【特別支援教育】場面緘黙のあるさっちゃん
さっちゃんは、場面緘黙のある支援学校高等部の生徒です。場面緘黙というのは、ある決まった場面で言葉が出なくなる状態のことです。さっちゃんの場合は、家では自由に会話ができますが、家以外では言葉が出ません。
ある日、少し早めに仕事を終えた私が、バスで帰ろうとバス停に行くと、さっちゃんが待合のベンチに座っていました。私は、さっちゃんの横に腰掛けました。さっちゃんは、イヤホンを両耳に入れて、何かを聞いているようです。
私は、ちらっと、「話しかけたらさっちゃん嫌がるかな。さっちゃん話せないしな」という思いがよぎりましたが、「返事がなくても良いか」と思い直し、「さっちゃん、何を聞いているの?」と小声で話しかけてみました。
するとさっちゃんはにっこり微笑み、片方のイヤホンを私に手渡してくれました。
バスの中、二人で一つずつイヤホンを耳に入れて、一つの曲を聞きました。バスに乗っている間中、もちろん会話はありませんが、私の気持ちはとても温かでした。
バスを降りるとき、「ありがとう、さっちゃん。また明日ね。」と手を振ると、さっちゃんもにっこり笑って手を振り返してくれました。
さっちゃんは、言葉は出ないけれど、心の中には豊かな「コトバ」がある。そして、他の人と「心のコトバ」を交わしたいと願っている、ということを、私は教えてもらいました。
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