勉強初心者に本居宣長が教えたこと6
以下の文章は『勉強初心者に本居宣長が教えたこと5』の続きです。
最初から読む場合はこちらから『勉強初心者に宣長先生が教えたこと。』
登場人物
先生:本居宣長(もとおり のりなが)〈享年71歳〉
生徒:春ひみの(はる ひみの)〈高1〉
原文を参照できるよう、本文内に「岩波文庫『うい山ふみ 鈴屋答問録』本居宣長著 2007年4月13日第39刷」のページ番号を記載しています。
※本作に登場する宣長先生は、あくまで実際の本居宣長をイメージしたキャラクターとお考え下さい。
日本の道とはなにか
岩波文庫『うい山ふみ 鈴屋答問録』25~30ページを参照
宣長
「さて、今日も国学の基本について話を進めていきます。頑張って日本のことをより深く理解していきましょう」
ひみの
「あ、先生の話は難しいので触りだけ、ほどほどで結構です」
宣長
「むぅ。いきなり消極的だね。学問は志を高く大きく立てて臨むことが大切だよ」
ひみの
「は~~い」
宣長
「ずいぶんやる気が無いね。なにかあった?」
ひみの
「なんかテレビとか見てたら悪い人ばっかりだし、人によって言うことが違うから、なんだか嫌になっちゃって。正しいことってどうやって知ればいいんですかね」
宣長
「君が知りたいことを一言で言うと『道』という。人はどういう風に生きるのが良いのかを考えることだね。
日本における『道』は神道といって、『古事記』や『日本書紀』といった古典から学ぶことができ、特に前半の神々の事績を重視します」
ひみの
「神道って神社を中心にした宗教ですよね。仏教とかは日本の道とは違うんですか?」
宣長
「神道の古典は道の内容について具体的にはあまり書かれていないんだ。そのため、昔の神道学者は仏教や儒教の思想を使って神道を説明していた。でも、儒教も仏教も大陸から入ってきた外国の思想なので、日本の道とは言えないものです」
ひみの
「神道が外国の思想の影響を受けることになったんですね。それなら、先生が仏教や儒教の考えを辞めさせて、神道の考え方で直接世の中を変えていったら良いんじゃないですか?」
宣長
「いや、それは良くない。道というのは政治を行う人が国民に向かって行うものなので、一般の人々が勝手に決めつけたり、変えようとしてはいけない。だから現在の世間で行われていることと違うことをするのは自分勝手なふるまいになってしまう」
ひみの
「じゃあ、私たちが道を学んでも意味無いんじゃないですか?」
宣長
「いや、そんなことはないよ。道を学び、それを人に教えたり、本に残したりすることで、いつか政治に関わる人々の目に留まるかも知れない。その機会が来るまで、日本の道を明らかにしていくことが学者と道との関わり方なんだよ」
ひみの
「気の長い話ですね」
あとがき
ひみの
「結局、道は一言で言うとなんなんですか?」
宣長
「詰まるところ日本の道とは、その時代時代の政治の場にいる人達に従って生きていくことになります」
ひみの
「随分、消極的な考え方ですね。直接政治を変えていこうとは思わないんですか?」
宣長
「一応『玉くしげ』という意見書を出したことはあるんだけどね。まあ、先生江戸時代の人だから」
ひみの
「あー。でも今の時代なら政治に参加することも出来ますよね。民主主義も偉い人達が良いと思って始めたんですから」
宣長
「そうだね。現代は江戸時代とかなり違うので、その時代に合った行動をするべきでしょう」
ひみの
「よし!私がいつか政治の場に立って先生の道を実践します!」
宣長
「それこそ、志を高く大きく立ててだね」
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