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(29)キャリアパスを複線化し、多様な人材が活躍する場を作る(プレIPO期)

スタートアップ「プレIPO期」の3番目の記事です。
※プレIPO期:一般的には「レーター期」の後期に含まれます。私は本ステージを「IPO後の成長に向けて攻めと守りの投資を加速する段階」を定義しています。

今回の記事は、課題(29)「キャリアパスを複線化し、多様な人材が活躍する場を作る」です。

①上司(マネジャー)は部下(プレイヤー)より「偉い方がよいのか?」

ある大企業の部長さんとお話をしていた際のことです。
その部長さんは部下の課長さん、メンバーの方々に対して「強めの指示命令」の口調をされていました。
課長さん、メンバーの方も、部長さんを畏れ敬う態度をされていらっしゃいました。こうした上司部下の関係性は、一般的なものかと認識しています。

一般的には、部下より上司の方が「偉い」でしょうし、課長より部長の方が「偉く」、部長より社長の方が「偉い」でしょう。
また上記の企業においては、そうした文化が企業運営において効果的な意味が存在しているのかと考えます。

しかし、当社アルー株式会社のような、まだまだ小規模なスタートアップベンチャーの会社で、かつ個々人のクリエイティビティが事業の価値に大きな影響を与える組織では、役職とその人の偉さを融合させない方が望ましいと考えています。


企業は創業者・創業メンバーがいて、事業が成功することで人数が増え、組織化が進んでいきます。人が増えれば、役割分担が進み、部署という形で組織内の小組織が作られていきます。部署ができれば、部署のミッションや目的に対して責任をもって運営をする「マネジャー」が必要になってきます。

事業が成長し続けると組織は大きくなり、部署は増え、それに伴いマネジャーの必要ポストが増えていきます。


一方で現実においては、事業は上手く行くときもあれば、厳しい状況に直面することもあります。ある時は右肩上がりでも、様々な要因により伸び悩んだり、業績が悪化することもあるでしょう。
そうすると、その業績の状況に伴い、組織の拡大スピードが鈍化したり、組織を縮小せざる得ない時すらもありえます。当然、マネジャーのポストも増えない、または減少するということがあります。


十分にマネジャーポストが存在し、更に成長を続けてポストが増え続けるのであれば、冒頭の「上司=マネジャー」は「部下=プレイヤー・メンバー」よりも偉い、という文化はあってもいいのではないかと考えます。


しかし、成長が鈍化したり縮小する可能性がある場合には、ポストは増えません。その時にマネジャーがプレイヤーよりも偉いという文化は、組織のモチベーションを大きく削ぐ可能性があると考えています。

マネジャーがプレイヤーよりも偉いのであれば、皆基本的にはマネジャーを目指すでしょう。しかし、マネジャーポストが増えない場合は、その組織においてマネジャーになることは難しい状況です。

上が詰まっている」という表現があります。この表現はマネジャーポストが「偉い」組織において、その偉いマネジャーになれるチャンスが少ないということでしょう。

またマネジャーが「偉い」組織では、既存のマネジャーの方がそのポジションを外れることを嫌がるでしょう。マネジャーから外れることは偉くなくなることであり、権限や評価が下がることとイコールになってしまいます。

こうして後から入社をした能力のある方が、組織内で「偉い」マネジャーになる希望を持てずに組織を見限る可能性があるということが起こり得ます。


私は、多様な個性を持ち当社アルー株式会社に御入社をされた方々に、様々なキャリアにチャレンジしながら、個性を最大限発揮してご活躍をいただきたいと考えています。
そのためには、「上司(マネジャー)は部下(プレイヤー)より偉い」という世界観を壊すことが大切であると考えています。

マネジャーとプレイヤーは役割の違いであり、求められるスキル・能力も異なると考えています。役割が違うだけで「偉さ」という評価とは切り離すべきであると考えています。


②等級と役割

当社の人事制度では「等級」と「役割」という概念を切り分けています。

等級とは、職能的にその社員の能力グレードを表し、給与レンジと結びつくものです。
大卒新入社員は入社後「1等級」からスタートし、経験を積み能力成長をして昇格をしていき上位等級になっていきます。

役割とは、GM(グループマネジャー:課長)、部長、執行役員、そして(明示的ではありませんが)プレイヤー。

当社では、等級を主軸にしており、一定の等級以上で役割がアサインされる場合がある、という形にしています。

例えば、ある等級以上では、GMの役割がアサインされることがあります。
GMはラインマネジメントを担当しますので、グループ(部署)とプレイヤーメンバーがチームに配属されます。GMはプレイヤーメンバーの成果を短期・中長期で最大化することがミッションとなります。

GMだった方が、ある時プレイヤーの役割に変更されることもあります。
一般的にはGM(課長)がプレイヤーになるため「降格」という意味合いがあるかもしれませんが、当社においては「降格」は、等級が下がることであり、同一等級内で役割が変わることは降格ではありません。
あくまで役割の変更に過ぎません。

