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テレビレビュー『ラストマンー全盲の捜査官ー』(2023)素直に助けを求め、最後は心からのお礼を

どんな難事件も解決するラストマン

FBI に所属する全盲の捜査官・
皆実広美(福山雅治)は、

どんな難事件でも最後に解決する
「ラストマン」として
活躍していました。

そんな彼が交換留学生として、
日本の警視庁にやってきます。

彼とコンビを組むのは、
護道心太朗(大泉洋)です。

護道は、悪を徹底的に憎み、
犯人を挙げるためならば、
手段を選ばない孤高の刑事でした。

そんな彼ですが、
実父は強盗放火殺人犯で、
養子として、警察一家の
護道家に引き取られた過去があります。

皆見にも全盲になった経緯があり、
その事件のせいで、
両親を亡くした過去がありました。

互いに育った環境も違えば、
捜査方針も異なる
凸凹コンビですが、

このタッグが次々と
難事件を解決していきます。

素直に助けを求め、
最後は心からのお礼を

やはり、本作は、
主人公の皆見が全盲である
設定が秀逸な作品です。

主人公は全盲でも、
現代のテクノロジーを持ってすれば、
ある程度のことは、
一人でなんでもできます。

耳にかけたアイカメラが、
人物の顔を識別し、
その人物がいる時には、
音声で教えてくれます。

捜査資料は高速再生の
音声情報として、あっという間に
読むことができるのです。

これはフィクションの作品なので、
どこまでが現実の世界でもあるのか、
わかりませんが、

現代の技術を持ってすれば、
このようなことができるのは、
わけもないことに感じられます。

しかし、そんなハイテク技術を
持ってしても、
皆実は「一人でなんでもできる」
わけではありませんし、

そのことは彼自身が
一番理解しています。

なので、彼は助けが必要な時、
気兼ねなく、
仲間たちに援助を求めます。

そして、ことあるごとに、
彼は助けてくれた人たちに
お礼を述べます。

そんな彼のことを
「人たらし」
という人たちもいますが、

揶揄する人たちも
お礼を言われて、
悪い気がするはずはないんですよね。

皆実がわかりやすい
ハンディキャップを抱えているので、
「助けが必要」なのは明白ですが、

どんな人にも
得手不得手はありますし、
一人で生きていける人は
どこにもいないでしょう。

彼から学べるのは、
そのことを素直に認め、
気兼ねすることなく協力を求め、

最後は、協力してくれたことに
誠心誠意の礼を尽くす、
という生き方です。

これは実に当たり前で、
簡単なことのように感じられますが、
実践するのが
なかなか難しいことかもしれません。

二人の過去が重なる時

本作は主人公の「全盲」
という特性を活かした
演出が光る作品でもありました。

「全盲」といっても、
視覚に何も感じない
わけではありません。

微妙な光は感じているんですね。

その辺りの表現を
本作ではサーモグラフィーのような
独特の CG で再現する場面も
ありました。

犯人を尾行するなど、
捜査が核心に迫る中で、

このような演出が入るため、
ドラマが盛り上がるのは
必然的です。

また、皆実と護道の掛け合いも、
時には笑いも交えたやり取りで、
緊張感のあるストーリーに
緩急つけてくれます。

そして、終盤で、
二人の過去が繋がっていき、
40年前の事件の真相が
明らかになる時、

このドラマの盛り上がりは
頂点に達するのです。

その辺りのストーリーの
盛り上げ方もよくできていました。


【作品情報】
2023年4月~6月放送(全10話)
脚本:黒岩勉
演出:土井裕泰
   平野俊一
   石井康晴
   伊東祥宏
出演:福山雅治
   大泉洋
   永瀬廉
放送局:TBS
配信:TVer、Paravi

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