見出し画像

自然写真家という名で不自然写真を撮りまくる

真の自然だけでは、作品にならない現実がある

卵を抱いたメダカの♀
脱皮中のアカハライモリ

上の2点は、水槽で飼育しながら撮影した写真で、言うならば自然の写真ではありません。こんなシーンを、野外の小川や池で撮ることは、まず不可能でしょう。
ただ、僕としては、なるべく自然の環境に近い環境で撮影したいので、まず水槽内に自然環境を作ります。メダカの写真の水底の緑色の植物は、農薬の少ない水田などに発生するキカシグサという水生植物です。
水田の泥を、もらってきて水槽に入れ、育てました。
下のイモリも同じです。水田の泥を水槽に入れ、まず水田の水中を水槽内に作り上げ、そこに生き物を入れて撮影しています。
いずれにしても、「不自然写真」ですが、もし、水槽の底が玉石だったり、里山にないような水草が植えられていたら、それこそ、「不自然極まりない写真」になってしまうので、それだけは避けたいと小細工をしています。

アキアカネの羽化

上のアキアカネ羽化は、バケツでイネを育てながら、その中で飼育していたヤゴが羽化するようすを撮影したものです。野外での自然撮影も可能ですが、バケツを室内に持ち込めば、風の影響も受けませんし、ストロボなどのセッティングも楽にできるわけです。
こうして、自然写真家と名乗りながら、不自然写真を撮りまくっているわけです。

自分なりの線引き

昆虫や、両生類、爬虫類など飼育できるようなものの生態撮影は、写真に限らずテレビ番組でも、多くが仕掛けを使ってのセット撮影です。これは、それを「見せる」という点において、避けては通れないことと考えています。

イネの葉の上に置いて撮ったアマガエル
白いボードに乗せて撮ったオオカマキリ

僕の場合、上のアマガエルのように、可愛く見せたいとか、背景をスッキリさせたい場合、生き物を、倒木や、石、葉の上に置いて撮ることに、さほど抵抗はありませんが、下の写真のような「白バック」写真を撮ることには、少々抵抗があります。
木の実や、木の葉などの白バックは、気になりませんが、生き物の白バックを並べた作品は、生き物をフィギュア化している感じがして、ジュエリーなどの商品カタログのようで、好きにはなれません。
頼まれれば、撮らないことはありませんが、自分から進んで撮ることはありません。

殺して撮ることは絶対にしない

例えば、昆虫研究者などは、その体を調べる場合や、標本を作製する場合、酢酸エチルなどを使い、生体が傷まないよう殺します。
図鑑に掲載されている白バックの写真は、この標本をお借りして、標本撮影を得意とする写真家が撮影していることが、ほとんどです。
僕は、そういった撮影には全く興味がないので、進んで撮ることはありませんが、セミのオスとメスの腹部の違いを見せるには、殺して撮影する必要が出てきます。
そんな場合、セミの多い公園を歩き回り、死にたてホヤホヤのセミを探します。アリより先に見つけないと、すぐアリに食べられてしまいます。
生き物たちに食べさせてもらっているのですから、殺して撮ることは、絶対しないと決めています。

自然写真家と名乗りながら不自然写真を撮りまくっているので、職業は?と聞かれたときには「写真家」と答えることにしています♪

この記事が参加している募集

仕事のコツ

with 日本経済新聞

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?