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(26)営業企画機能を確立し、生産性向上を加速させる(レーター期)

スタートアップ「レーター期」の7番目の記事です。
※レーター期:一般的には「事業が安定し継続成長が実現しIPOが視野に入る段階」を意味します。

今回の記事は、課題(26)「営業企画機能を確立し、生産性向上を加速させる」です。これでレーター期の記事は最後になります。

課題26営業企画機能を確立する


①営業企画機能の「組織化」の必要性

レーター期を通じて営業組織開発のテーマとして取り組んできたことは、
●スーパー営業個人に依存した属人的な業績作りから、組織的な業績作り
●営業組織全体の生産性向上
●経営陣が重要経営テーマに集中するための、「営業部長と仕組みによる間接マネジメント」体制の構築
の3点です。

この推進において組織規模が一定を超えた段階で「営業企画機能の組織化」に取り組むと、全体の効率・生産性が高まります。

業績に直接寄与する「ライン組織」が営業部門の主役であることは変わりません。そのライン組織を支援し、ライン組織がより活躍しやすくするための「スタッフ機能」を組成する打ち手となります。


アルー株式会社において、営業企画機能の組織化について取り組んだのは、実際には2016年~2017年頃でした。本noteの括りでは「プレIPO期」に区分される時期ですが、「レーター期」の主要トピックのため、こちらに分類して事例として紹介しております。

当社では、これまでも営業部長というライン責任者に、営業企画機能を担っていただきました。組織規模が小さいうちは、ライン責任者が企画を担うということでよいのですが、一定の組織規模が大きくなると、業績目標達成やヒューマンマネジメント業務にも責任を持つ営業部長が兼務する形よりも、専任で企画スタッフを置く方が効率的になります。


企画スタッフは原則、営業プレーヤーとしての業績目標や、ヒューマンマネジメント責任を持たず、営業部全体の生産性向上に集中していただくとよいと考えています。

また営業企画スタッフ組織は、短期だけでなく中長期の生産性向上についても視野を持って企画業務を推進する必要があります。

●短期打ち手(例):
・提案サポート業務
・営業活動上の問題解決(例:引継ぎロスによる失注問題の解決等)
・各期の目標設定支援
・顧客リスト整備・管理・ルール整備
・マーケティング/セールスプロモーション活動
(※営業企画機能とセットにするかは論点。別組織運用もあり得る)

●中長期打ち手(例):
・情報システム整備
・目標評価システム(仕組・ルール)の整備
・営業期間振り返りと打ち手の立案
・ナレッジマネジメント

この中長期打ち手を粘り強く取り組んでいただくためにも、目の前の業績に引きずられないように「ラインから切り離し、営業個人目標を持たない」スタッフ組織作りが必要となります。

また営業企画スタッフ組織には、営業の能力・経験に加え、企画能力の高い人材のアサインを行うことが大切です。必要に応じて外部コンサル、システムベンダー等、外部スペシャリストの力を活かしつつ、スピーディーに企画を推進することが求められます。


②「育成の成果にこだわる」コンセプトを実現する営業企画部設立

アルーは2015年後半頃より、サービスコンセプトの大方針として
育成の成果にこだわる」という考え方を打ち出していきました。

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企業研修サービスは、成果が定量的に見えづらい特性があります。
テーマによっては効果測定を行い易いものもありますが(例:英語力など)
多くのものは、短期的には定量的な効果の可視化が難しいという伝統的な課題がありました。
この育成施策の成果を可視化し高めていくことは、当業界の発展とその中でのアルーがよりお客様に選ばれていくために必須のものと考えています。


この「育成の成果にこだわる」というサービスコンセプトは、経営陣が掲げただけでは意味がありません。アルー全社でその実現に向けていくことが当社の競争優位性を築くことにつながります。特に、お客様と第一に接する営業部門が「育成の成果にこだわる」というコンセプトを実践することが大切でした。


このコンセプト浸透を大きな目的として、そして営業生産性向上に向けた各種施策を加速させるために、当社が組織体として正式な「営業企画部」を立ち上げたのは2016年後半~2017年初でした。

