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坂本龍一が「売れるポップス」に苦悩した時代(4)売れればなんでもポップス

’99年に大ヒットした坂本龍一の
シングル『ウラBTTB』は
ピアノの曲が収録されています。

なんと言っても、
シングル発売のきっかけになった

『energy flow』の知名度は別格で、
今でも坂本龍一の代表曲の一つとして、
多くの人に認知されています。

もともと『energy flow』は
栄養ドリンク「リゲイン」の CM 曲で、

作られた段階では
CD 化の予定はありませんでした。

しかし、CM で楽曲が人気となり、
急遽 CD 化することになったのです。

時代の変化もあったのでしょう。

『残業学』という本でも
例として紹介されていたのが
印象に残っているのですが、

日本の景気が良かった’90年頃、
リゲインの CM に使われていた楽曲は、
時任三郎扮する牛若丸三郎太が歌う
『勇気のしるし』でした。

▲’89年発表。オリコン最高2位。
 これもヒット曲だった

元気なマーチ風の伴奏とともに
「24時間戦えますか」と歌われた
このキャッチフレーズは

バブル時代の象徴のようです。

バリバリ働き、
稼ぎまくる時代だったのです。

一方、’99年にヒットした
坂本龍一の『energy flow』は、
静かなピアノの楽曲で、

当時、流行った「癒し系」音楽の
火付け役とも言われます。

▲直接的な繋がりはないが、
 その後に続いた「癒し系」のヒット曲

バブルが崩壊し、疲れ果てた日本人は、
働くことに疲れ果て、
「癒し」を求めていたのかもしれません。

余談ですが、
この頃、バラエティー番組
『めちゃイケ』でガサ入れされた

エガちゃん(江頭2:50)の自宅にも
『ウラBTTB』があったのが、
凄く印象に残っています(^^;

こういった時代の変化を見るにつけ、
この空前のヒットは、
まったくもって予測不能なものだった
と言えます。

なんせ、作曲者である坂本龍一にでさえ、
「この曲があんなにヒットした
 理由がわからない」
と言うのですから。

「売れるポップス」を目指して、
音楽の天才があんなにも一生懸命、
考えに考え抜いて作ったはずの
作品がヒットせず、

サラサラッと何の気なしに書いた楽曲が
大ヒットしたのです。

この事態に、
当事者である坂本も困惑気味に
「売れればなんでもポップス」
という諦念に近い名言を残しています。

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