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マイクロモビリティ・スタートアップのHelbizがSPAC経由で上場。評価額は$408MM

Uber Eatsなどのデリバリーサービスなどの普及や、シェアエコノミーの拡大、環境配慮などの背景からマイクロモビリティのサービスも興隆しています。

欧米では電動キックスターターのシェアサービスを提供するLime(ライム)やBird(バード)などが大都市を中心に普及しており、日本ではドコモのバイクシェアなどは都内の至る所で見かけるようになりました。

自分もドコモのバイクシェアの定額会員で、通勤に日常的に使っていますし、パリに出張したときには基本パリ中心部の移動はLimeを使っていました。ドコモバイクシェアのポートは都内だったら5分も歩けば見つかりますし、Limeは周りを見渡せば必ず1台は止められています。

最近では電動マイクロモビリティのLuup(ループ)は、昨年にVCのANRIやENEOS、大林組などから4.5億円を調達し、さらに大東建託などからも調達し、渋谷区、目黒区、港区、世田谷区、品川区、新宿区の6区で展開をはじめています。

ラストワンマイルの交通手段として注目を集めるマイクロモビリティのスタートアップですが、米国のHelbiz(ヘルビズ)が SPACを通じて上場するとの発表がありました。

Helbizの事業概要と上場の意図

Helbizは、2016年にニューヨークでイタリア人の連続起業家Salvatore Palella氏(サルバトーレ・パレーリャ)氏によって創業された会社です。

LimeやBirdと同様に電動キックスケーターのシェアを行う他、特徴的な点として、電動自転車や電動モペット(ミニバイク)などを同じプラットフォームで利用が可能です。

パリでも電動バイクのレンタルサービスはありますが、たしかLuupやBirdsはサービス提供しておらず、別のプラットフォームを利用しなければいけなかったと思います。

米国ではワシントンDC、アレクサンドリア、アーリントン、マイアミ、欧州ではイタリア・スペインを中心に、ミラノ、トリノ、ベローナ、ローマ、マドリッド、ベオグラードでサービスを展開しており、ユーザーは250万人程度だそうです。

同社は、SPAC上場で得られた資金を通じて、フードデリバリーの事業領域を拡張し、ゴーストキッチンの事業などにも参入する予定だそうです。

LimeやBirdが電動キックスケーターを軸としてサービスの磨き込みと提供地域の拡大を通じて成長を目指しているのに対し、同社はマイクロモビリティに関わる周辺領域をおさえてることで拡大を目指しているようです。

SPACは中国ベースの投資会社

Helbiz社はDavid Fu(デイビッド・フ)氏率いるGreenVision Acquisition Corpとの合併によって上場する予定です。

GreenVision Acquisition Corpは2019年に設立されたSPACで、上場当時は北米・アジアのヘルスケア領域への投資を目指して設立された会社のようで、上場当時5000万ドルを調達しています。

本拠地は上海に置いており、経営陣も中国系のメンバーのようです。 Green Vision Acquisition CorpのスポンサーはGreenVision Capital Holdingsという投資会社のようですが、あまり情報がなく実態はよくわかりません。

SPACの合併条件

Helbiz社と GreenVision Acquisition Corpの合併条件は以下の通りです。

バリュエーション:4億800万ドル
調達内容:8000万ドル(3200万ドルのPIPE含む)
クロージング予定:2021年第2四半期
上場取引所:NASDAQ
上場時ティッカー:HLBZ

PIPEにはどのような投資家が入っているのかは明らかになっていません。

SPAC合併アナウンス後のGreenVision Acquisition Corpの株価の動きを見てみましょう。

以下の図の通り、合併の発表があった2月9日には10.80ドルに上昇していますが、その後急落し、直近では10.28ドルで推移しています。

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発行価格の10ドルよりは上値をつけていますが、過去の株価推移も10.3ドルああたりをうろついていたので、今回の発表で結果的に上昇しておらず、投資家は本案件は様子見といったところでしょうか。

Limeのユーザー数が1500万人程度とのことですから、規模としては先行2社と比べてユーザー数は6分の1、LimeもBirdも昨年はじめ時点では2400百万ドルの時価総額であったので、今回の408百万ドルもLimeやBirdの6分の1ということで、単純に比較するとそれほどバリュエーションが高い、といったものではなさそうです。

しかし、LimeやBirdなど大手各社もまだ黒字化をはたせておらず、コロナ禍での外出禁止などの影響により、両社とも業績は厳しい状況にあるそうです。

ロックダウンが未だくすぶる状況下で、コロナ禍前のバリュエーションを払ってマイクロモビリティに投じるのがいい投資かどうか、という点については疑問符は残ります。

また、マイクロモビリティの領域は、グリーンエコノミーや新しい都市交通といった文脈ではポテンシャルを感じますが、1回の単価が小さく売り上げを上げにくい構造であったり、都市景観維持などの行政が絡むためにスピード感のあるスケールが困難であったり色々と課題は残っていそうです。

そのような意味でコロナ禍で伸びている、デリバリーやゴーストキッチンへの領域進出を合わせて発表した、ということかもしれません。



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