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ソフトバンクが3本のSPACを上場:調達総額は1000億円以上

ソフトバンクは3月9日に2本のSPACを同時上場させました。SVF Investment Corp 2とSVF Investment Corp 3はNASDAQに上場し、AI領域のスタートアップへの買収を目的に4億8000万ドルを調達しました。

同社のSPAC第1号であるSVF Investment Corpは2021年1月に上場しており、1号ファンドは総額6億ドルを調達しました。ソフトバンクはこれら3本のSPAC上場を通じて10億ドル以上の資金を調達したことになります。

主幹事証券会社はシティグループ、UBS、ドイツ銀行、キャンター・フィッツジェラルド、米国みずほ証券とのことです。

SVF Investment Corpの枠組み

For the past 40 years, Softbank has invested ahead of major technology shifts. Now, we believe the AI revolution has arrived. 

これまで40年間、ソフトバンクは大きなテクノロジーの変革を先取りして投資を行ってきました。我々は今、まさに「AI革命は来た」と考えています。

S1の序文は、こんなシンプルで力強いメッセージからスタートするSVF Investment Corpです。ファンドはソフトバンク・ビジョンファンドの成果とビジョンファンドで培ったノウハウとチームを活用して、テクノロジーの変革に投資をしていくことが明記されています。

CEOはビジョンファンドのトップであるラジーブ・ミスラ氏です。

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上記はS1に記載されている事業戦略です。SVF Investment Corpの合併先は、世界にも稀に見るソフトバンクの群戦略のメンバーに入ることで、以下のような強みをもたらすとのことです。

①孫正義の40年の投資・事業運営の経験と、テクノロジーの変化で収益をあげてきた実績
②ソフトバンクの投資・オペレーションの専門家
③機関投資家との幅広いネットワーク
④成長ステージにあるソフトバンクの投資先企業の専門性
⑤知名度の向上

S1のその後の投資領域の方針や投資先の選定方法などは一般的な幅広いものになっており、同ファンドの特徴は、上記の事業戦略に記載されるような、ソフトバンクのネットワークと、それを率いる孫さんを全面に押し出す一点にのみ成立していそうです。

各ファンドの株価の状況

今年1月に上場した1号ファンドは2号・3号ファンドの発表時に少し値を下げましたが、少し取り戻し、上場時と同じ水準になっています。

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SVF Investment Corp2、SVF Investment Corp3はともに上場後それほど大きな変動はなく、上場価格の10ドル近辺を動いています。

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SVF Investment Corpのユニークな点

ソフトバンクのSPACは、孫さんの目利き力や同社のネットワークなどの特徴がありますが、さらに目に見える特徴としてソフトバンク・ビジョンファンドとの関係があります。

ソフトバンク・ビジョンファンドは10兆円を超える巨大な運用資産をかかえ、米国ではSlackやDoorDash、UBERなど、アジアではBytedance、Grab、Tokopedia、Flipkartなどのユニコーンを投資先に持つ鬼ファンドです。

SVF2号ファンドと、SVF3号ファンドには、SPAC買収が決定した際に、ソフトバンク・ビジョンファンドがそれぞれのSPACの株式を購入できる権利が付与されており、その株式購入権はSVF2号には1億ドル分、SVF3号には1.5億ドル分が含められています。

これは何を意味するかというと、SPACには買収時に1億円規模で追加資金調達ができるオプションを持っているため、仮に買収候補に時価総額の大きな案件が現れた場合、より投資意思決定が早くできる、という良い点を持っています。

多くのSPACは買収時に調達した金額だけでは買収対象企業の調達額に見合わないため、PIPE(上場企業の私募投資)で追加の資金調達を行います。SPACがより資金を持っていれば、PIPE投資家は必要がなく、交渉の意思決定は早くでき、より良い案件を買収する機会に恵まれる可能性があります。

これは、比較的アロケーションが自由な大規模な運用資産であるビジョンファンドを持つソフトバンクだからこそできる、札束で良案件を引っぱたく戦略です。

SPACの合併先の探索期間は2年になります。この2年でソフトバンクは「AI革命」を推進する良案件と合併できるでしょうか。競争が激しくなっているSPACの領域で頭ひとつ抜け出す存在になれば、今後も立て続けにSPACを設立し、ソフトバンク・ビジョンファンドに次ぐ、新たなソフトバンクの資金調達手法になっていくでしょう。

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