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オーケストラ代理のピアノ


Chère Musique

最近はモーツァルト作品の合唱レッスンを受けることが多いのですが、そんな中でオーケストラの代理のピアノ演奏についていろいろ思うことがあります。



原曲が管弦楽や室内楽とのアンサンブルである作品は、ほとんどの場合、練習段階ではそのパートをピアノで代行します。
歌やソロ楽器などの主役のパートのために開催される演奏会では、本番もピアノで代行することもあるくらいです。

(身近なよくある例では、協奏曲のオーケストラパートをピアノにした編曲があります。
編曲の確率されたジャンルのひとつで、リストもいくつか残しました。
ですがこのように、作曲家がピアノで表現することを前提にオーケストラパートを編曲したものは、二台ピアノ作品の一種という捉え方もあり、代理ピアノという域を超えているかも知れません。)



いろいろな時代、作曲家の作品で、オーケストラの代理をピアノがつとめるという場合があるわけですが、私が一番多く接するのはモーツァルト作品。

古典派音楽の演奏方法や解釈については、いろいろなお話があります。
私も一家言持っています。
演奏家はそのような時代や民族による演奏法の違いを、解って実現できるのが理想ですよね。
音楽指導者もそうです。その違いをいかに興味を引くように教えられるか。

そして、自分のための演奏がそうであるように、伴奏ピアノやオーケストラ代理のピアノの演奏も、プロならそうでなくてはならないと思うのです。



簡単に言ってしまうと、モーツァルトのオーケストラ代理のピアノパートを弾くには、楽譜に書いていないたくさんのことを知っていて、ソロの時よりももっとしっかり古典音楽を実現できなくてはなりません。

そもそもオーケストラ代理のピアノの楽譜というのは、オーケストラスコアを無理やりピアノ用大譜表に書き込み10本の指で何とか音が出せるようにしたものがほとんどなので、そのまま生真面目に書いてある音すべてを弾くことが良いとは限りません。
そんな考えで臨んだら、まるで難しいピアノ作品のような迫力の音楽になるでしょう。
そうでは無いからこそ、良い楽譜にはフレーズに小さくfluteなどの添え書きがしてあるわけです。



まず、オーケストラでの原曲の演奏をよく聴いて研究し、各音がそれぞれ何の楽器なのかを理解する。
そして自分がソロでその作曲家やその時代の音楽を弾くときにやっていることを土台にして、楽譜に書いていない(でも当たり前な)ことをふまえて練習する。
そして練習会場やリハーサルでは、指揮者や主役の呼吸と表現をしっかり捉えて弾く。

ピアニストなら誰でもできるというお仕事ではありません。



今回モーツァルト演奏会をする“音楽工房くら”には、昔から何人ものピアニストがお手伝いに来てくれていて、かなりレベルの高い人たちです。
その中でも特に、今回ほとんどの練習やリハーサルに来てくださっている新井千晶さんと、昔よく来てくださっていて今は大御所ピアニストとなった松岡直子さん。
このお二人は群を抜いています。

今回の新井千晶さんは、これまでの練習でも素晴らしかったですし、先日のリハーサルではミサ曲、合唱曲、オペラアリアなど10曲近くをすべて一人で四時間くらい、、、完璧な古典派音楽の演奏法で、楽譜から頻繁に目を離して指揮者や歌い手を見ながら弾く、素晴らしいお仕事でした。

このイベントの以前は、いくつかの合唱団で現代の日本の合唱音楽の伴奏ピアノを聴かせていただきましたが、それらも今風の複雑なリズムや光彩豊かな音色表現など、素晴らしいなと思っていました。
本当にレベルの高いピアニストは、ピアノだけでなく音楽全般に関する研究が深いのだなと感じます



、、、というわけで、
モーツァルトのミサ曲を歌う演奏会がいよいよ今週末31日(日)、東京オペラシティ・リサイタルホールで開催されます
長年シリーズで開催してきましたが、この15回目で最終回です。
今回のメインプログラムのミサ曲は『変ロ長調 K.275』。
その他、オペラアリア、混声合唱作品、女声ア・カペラ、管弦楽曲など、多彩なプログラムがすべてモーツァルト作品、というとても珍しい形の演奏会です。
私は、指揮者の門下生で構成されるモーツァルトミサ曲合唱団東京の一員として出演します。
楽しんできます!


Musique, Elle a des ailes.

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