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ラッコを知らない子どもたち

我が家の今後の旅行先候補として、突如「伊勢志摩」が浮上している。

関東の人には、伊勢神宮以外ではあまりなじみのない伊勢志摩だが、中部地方出身の人にとっては身近かつメジャーな観光地らしい。関東にとっての那須や箱根みたいなイメージだろうか。

なぜ伊勢志摩なのか。理由は、そこにラッコがいるからである。

「私のバカせまい史」でせいやも発表していたが、現在、日本で見られるラッコは全国に3頭しかいないらしい。そのうち2頭が、伊勢志摩の「鳥羽水族館」にいるとのこと。

私が子どもだった頃、上野にしかいないパンダは「手の届かない憧れの動物」だった。コアラも「いつか見てみたい、でもどこで見られるのかよくわからない動物」だった。その点「県内の水族館で見られる、手が届く中でも特にかわいい動物」だったのがラッコである。

当時、テレビでは県内にある水族館のCMがバンバン流れていたが、そこに映っていたのがお腹の上で貝を割るラッコの姿。レジャーの選択肢が今よりも少ない時代、「かわいい、見に行きたい!」と言えば、2年に1回ぐらいは連れて行ってもらえた。幼稚園や学校の遠足で行った記憶もある。

「バカせまい」でも言っていたが、1980年代当時ラッコ飼育の一大ブームが全国で巻き起こっていたようで、私のような思い出を持つ同世代の人間は全国各地にいるのだろう。かわいいもんね、ラッコ。最盛期には120頭あまりのラッコが全国で飼育されていたという。

そして、時が経ち親になった私は「あのかわいいラッコを、子どもにも見せてあげたい」と思うようになったのだが、それは簡単に叶うものではなくなっていた。ラッコの輸入が国際的に難しくなり、国内での繁殖もうまくいかず、飼育頭数はみるみる減少。まさかの3頭まで減ってしまったのである。

私の地元の県の水族館でも、2009年に最後の1頭が亡くなったようで、2015年には水族館自体が閉館してしまった。

2013年生まれの長女はギリ連れて行くことができたが、すでにラッコはいなかった。ラッコのいない松島水族館は、なんだか松島水族館感が薄かった。もちろん、移転先の大きくてきれいな水族館にもラッコはいない。


池袋のサンシャイン水族館は、2016年まで展示を行っていたようだ。しかし、このときは、まさかここまでラッコを見るのが困難な世の中になるなんて思ってなくてスルー。池袋という地への苦手意識を持ち、「どこか別の場所に見に行けばいいでしょ」とたかを括っていた当時の私をぶん殴りたい。

というわけで、現在、ラッコをどうしても見たければ鳥羽水族館か、福岡県の「マリンワールド海の中道」へ行くしかないのである。そして、いずれも高齢のようで、急いだほうがよさそうだ。経験したい、させたいことは、機を逸さないことが何よりも大切だとわかったわけだが…それにしても伊勢志摩は遠すぎる。

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