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識学 安藤広大「リーダーの仮面 『いちプレーヤー』から『マネージャー』に頭を切り替える思考法」

自分に余裕がなくなると、つい「口うるさいお母さん」が発動してしまいます。自分の子どもに対して、ではありません。職場において、です。あれはやりました? これはどうなっていますか? と頻繁に訊くのです。
余裕があるときはもう少し考えながら発言できるのですが、もういっぱいいっぱいになってしまうと、自分の考える道筋の通りに進んでいるか、という感じの確認になってしまいます。任せようと思って黙っていたら、心配していた通りになったりすると、もう次からは「宿題やった?」状態になってしまいます。今のところ、「今宿題やろうと思ってたんです」みたいな答えは返ってきていませんが、逆の立場だったら心の中で毒づいてしまうだろうと思います。
ここ最近、お母さん発動頻度が高くなってきたな、と感じていたので、マネジメント系の本を読んでみようと思って、数か月前に発見して気になっていたこの本を図書館で借りてみました。

読んだら元気になるかな、くらいの気持ちで読んだのですが。

もう冷や汗が出そうなくらい、今の自分、よくない状況だなあ、という感じでした。

本の最初で、5つの質問が出されます。

  1. 「いい人」になろうとしていないか?

  2. 「待つ」ことを我慢できるか?

  3. 部下と「競争」をしていないか?

  4. 「マネジメント」を優先しているか?

  5. 「辞めないかどうか」を気にしすぎていないか

なんかどれも、イエスとはいい難い感じがあります。3の部下と「競争」をしていないか、については、大丈夫だと思いますが、お母さん発動は2の「待つ」ことができないことの証明だと思うし、5は、自分の部署でなくても、前向きな感じではなく辞めてしまう人がいると、その決断自体は素晴らしいと思うものの、誰のせい?みたいな発想がでてきてしまうので、気にし過ぎていると思います。

4に関しては、マネジメントを優先していると思っていましたが、少し違うかもしれないと思い始めました。

私が優先しているのは、人に対するマネジメントではなく、それぞれが担当する仕事に対するマネジメントかもしれないと気付いたのです。自分の担当している事務よりも優先しているというだけのことでした。それも結局、マネジメントできている、と思いたいがためだったのかなと。それこそ、手伝ってもらいながら仕事を回す「いちプレーヤー」と同じ状態だったのかもしれません。

もちろん業務についてのマネジメントという考え方もあると思います。やらなければ組織の信用にかかわるようなこともある。でも、人も含めたマネジメントができないと、短期的にはうまく行っていたとしても、持続可能にはならないのだ、ということに気付かされました。本の中では違うアプローチからの説明でしたが、こういう理解もできると思いました。

私がこれまでに理想的だな、と思ってきた上司は、自分が納得すれば最後まで責任を取ってくれる、と感じる人たちでした。これまでかなり自由度の低い仕事でも、自分がこれは必要だ、と思うことを見つけると、小さいことでもちょっと変えてみたり、大きいことを一緒にやってくれる人を見つけて頑張ってみたり、ということをしてきました。
そういうときに、「やってみよう」と言ってくれる人が、理想の上司でした。その方が印象が強いからです。
でももっとその前、まだ本当に自分がまだ色んなことに慣れていなかった時はどうだっただろうか、と思うと、実はあまりよく思い出せなかったりもします。そういう頃は上司というよりは、先輩に教わったりすることも多いからかもしれませんが、あやふやになってしまったからです。

自分がマネジメントする立場になると、やはり自分が理想的だと思った上司のようになりたいと思うものではないかなと思います。少なくとも私はそうです。ですが、現状は、あまり「こう変えてみたい」、「こんなことをやってみたい」と思うような提案はなかなか出てきません。なので自分が理想としていたような態度を示す状況はあまりなく、何だか微妙な感じになっています。
でも、実は提案がなかなか出てこないのは、「口うるさいお母さん」発動が原因なのかもしれない、と思うようになりました。

何か提案したら、また口うるさいこと言われるんじゃないか、という風に思われているのかもしれません。もしそれが本当だとしたら、と思うと、冷や汗が出てきそうです。

この本のタイトルは、「リーダーの仮面」ですが、成長させるために敢えて突き放す、というようなことをいっています。本の中では繰り返し、「いい人」になるな、距離を置いて、といったことが出てきます。ねぎらうために何かをごちそうしたりということも違うとか。私も職場の暑気払いや忘年会に参加したいと思うようなタイプではないですし、仮にそういうのが好きでも一緒に行こうと誘ったりはしないつもりですが、少しだけそれは寂しい気もしてしまいます。
ですが、職場は寂しさを癒す場所ではない、と著者は言います。

ですが、生活の糧を得る大切な場所であるとも言います。そしてそれ以外のもっと大切な、「成長」が得られる場所だとも。全体を通して、この本で示された上司が取るべき行動の裏には、部下の成長を引き出すということがあるといいます。
でも、もしそれが本当にできたとしたら、それは生半可なやさしさより、ものすごい愛情、それこそ親の実の子どもへの愛情と同じくらい大きなもののような気がします。人から人に何かを伝える、単に言葉とか表層的なものではなく、深い仕事の真髄のようなものを受け継いでいくというのは、それくらい、価値があるものなのだと感じました。

著者は識学という会社を立ち上げ、マネジメントに関しての法人向け、個人向けのサービスを行っています。

著者は「数値化の鬼」、「とにかく仕組み化」という本も書いているようなので、そちらも読んでみたいと思いました。

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