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スティーヴィー・ワンダー 名曲ベスト10(私選)

スティーヴィー・ワンダーは、私が子どもの頃に父親がレコードを聴いていて、子どもながらに「かっこいい音楽だなぁ」と思いました。

『迷信(Supersitition)』のシングルだったと思われます。

『迷信』は、ベースやホーンセクションの音が特にかっこよかったですね。あと、スティーヴィーが演奏しているクラヴィネット(ギターのような音色のキーボード)も最高にかっこいいです。

しかし、だからといって、子ども時代の私の興味が、すぐにスティーヴィーの音楽に向かったわけではありません。

私がスティーヴィーにハマったのは、20代の中盤のことでした。

10代の終わりに、テクノと出会い、ダンスミュージックの魅力を知った私は、さらに音楽の深い世界にのめり込んでいきました。

そんな時代にテクノやハウスのルーツとして、浮かび上がってきたのが、アメリカの黒人音楽、とりわけ、ソウルミュージック、ファンクとの出会いは衝撃的でした。

その分野で異彩を放っていたのが、スティーヴィーだったのです。私は、子ども時代以来、実に、10年振りくらいにスティーヴィーの音楽と再会しました。

子どもの頃に聴いた時とは違って、私はスティーヴィーの作る楽曲のサウンドもさることながら、その歌声に惚れ込みました。

私は「歌」にあまり執着がなく、今でもどちらかといえば、インストの音楽の方が聴きやすい体質です。そんな私がスティーヴィーの歌声に感動し、涙を流してしまったのです。

スティーヴィーの歌は、歌詞の意味がわからなくても、感動してしまいます。「こんなに素晴らしい歌声があるのか!」そう思うだけで、感動してしまうのです。彼の歌声には歌詞以上に、感情を伝える力があるんです。

スティーヴィーがいなかったら、私が「歌」のおもしろさに開眼することはなかったと言っても過言ではありません。

10. As It You Read My Mind('80)

収録アルバム:『Hotter Than July』
『Hotter Than July』といえば、レゲエを取り入れた『Master Blaster』、バラード『Lately』、バースデーソング『Happy Birthday』あたりが有名で人気が高い。
しかし、このアルバムの大きな魅力は、全体に漂う、せつなさであり、それを甘く表現したのがこの楽曲でもある。歌声やメロディーラインは、せつないが、力強いリズムで、それを吹き飛ばすような快活さがある。

9. You Are The Sunshine of My Life('72)

収録アルバム:『Talking Book』
シングルカットされ、全米1位にも輝いた名曲。ボサノヴァなど、ブラジル的なリズムをスティーヴィー独自の表現力でアレンジした楽曲で、歌もさることながら、リズムパートが聴きどころ。類まれな構成力で、ブラジルサウンドとソウルフルなコーラスも違和感なくマッチしている。

8. Another Star(’76)

収録アルバム:『Songs in the Key of Life』
ブラジルのサンバのリズムを取り入れた楽曲。いつにもまして情熱的なスティーヴィーの歌声が響き、それを下支えする魅力的なコーラスも素晴らしい。
こんなに情熱的な曲に「別の星」というタイトルをつけるところが、また、にくいところ。8分にもおよぶ長尺の曲だが、最後まで飽きることなく楽しませてくれる。

7. Part-time Lover(’85)

収録アルバム:『In Square Circle』
シングルカットされ、ビルボートの各部門で1位を獲得。全面的に電子楽器を使用しているものの、根底には伝統的なソウルミュージックの要素が感じられる。一聴すると、’80年代エレクトロの印象だが、曲の構成、メロディーライン、リズム、ベースライン、そのすべてが古き良き R&B の佇まいそのもの。

6. I Love You Too Much(’85)

収録アルバム:『In Square Circle』
アルバムでは『Part-time Lover』の次に収録されている。
『Part-time Lover』よりも、さらに電子音が濃い曲で、1曲目から2曲目に続く、この流れが抜群にいい。リズムは緩めだが、リズムトラックの音がソリッドで、もっさりとした印象は皆無。引き締まった聴きごたえ。

5. Ordinary Pain(’76)

収録アルバム:『Songs in the Key of Life』
前半はミドルテンポの R&B、後半はルーズなビートのファンクという構成になっている。曲調の異なる前半と後半が違和感なく繋がっているのが、クラブの DJ のようでかっこいい。
本アルバムは、レコードでは2枚組+シングル1枚という形で構成されており、本楽曲は、1枚目・B 面ラストに収録されている。後半の煽るような曲調(約6分のうち、後半の約3分はメインボーカルなし、コーラス、シンセ、リズムパートのみ)は、2枚目への導入として、これ以上ないほど完璧な作り。

4. Summer Soft(’76)

収録アルバム:『Songs in the Key of Life』
優しいピアノの音色と鈴虫の鳴き声からはじまるソフトなバラード。バラードと言っても、途中からドラムやパーカッションの音も加わり、かなりにぎやかなサウンドになる。
スティーヴィーの歌声も曲の展開によって、力強くなったり、優しくなったり、メリハリが強く感じられるのが魅力的。なぜ、こんなに健やかなメロディーが、せつなく感じるのだろう。彼の歌声には不思議な魅力がある。

3. Too High(’73)

収録アルバム:『Innervisions』
本楽曲が収録された『Innervisions』は、グラミー賞も獲得した名盤で、’70年代のスティーヴィー・ワンダーのみならず、時代を象徴するアルバムでもある。
アルバムの1曲目に収録された本楽曲は、それまでのスティーヴィーのイメージとも異なり、不穏で怪しげな魅力がたっぷり。イントロは、女性のスキャットではじまり、ジャズで使われるテンションコードを使った音色が、聴く者の心をを鷲掴みにする。
本楽曲に見られるような、激しくとも、決して熱くない、極めてクールなテンションが黒人音楽ならではの伝統と言えるかもしれない。

2. Golden Lady(’73)

収録アルバム:『Innervisions』
アルバム『Innervisions』は、不朽の名盤ではあるものの、王道の R&B とは違う個性的なアルバムでもある。そんな中で本楽曲は、唯一と言ってもいいほど、それまでの R&B の流れを汲んだ王道の曲という感じがする。
本楽曲を聴くたびに、温かい歌声に全身が包まれるような感覚を覚える。スティーヴィーの美しい歌声に、身を委ねたくなる包容力が感じられるのだ。電子音も目立つが、ベースやドラムの演奏も素晴らしい。

1. Tuesday Heartbreak(’72)

収録アルバム:『Talking Book』
まず、イントロのふわふわした電子音に釘付けに、そこにサックスが加わり、タイトなドラムが鳴り、のびやかなコーラスが響けば、これはもう完全なるスティーヴィー独自の音の世界である。
タイトルや歌詞の端々から、失恋ソングと推察できるのだが、こんなに晴れやかな気分になれる失恋なら、悪い気はしない。実らぬ恋もまた一興なのである。

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