等級は縦(昇格・降格)、役割は横(任命・役割変更)の関係です。

人によっては、GMを経験しラインマネジメントの仕事を学び、その後、プレイヤーとして高い成果を出すというキャリアを歩むこともあります。またプレイヤーの仕事が好きで長くやっていたが、熟達をしたのでラインマネジメントに挑戦してみる、というキャリアパスも存在します。
両方をやってみて、より自分に向いている役割を選択していくことが望ましいと考えています。


部長の役割をアサインされる等級もあります。その等級においては、部長、GM、プレイヤーの3役割があり、組織要請や個人の意思によりアサインメントを柔軟に運用しています。

例えば、当社においては、営業部門やソリューション部門は、組織人数が多いため「部」が存在しますが、スタッフ系の部署は少人数組織のため部ではなくグループとしています。同じ部長相当等級でも、営業部長の方もいれば、スタッフ部門GMの方、エキスパートプレイヤーの方もいます。

ポイントとなるのは、一度どちらかを自分の意志で選択しても、別の役割を再選択できることです。


このように等級と役割を切り分けることは、会社にも個人にも大きくメリットあると考えます。

・部署編成の柔軟度が担保される。部署を減らす必要がある際に、部長・GMを減らしやすい
・マネジメント、プレイヤーなど多様なキャリアを選び、経験を積む機会を作りやすい
・個々人が最終的に指向性のある仕事を選択することができ、ハイパフォーマンスにつなげやすい


一方で「偉さ」という言葉を使うと誤解がありますが、「尊敬に値する」という意味では、等級がその役割を担っていると考えています。

等級は、当社において能力成長の積み重ねの結果が評価され、上位等級に昇格する仕組みです。上位等級であれば、高い業務能力、専門性、問題解決能力を持っていると考えます。
そうした意味で「尊敬に値する」と考えております。


③目指す姿:組織のVISION

会社組織における実際の役割分担はこれまで述べた通りです。
更にアルーメンバーの一人一人が人材育成の仕事に熟達をし、マネジメントやプレイヤーなど様々な役割・業務内容を経験しながら、顧客価値と事業業績の最大化に取り組む組織であることを目指しています。

2015年頃より、当社はその実現に向けて「組織のVISION」の重要なポイントとして以下の4項目を言語化し、取組を継続しています。

(1)個々人の仕事の熟達
お客様に対する成果にコミットするためには、圧倒的№1を目指して常にサービスのレベルを向上し続ける必要があります。
メンバー一人ひとりが自己研鑽に励み「熟達」をすることを大切にしています。そして熟達したメンバーが集まった組織としての知見を蓄積・共有できる仕組み・風土作りに取り組むことを重視しています。

(2)長く働ける環境づくり
人材育成の仕事に熟達するには一定以上の時間が掛かります。
そのためには会社として「長く働ける環境づくり」が必要であり、個人として中長期的な視点で当社における自らのキャリアを描くことが大切です。
個々の多様性と思い描くキャリア(ライフイベントも含む)を会社として尊重することを大前提としています。その上で、個々人が熟達と専門分野の方向性を中長期で描き取り組んでいくチームでありたいと考えています。

(3)組織ぐるみで育てる文化づくり
社内の人材育成は、お客様への価値提供ならびに競争力向上の最大の鍵です。アルーに入社をしたメンバー全員の成長(熟達や人間的成長)を、所属部署のみならず、全社全員が積極的にかかわり合って支援していく文化を目指しています。

(4)チームとして継続的に価値発揮する文化づくり・仕組みづくり(チームアルーを体現する組織)
組織としてお客様に対して、最高の価値の継続的な提供を目指しています。
そのためにアルーメンバー個々人が多様な意見を出し、お互いに尊重すると共に「正反合の精神」で議論をし、結果としてチームアルーとしてお客様への価値創造を行っていく雰囲気・文化を作っていくことを目指しています。


以上、当社が更なる成長を目指し、一人一人が働きやすいさと働きがいをもって仕事に向かい合える会社を目指して取り組んでいることをご紹介させていただきました。
現状、不十分な点も多くありますが、当社のようなメンバー一人一人のクリエイティビティの発揮が顧客価値に直結する人材育成サービス企業では、よい組織を作ることが極めて重要であると考えております。


本記事のまとめ

◆個々人のクリエイティビティが事業の価値に大きな影響を与える組織では、役職とその人の偉さを融合させない方が望ましい
◆成長が鈍化したり縮小する可能性がある場合にはマネジャーポストは増えない。その時にマネジャーがプレイヤーよりも偉い、という文化は、組織のモチベーションを大きく削ぐ可能性がある
◆マネジャーとプレイヤーは、役割の違いであり、求められるスキル・能力も異なる。役割が違うだけで「偉さ」という評価とは切り離すべき
◆等級と役割を切り分けることは、会社にとっても個人にとっても大きくメリットある
・部署編成の柔軟度が担保される。部署を減らす必要がある際に部長・GMを減らしやすい
・マネジメント、プレイヤーなど多様なキャリアを選び、経験を積む機会を作りやすい
・個々人が最終的に指向性のある仕事を選択することができ、ハイパフォーマンスにつなげやすい


次回の記事は・・・・


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プレIPO期のスタート時点・主たる活動・到達地点について解説しています。よろしければぜひご覧ください。

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