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テレビレビュー『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』(2019)SNS利用者に告ぐ

『最高の教師』を観る前に

7月からはじまったドラマ
『最高の教師』の初回を観ました。

主人公の教師(松岡茉優)が、
高所から突き落とされるシーンから
物語がはじまるんです。

そして、この時に押した手が
生徒のものでした。

顔は映らないので、
誰かはわかりません。

しかし、その腕が
明らかに制服で、
生徒が先生を突き落としたのです。

卒業式の日のことでした。

そこでシーンが切り替わり、
物語は1年前に巻き戻ります。

始業式の日です。

なぜか、主人公の教師には、
このあとの1年の記憶が
すでにあります。

1年後に生徒が
自分を突き落とすのを
知っているのです。

そんなわけで、
主人公は誰が自分を
突き落とすのか、

犯人を見つけるべく、
新たに1年をやり直すことに
なりました。

初回から惹きこむタイプの
ドラマでしたね。

でも、私はまだ2話目以降の
放送を観ていません。

なぜならば、同じスタッフが
過去に手掛けた『3年A組』が
気になってしまったからです。

このドラマは、以前から
妻が何度も観ていました。

何度か勧められたことも
あったのですが、
私はあまり興味がなくて、
観ていなかったんですね。

なんとなく、
話が想像しやすい気がしたのです。

「どうせ、最初は先生が
 ビシビシ厳しいことを言って、
 最後は感動させるんでしょ?」

そんな印象があり、避けていました。

ところが今クールの
『最高の教師』を観て、

思っていた以上に
おもしろいドラマかもしれない
と感じました。

そこで敢えて、さかのぼり、
同じスタッフが手掛けた
『3年A組』を観たのです。

教師はなぜ、生徒を人質にしたか

サブタイトルにもあるように、
本作の主人公・柊(菅田将暉)は、
教師でありながら、

担当しているクラスの
生徒たちを人質にして、
学校に立てこもります。

最初は目的がはっきりしません。

このクラスでは、
自殺した生徒がいて、

どうやら柊は、
その真実を探っているようだ、
というのはわかります。

しかし、真の目的がわからないのです。

学校に爆弾をしかけ、
生徒たちを人質にとる
という方法は、

一人の生徒の自殺の原因を
探る方法としては、
あまりにも大き過ぎるでしょう。

さまざまな疑惑が浮上します。

そもそも、柊は、
自分の言うとおりにしないと、
生徒を殺すと言っているのです。

そして、それを躊躇なく
実行してきます。

この模様は、
SNS でも発信され、
柊はそこで募金を募っています。

その目的も判然とはしません。

なぜ、お金を集める必要があるのか、
そもそも、なぜ SNS に
自ら投稿する必要があるのでしょうか。

1話目から、このような状況が
次々と展開していき、
観る者を困惑させます。

SNS 利用者に告ぐ

最初は困惑ばかりで
はじまるドラマではありましたが、

最後までたどり着くと、
柊の目的もあきらかになり、
特に、最終回の見応えは
素晴らしいものでした。

観たことがない方のために、
ネタバレは避けたいので、
詳しくは書きませんが、

最後に柊が放つ、
SNS を通した訴えは
非常に今の時代を突いた
内容でした。

その最後の訴えは、
柊自身が画面を通して、
SNS の利用者に訴える
演出になっています。

つまり、主人公が
画面の中央に立って、
延々とテレビの前の私たちに
語りかけるのです。

この迫真の演技が
観る者の心を打つでしょう。

インターネットが普及し、
誰もが情報を発信できるようになり、
ずいぶんと世界は変わった気がします。

ネットというのは、
たしかに、たくさんの情報がありますが、
どうしても、利用者が見たい、
思い込みたい視点に偏りがちです。

その偏った情報によって、
短絡的な発信をすることによって、
傷つく人が多くいることを
このドラマでは訴えています。

ほんの軽い気持ちで書きこんだ
メッセージが当事者からすれば、
とんでもなく傷つく
内容になることもあるんですよね。

そういうことを想像できない人が多い、
今の社会を鑑みて、
このドラマは作られたのでしょう。

エンタメとして、
おもしろいだけでなく、

心に訴えるメッセージが
強く感じられるのも
本作のすごいところです。


【作品情報】
2019年放送(全10話)
脚本:武藤将吾
演出:小室直子
   鈴木勇馬
   水野格
出演:菅田将暉
   永野芽郁
   片寄涼太
放送局:日本テレビ
配信:TVer、Hulu

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