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◾️空中建築とは
高さ160cmほどある「住」をテーマとした立体作品です。展示する空間によって作品がどう見えるのか、多種多様な場所を通して新しい「見え方」発見をしていきます。

生活空間での撮影
階段での陰

◾️天井の高い木造の家での撮影
空中建築は「陰」があって成立する無機質な作品です。陰を出せる場所を探していたところ、ご縁があり木造のお家を貸していただくことになりました。家主の方の職業が大工であることからご自身で改装し天井の高い空間となっておりました。幅の広い階段と木の壁に合う照明を使われていたため撮影場所としてお借りしました。

高い天井に灯を設置

◾️陰にこだわる理由
空中建築は地上が砂漠化し住めなくなったため宙に浮く空中都市を造った。というSFストーリーです。その作品の中には人が住んでおり、私達が住んでいる世界とさほど変わらない生活を送ることができています。ただ違うのは都市が宙に浮いているということ。空想のようで実はリアルなお話。だからこそ作品にリアリティを持たせたく「陰」が必要でした。

◾️作品の適材適所
人と同じように「適材適所」というものが作品にもあります。空中建築は「陰を強く出せる場所」を条件としていたため、このお家を貸していただくことになりました。砂を撒かせてもらったり、好きな場所で吊るさせてもらったり、暗闇にしたり、エジソン電球を貸してもらったりと…制限なく撮影させていただけたおかげで陰を強く出せる写真を撮ることができました。

異質のようで家に馴染む作品
階段という生活空間で
家電と作品と

家電や家具がある中での撮影は陰以外にも生活の呼吸を感じることができとてもリアルでした。まるで作品の中にいるような感覚にもなりました。

ゆっくり自転する様子は、空気がピンと張り詰められた静かな空間になりお堂の中にいるような気持ちにもなりました。

◾️谷崎潤一郎「陰翳礼讃」
撮影前に、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を読みました。薄暗い明かりに象徴される日本の伝統美を論じている本です。
空中建築は日本建築や伽藍建築とは違うため「伝統美」とは言えませんが、薄明かりの中で浮き立つ陰は確実に作品を重厚感のある美を見せてくれました。日本人が薄明かりを好み、陰を楽しみ、生活様式の中に陰を落とし込んできたことと空中建築は通ずるところがあります。

現代の明るさは夜も眠れず常に頭も体も動かさないといけない緊張が続きます。逆に薄暗い灯というのは、その緊張をほぐし安息の時間を与えてくれていくことを先祖はすでに知っていました。だからこそ灯された薄暗い空間を好み、それに合う生活様式を続けていたことを知り私にとって合点のいく撮影になりました。

◾️空中建築の楽しみ方
新しい作品鑑賞の楽しみ方が空中建築にはあります。それは空間を変えること。各々の空間によって作品の「見え方」が変わるという新しい視座を空中建築は与えてくれました。次の新しい空間での「見え方」を楽しみたいと思います。
今回素敵な場所を貸していただき本当にありがとうございました。

記念撮影

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