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故郷を恋うる歌たち

Chère Musique

『故郷』高野辰之、岡野貞一
『椰子の実』島崎藤村、大中寅二
『故郷の人々』勝承夫、S. フォスター
『峠の我が家』岩谷時子、アメリカ民謡
どれも皆、歌の講座でよく取り上げる作品です。

『故郷』『椰子の実』は日本の歌、『故郷の人々(スワニー河)』『峠の我が家』はアメリカの歌。
共通しているのは、歌詞の内容が故郷を恋うる歌だということです。

日本の場合は、山村から都会へと働きに来た人々が、今とは違って簡単には帰れない状況の中で、親や兄弟家族たちに会いたい、家のある土地の自然の中に身を置きたいという切なる気持ちを歌っています。
彼らの心の中では、家族は味方で自然は自分の居場所、どちらも自分を守ってくれる、大切などというくらいの言葉では言い表せないものです。

アメリカの場合は、いろいろある中でも、南部の黒人の人々が解放後に仕事を求めて、生きる道を求めて北部へ来ている、という設定の歌が多いようです。
そして日本よりも、「母」の胸の中に、、、ということが多く歌われ、親子関係のお国柄が表れています。


どちらの場合も、そう簡単には帰ることはできない状況を前提として作られています。
現代の私たちがこれらの歌を歌う時に、本当に的確にその心情を掴んで表現することができるでしょうか。

きっと他のたくさんの国々にも、故郷を離れて生きなければならない人が多くいるような国のあり方が歴史上にあれば、このような歌があります。
同じような状況をもとに同じような心情を描いた歌でも、国によって、その歴史によって異なる音楽での表し方は、興味深いものです。


そして、外国のこのような歌を日本語訳詞に作る際に、日本人が共感しやすい詩にすることも、一つの文化ですね、
『峠の我が家』の舞台であるカンザス州には、山はなく、従って峠もありません。
これは明らかに、山だらけの日本に住む私たちが共感し易く作っているのです。

Musique, Elle a des ailes.

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