メンバーは2名。
●高木さん:大手教育サービス会社から2014年後半にアルー転職。営業部でのご活躍を経て営業企画部のマネジャーに。2020年より執行役員として営業部門とEtudes事業を管掌。
●宿院さん:2011年新卒でアルーに入社。名古屋支社の立ち上げを経て営業企画部に。その後ソリューション部門マネジャー、営業部門マネジャー等オールラウンドにご活躍。

お二人には、営業生産性の向上のために、営業企画・マーケティング・営業事務機能を一括して担当していただきました。

営業企画業務として具体的に取り組んだことは以下のようなものでした。
●目標:成果にこだわる営業組織の実現と、結果としての生産性向上

(1)成果にこだわる営業組織のための組織学習(価値を生み出す)
「成果にこだわる」営業組織としての組織学習ループをまわす
・育成成果にこだわり、受注を継続的に拡大する組織文化・ルーティン醸成
  例)育成成果にこだわるアカウントプランの開発と浸透
  例)新規新規訪問についての訪問メモフォーマットの徹底と情報共有等

・配属時育成、継続的な熟達をするための育成環境整備ならびに育成
  例)中途入社時育成のブラッシュアップと継続実施・・・等

(2)営業戦略・戦術の実行支援(PDCA)
・新人領域圧倒的NO.1に向けての戦略策定支援ならびに実行支援
・グローバル領域圧倒的No.1に向けての戦略策定支援ならびに実行支援

(3)営業戦略・戦術の実行支援(PDCA)
・目標管理、リスト管理、評価支援、インセンティブ管理
・商戦ごとの戦術立案支援

(4)大企業新規新規開拓支援
・大企業新規新規商談数ならびにコンタクトの質の向上
・マーケティングとの連動、新規マーケティングチャネルの開発・・・等

(5)ナレッジマネジメント
・付加価値業務に専念するための情報管理、ナレッジマネジメント
・参考となる事例や提案書がすぐに取り出せるナレッジマネジメント

上記が5点の営業企画業務について取り組んでいただきました。

③営業事務機能の組織化

営業部の活動において価値が高い「顧客接点業務(商談・提案・受注活動)」に集中していただくために、事務業務を効率化することは有効な打ち手です。

多くの企業においては、直接営業人員をサポートする、営業事務職・営業事務部門があるかと思います。定型業務については集約をすることで、全体としての効率性を高めていくことが可能となります。


当社においても、高木さん・宿院さんの営業企画部を設立したタイミングで、営業事務チームの組織化・仕組化に大きく取り組みました。

●営業事務・アテンド事務・納品事務の効率化・安定化
目的:営業メンバーの時間を生み出す

(1)進行業務のカバー範囲拡大
営業メンバーの受注後の情報管理と取りまとめについて、営業事務チームのカバレッジを高める

(2)受注請求事務
・営業日報をデイリー化し、全社の受注状況を全員が把握できるようにする
・受注の要件を満たすところまで情報を集約する
・請求情報の洗い出しと請求書作成。経理への売上報告

(3)受注前業務(見積もり作成など)
・見積もり・受注・請求は統一のフォーマットを作り、営業事務チームにて担当領域を拡大していく
・アンケート振り返り資料作成

・・・等、それまでも行っていた営業事務業務について、業務内容の定型化・効率化の推進と、カバー範囲拡大に取り組んでいただきました。


同時に情報システム化の推進により事務業務全体の効率化に継続的に取り組んでいきました(これは現在でも継続的に取り組みを続けています)。


④レーター期の終わりに

本記事で紹介をした「営業企画部門の設立により戦略の浸透と生産性向上の企画に注力する」に代表されるように、レーター期では組織全体で業績を上げられるか、その効率を高められるかということに注力をしてきました。

●営業メンバーは、顧客を向いた仕事に集中し、高いサービス価値を提供できるように、
●営業ラインマネジャーは、メンバーの能力開発と働きがいを高めることに注力し、
●営業企画組織は、営業ライン組織がより成果を上げやすくするために、
そして
●経営陣は、重要な全社経営イシューや新規事業開発への取組をすることができるようになってきました。

