見出し画像

テレビレビュー『ザ・シンプソンズ(シーズン1)』(1989~1990)ナメたらアカン本格派の大人向けコメディー

日本でもキャラクターは有名なのに、
実際の作品を観た人は限られる?

その黄色い顔をした家族の
キャラクターたちは、
一度、見ると忘れられない
インパクトがありますよね。

日本でも、
CM に起用されたことがありますし、
(2000年代に C.C.レモンや
 ミスタードーナツとコラボ)

キャラクターを見たことはある
という方が多いのではないでしょうか。

一方で、アニメ自体は、
日本の在京のテレビ局での
地上波放送はなく、
(地方局での放送はあり)

WOWOW や FOXチャンネル
といった専門チャンネルでしか
観ることのできない
アニメだったようです。

私自身も今回、
Disney+の配信を通して
はじめて観ることができました。

日本では、その程度の知名度ですが、
本国・アメリカでは、
'89年から放送され続けている
国民的アニメで、
(アメリカでは最長のアニメ番組)

日本でいえば、
『サザエさん』
『ちびまる子ちゃん』
『クレヨンしんちゃん』
のような存在なんでしょうね。

ナメたらアカン
本格派の大人向けコメディー

しかしながら、
このアニメを『サザエさん』的な
作品と思って観ると、
ビックリしてしまうでしょう。

というのも、本作では、
こちらの国民的アニメでは
考えられないような
ストーリー展開がよくでてきます。

例えば、第1話の
「シンプソン家のクリスマス」は、

お父さんのホーマーが
ボーナスをカットされて、
クリスマスプレゼントを買えない、
という切実なエピソードです。

あくまでもコメディーなので、
そこはおもしろおかしく描くのが
前提ではあるのですが、

例えば、『サザエさん』で
「マス夫さんのボーナスが
 カットされて……」

なんていう話は聞いたことが
ないですよね。

他にも『ザ・シンプソンズ』には、

妻・マージの不倫疑惑がでてきたり、
問題児である長男・バートが
強制的にフランス留学に送られたり、
(実質的には追放!?)

日本のファミリーアニメでは、
考えられないような設定が
次から次へと出てきます。

また、明らかに子どもには
理解できないようなパロディーや
社会風刺も多く出てくるんですね。

「アメリカでは子どもの頃から
 こんなアニメを観て育つのか……」
というカルチャーショックを
受けたのですが、

調べてみて、わかったのは、
そもそも『ザ・シンプソンズ』は、
大人向けに作られた
アニメだったそうです。

絵柄がかわいいので、
子ども向けに見えますが、
実際には大人が楽しめる
アニメ作品だったんですね。

例えば、日本でも
『クレヨンしんちゃん』は
もともと青年誌で
連載されていたマンガで、

初期の頃は、あきらかに
大人にしか理解できないような
大人向けのネタも多かったんですよね。
(ママとパパの夜のプロレスごっことか)

そういう意味では、
『ザ・シンプソンズ』は、

『サザエさん』よりも
『クレヨンしんちゃん』に
近いのかもしれません。

一方で、『クレヨンしんちゃん』が
子どものしんのすけを
主人公にしているのと比べると、

『ザ・シンプソンズ』は、
子どもたちだけが主役
というわけでもなく、

どちらかといえば、
親も子どもも同等の主役
という感じがします。

こういう点では、
『サザエさん』に
近いのかもしれません。

映像も音楽もファンタスティック!

『ザ・シンプソンズ』は、
キャラクターの見た目からも
わかるように、

ビジュアル的には、
かなり簡略化された
アニメーションです。

しかし、その画の魅せ方は、
かなりおもしろいものでした。

2回目の放送から導入された
オープニングシーンを観るだけでも
その魅力がわかると思います。

平面的な画面でありながら、
時折、立体的な構図が出てきて、
画面に奥行きが感じられるんですね。

例えば、この手のもので、
印象的だったものを挙げると、

第2話の「バートは天才?」の
一幕だったと思うのですが、

バートが同級生にいじめられて、
ゴミ箱の中に入れられてしまうんです。

この時にゴミ箱の中から
バートが上を見上げる視線が
挟まれるのですが、

ゴミ箱はいじめっ子たちによって、
ゴロゴロ転がされているので、
その視点もグルグル
回るんですね。

こういう視点の切り替え方は、
日本のこの手のアニメには、
使われない手法です。

こういった視覚的なおもしろさも
くどくない程度に入っているので、
しっかり大人が楽しめる
アニメになっています。

もう一つ、特筆に値するのは、
音楽の良さですね。

正直なところ、
劇中の音楽はそれほど
印象に残っていないのですが、

特に秀逸なのは、
オープニングテーマです。

行進曲(マーチ)とも
ジャズともいえない、
なんとも形容しがたい音楽で、

バスドラムの強烈さに
インパクトがありました。

まさに、この音楽にしかない
独自の魅力に溢れた一曲ですね。

ちなみに、この音楽を手掛けたのは、
『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』
などの作曲で知られる
ダニー・エルフマンです。

ダニー・エルフマンは、
ハズレがないんです。

このクレジットを見て、
納得しました。


【作品情報】
1989年~1990年放送(全13話)
※日本での放送は’92年から
原案:マット・グレイニング
脚本:クリス・カーターほか
監督:サム・サイモン
声の出演:大平透
     一城みゆ希
     堀絢子
放送局:FOX(日本ではWOWOW)
配信:Disney+

【マット・グレイニングの作品】

※画像は Disney+ よりお借りしました。

この記事が参加している募集

アニメ感想文

サポートしていただけるなら、いただいた資金は記事を書くために使わせていただきます。