考例で、思考とは何かを大まかに理解いただけただろう。事象を分解して因果の強い部分を取り出す。

そして、別の事象で共通(類似)の要素があれば、その要素同士を因果で結合でき、別の分野の事象の結果を予測できる。

また、思考例を見て理解していただけたと思うが、思考では因果のある事象同士しか結合できない。因果の無い事象同士は絶対に結合できない。

事象の中の因果が強い情報という、ごく一部の情報しか思考には利用できない。

「知識量が多いほど、発想しやすくなる」という意見があるが、これは正確ではない。思考に使える情報は本質=因果の強い事象のみであり、いくら大量に末梢を記憶していても結合できないので、発想の幅は広がらないのだ。「本質の知識量が多いほど、発想しやすくなる」が正確な表現である。

 

・情報の応用の参考図

1.事象の要素を把握

2.要素間の因果に基づき結合/分解⇒因果が強い部分だけを残す

3.別の情報を認識⇒同一の要素の因果はすぐに分かる

 

◆思考の意義

問題解決における思考の意義は「実験量を減らせる」ことだ。実験とは情報を得るために実際に事象の状態を変更することである。

思考せずとも、因果のある全事象の全ての状態変更の方法を実行できれば、必ず問題解決できる。しかし、それには金や時間、労力など様々なコストを伴う。

思考によって実行困難な方法や価値の低い方法が判明すれば、その方法をわざわざ実験せずに済む。それにより、実験量を減らすことができる。また、実験量を減らすことで実験困難な問題を解決することもできる。

 

(大量実験による問題解決の例)

「飲食店の売り上げを最大にしたい」という問題を設定したとしよう。飲食店という事象を机、椅子、メニュー、内装、立地、照明、店員、・・・などの要素に分割する。

さらに、それぞれの事象を、机の大きさ、形、色、位置、・・・、椅子の大きさ、形、色、位置、・・・、○○の大きさ、形、色、位置、・・・と要素に分割する。これらの要素の全状態の組合せを実験すれば、問題の解決は可能だ。組合せのどれかでは必ず売り上げは最大になるからだ。

しかし、この方法は金や時間、労力などがかかり過ぎる。思考すれば、実行困難な組合せや価値が低い組合せを判定し、実験量を減らすことができる。この食材をこの形にすることはできない。

この店員の服装とこの机のデザインは合わない。このメニューのデザインとこの照明の色は相性が悪い。この机と椅子の配置だと客が通りにくい。こういったことが思考で判明すれば、その組合せをわざわざ実験せずに済む。

 

(実験困難な問題解決の例)

あるコードを切れば、タイマーが止まる時限爆弾があるとする。間違ったコードを切ってしまうと取り返しがつかないので、実験を繰り返し行うことはできない。

よって、コードを切る前に十分に思考して実験量を減らし、どのコードを切るかを決定する必要がある。

◆思考と記憶

思考=事象を結合/分解することで、実験量を減らせるだけでなく、情報(本質)の記憶が容易になるというメリットも発生する。

 

・思考による復習

思考に使える情報である本質は思考時に想起され復習される。外部の情報を知覚/認識してから情報を想起するのではなく、思考では知識を意識的に想起する。これにより、知識同士がより強く結合(記憶)される

一方、末梢は思考に使えないので、思考時に想起されにくく、復習されにくい。

 

・結合による保持/復習率の上昇

結合により情報の記憶が容易になる。知識は脳内で独立した状態であるよりも、他の知識と結合した状態である方が保持されやすい。知識は他の知識と結合していることで、脳内に安定して存在できる。

さらに、結合していることで、間接復習率が高まる。ある知識が刺激される=想起もしくは知覚/認識されると、その知識と結合した周囲の知識も刺激され、間接的に復習される。

例えば、結合していない独立した知識、B-B´という知識単独ではB-B´を刺激しなければB-B´が復習されない。

しかし、A-A´→B-B´→C-C´という結合された知識ならば、B-B´を刺激すれば、B-B´が復習される(直接復習)。さらに、A-A´、C-C´を刺激しても、結合しているB-B´が復習される(間接復習)。

 

・分解による情報量の削減

事象を分解、不要な部分を除去することによって、情報量を減らすことができる。

例えば、ある物体において、大きさ、形、色、固さ、成分、重さの要素のうち、色だけが本質であると分かれば、色の状態だけを記憶すれば良く、その他の要素の状態は記憶せずに済む。情報量を減らすことで、記憶が容易になる。