これらは全て、事業活動の試行錯誤の中で、よりお客様・現場に近いところで業務に邁進されてきた全ての当社社員の努力の成果だと認識しています。


本記事でレーター期の具体課題は最後になります。
最後に2点、レーター期での出来事についてご紹介をさせていただきます。


(1)新規事業企画部の取組みについて
以前の記事でも紹介をしましたが、私は2013年頃までの多数の部署のマネジメント兼任による疲弊と、創業に参画をして10年が経ち閉塞感を感じていました。そこで2014年より、ゼロベースの新規事業開発に取組みました。

いざ新規事業を作るとなった時に、私に「やりたいこと」や「解決したい顧客課題・社会課題」が無く、その探索に試行錯誤を続けました。

途中、私一人では事業が前に進まず、仲間を募りました。
私の新規事業パートナーYさん(その後経営企画メンバーとしてIPO実務を担当。現在は大手コンサル会社でご活躍)
素晴らしい学習力でご活躍されたエンジニアのFくん(現在スタートアップ企業エンジニアとしてご活躍)
鶴谷さん(アルー2015年新卒。当社情報システムグループにてご活躍)

インターン生としてご協力をいただいた
Tさん(現在は人材系上場企業でマネジャーをされています)
Tくん(大手インターネット企業でご活躍)
Sくん(上場スタートアップでエンジニアとしてご活躍)
Sさん(現在は外資系大手コンサルでご活躍)・・・等、
他にも多くのインターン生の方にいらしていただきました。

1年半ほどの時間をかけ、試行錯誤・模索をした結果、WEBメディアの事業に着手し、そして早々に撤退をするという結果となりました。

多くの方に関わっていただき、時間を資金を費やしながら、私の力不足により結果を出すことができませんでした。アルー本業のメンバーの皆様にも多くのご迷惑をおかけしたことは今でも申し訳なく思っています。


(2)IPOを目指す意思決定
前提として、IPO(新規上場)はゴールではなく、会社にとっての通過点でしかないと認識しています。

アルーは創業時(エデュ・ファクトリー)の頃から、より社会に大きな価値を提供するための手段として上場ということを志向していました。
創業時は2010年までには上場、というマイルストーン(中間地点)を置いていました。

しかし、2008年秋のリーマンショックにより、上場マーケットの混乱そして、その時点では当社の体制・業績が全く未熟であったため、予定を先送りしてきました。いつしか上場というマイルストーン自体があまり語られなくなっていました。

2015年末、改めて当社の将来の方向性を考える中で、上場について真剣に議論をする場を持つようになりました。

様々な議論がありましたが
(1)より成長に向けた投資を行うために上場という資金調達手段を活用していきたいということ
(2)上場企業になるということは社会の公器となることであり、それに耐えうる内部統制・組織マネジメントシステムを実現することで、健全かつ継続的な企業となること
を目指して、上場を目指す意思決定を行いました。


事業を通じてお客様・社会に貢献し、その対価をいただき事業を大きく成長させ、多くの投資家・ステークホルダーの方にもリターンをご提供していくことは、創業から会社を作ってきたプロセス以上に困難が多いことです。

現在も試行錯誤が続きますが、粘りづよく上記を実現できるように取り組んで参りたいと考えております。


本記事のまとめ

◆組織規模が一定を超えた段階で「営業企画機能」の組織化に取り組むと、全体の効率・生産性が高まる
◆営業企画スタッフ組織は、短期だけでなく中長期の生産性向上についても視野を持って企画業務を推進する必要
◆中長期打ち手を粘り強く取り組んでいただくためにも、目の前の業績に引きずられないように「ラインから切り離し、営業個人目標を持たない」スタッフ組織作りが必要
◆営業企画スタッフ組織には営業の能力・経験に加え、企画能力の高い人材のアサインする


次回の記事は・・・・

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本記事を含む「レーター期」の全体像を解説した記事はこちらになります。
レーター期のスタート時点・主たる活動・到達地点について解説しています。よろしければぜひご覧ください。

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