 

・感情変化により記憶が容易

さらに、本質は変化する/させる事象であり、変化を伴うため印象に残り記憶しやすい。特に視覚的な変化を伴う本質は印象に残りやすい。

また、変化を伴う事象は、人間の感情を動かしやすく記憶しやすい。さらに、ある分野から取り出した情報が他分野の情報に応用できる場合、「この分野の情報が、別の分野に応用できるのか」という「応用の意外性」があり、印象に残り記憶しやすい(先述の思考例を参照)。

一方、末梢は変化しない/させない事象であり、変化を伴わず、応用の意外性も無く、感情が動きにくいため記憶しにくい。

 

・忘却しても導出しやすい

本質の知識は例え忘却してしまっても、周囲の本質から導き出すことができる。ジグソーパズルで例えてみよう。

ある程度完成しているジグソーパズルで、操作を誤って一部のピースを失くしてしまった。しかし、失くしたピースの周囲のピースの形/絵柄から、それがどんなピースであったかを予測できる。

・多分野での本質

多分野で本質である事象ほど、結合数が多く記憶しやすい。例えば「色」という要素は料理、アパレル、建築、絵画、ウェブデザインなど、多分野で本質である。

よって、それぞれの分野で他の要素との結合が存在する。そのため、思考による復習や、結合による保持、間接復習がされやすく、忘却しても導出しやすい。

以上、多数の理由から、本質=思考に使用できる情報は末梢=思考に使用できない情報に比べて非常に記憶しやすいと言うことができる。記憶力が低い人間であっても、本質は非常に記憶しやすいのだ。

先ほどの思考例を思い出してみて欲しい。どう情報を応用したか、何度復習しても覚えられそうにない、という人はほとんどいないだろう。

:記号の記憶

記号はほぼ全ての状況において、他の事象と因果が弱い末梢であり、記憶しにくい。

ただし、「忘却」「多数」「パズル」「ピース」「操作」「周囲」などの記号は日常生活で普通に使用される記号(言語)である。

したがって、知識の直接復習の回数が多く、記憶しやすい。一方、固有名詞は記憶しにくい。

固有名詞はある本体だけを指し示す言葉であるので、知識の直接復習がされにくく、記憶しにくい。

テストでよく問われる問題として、固有名詞の知識がある。ある事象の名前は何か、その固有名詞の指す内容は何かなどが出題される。

固有名詞は末梢かつ直接復習率が低く記憶しにくいので、固有名詞の知識問題に対しては記憶力が高い方が有利である。

◆解法

解法とは問題解決において、「理想の状態に近づける良い方法」を指す。

解法=「初期条件」+「状態の変更方法」と表すことができる。こういう事象の状態に対して、こういう状態の変更をすれば上手く行く、という情報である。

解法は初期条件と状態の変更方法を知っていれば良く、中間の因果は知らなくて良い。

解法を取得する方法は「思考して解法を作成する」もしくは「完成された解法を利用する」の2つに分けられる。

自力で思考して解法を作成できなくても、完成された解法を記憶しておき、解法を適用すれば、問題をはるかに短時間で解決できる。

 

(解法と中間の因果の例)

食材をこの方向に切ることで、成分が空気と接触しやすくなり、成分Xが成分Yに変化する。さらに、60℃の水で1分間、熱することにより、成分YがZに変化し、味が美味しくなる。

中間の因果=「どういう原理で味が変化するか」を知らなくても、解法である「この食材はこの方向に切った後、60℃の水で1分間、熱する」ということさえ知っていれば、問題解決=同じ味にすることができる。

 

・解法の参考図

●の状態である時に、各下線の状態の変更を行う。すると、●の状態が変化していく

:解法の記憶

解法は本質ではあるが、一般的な本質と比較して記憶しにくいという特徴がある。解法はその問題特有の知識であるため、遭遇率が低く、知識の直接復習率が低い。復習するためには意図的にその知識を復習しなければならない。

また、「初期条件」と「状態の変更方法」は本質ではあるが、因果の末端同士の結合である。中間の因果が刺激されても、知識がほとんど復習されない。つまり、間接復習率が低い。

したがって、解法は本質であるものの、直接復習率/間接復習率が低いので記憶しにくい。解法を記憶して使用するためには記憶力が高い方が有利である。

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