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「お金で交換できる経済」と「お金だけで交換しない経済」が助け合う方法を「ロジカルな数字」から考えてみた

そもそも経済とは、物々交換から始まりその歴史の中で物を交換する価値の担保や尺度としてお金が発明されました。 ヒトは便利さをお金で買ってると言っても過言ではありません。しかしこの直近5年ネットやSNSの普及でそれがガラリと変わってしまったように感じます。

「お金で交換できる経済」「お金だけで交換しない経済」の2つの経済圏。この2つの狭間で、もがき苦しんでいる若い世代を見ることが増えたように感じます。だから3回にわたって書いてきました。

そもそも生活の幸せのために個人が出来ることはそう多くありません。「規制の撤廃」「貿易の自由化」「出生率を高めて人口を増やす」「技術革新による労働生産性を高める」どれも主語の大きな事で国や自治体レベルで取り組むテーマです。身近に出来ることはないのか。ググっても中々でてきません。というのもあって3回にわたって書いてきました。

でも、まだ書いてこなかった事があります。それは「数字(指標)」に関することです。それは、一人語りで書くのが難しかったからかもしれません。

この2つの経済が、お互い助け合い、共感できるようにするためには「ロジカルな数字(指標)」が必要です。これを、CFO(最高財務責任者)やIR(投資家向け広報)担当の視点で考えてみました。

約4500字🔥超ニッチなハナシですが、これまでの3話と併せてどうぞお付き合いください。

※1話目は→
コチラ
※2話目は→
コチラ
※3話目は→
コチラ


0:2つの経済の狭間に課題があり、チャンスがある

「お金で交換できる経済」である既存経済は、従来からの資本主義経済で、既存経済の資本を増やすとは、主に金融機関やベンチャーキャピタルなどから必要な資金を借り入れたり出資を受けたりすることです。この場合資本提供者は事業の成功に応じて金銭的なリターンを得ることが目的になります。「資本を集める」のは得意ですけど「反応」や「評価」は得られません。

「お金だけで交換しない経済」であるコミュニティ経済は、SNSを活かしてクラウドファンディングなどで応援を集め、ネットを通じて多数の人に呼びかけ、趣旨に賛同した人から「お金の利便性を使って応援を集めること」でここ5年急速に成長しています。リターンは多種多様でこの場合の特徴は共感や人間関係から生まれることです。しかし「応援を集める」のは得意ですけど「利子」や「配当」が目的ではありません。美意識や価値観が既存経済とは違います。

この2つの経済がお互いに助け合う方法については2話目にも書きましたが、それには「ロジカルな指標(数字)」が必要なことではないでしょうか。

特に、「お金だけで交換しない経済」であるコミュニティ経済には、クラウドファンディングで協力や応援を得ても、その事業やプロジェクトに「なにが」(社会のどこが) 「どのくらい」良くなったか?説明する機能が足りません。それは寄付感覚の延長だからかもしれません。

「それで地域や社会の何が、どのくらい良くなったの?」とか「それからどのように上手くいってるの?」というモニタリング情報を共有するためには「指標」がいるんじゃないか?と思うのです。

たとえば、指標(数字)があれば「そうか!あれはそんな感じに進もうとしてるんだ。じゃあもっと応援しようかな」って応援する熱量が上がるかもしれません。

ええ大変そうですね。たぶん大変でしょう。しかし2話目にも書きましたが、SDGsインパクト投資を参考に、2つの経済が相互に関係する「共感経済」のための指標づくりを考えました。もう少々お付き合いください。



1:なにが・どのくらい良くなったか?説明する

協力してもらうって事は、その協力によって 「なにが」(社会のどこが) 「どのくらい」良くなったか?説明する必要が出てくると思うのですが、寄付だとビジネスと違うので解像度に欠ける気がします。

たとえば、地域内での「評判」を数値化するのは難しいです。しかし活動の「指標」によって「地域社会のどんなことが」 「どのくらい」良くなったか?話すことができれば、応援の熱の入り方も変わると思うのです。

例えて言うなら、点を線で説明して、面(物語)として語れるようになることだと思います。これによって活動の取り組み方や継続力も変わるでしょうし、改善方法も見えやすくなるのではないでしょうか。

これを経営者視点から例えて言うなら「飛行機の計器」(指標)がなければ行きたい方向へ操縦できないし、離陸も着陸も出来ないのと似ていると言えるかもしれません。

つまりこれから「お金で交換できる経済」である既存経済の経営指標とは一味違う「共感経済の指標」が生まれていくのだと考えます。


2:ロジックモデルで流れを共有する

ロジックモデルとは、プロジェクトが最終的に目指す変化や、目指す方向への道筋を体系化したものです。さまざまな要素を因果関係でつなげて表現します。活動の目的や道筋を共有しやすくする効果があり、プロジェクトの設計図として使われています。

特徴は、アウトカム(周囲への影響)とインパクト(地域社会への大きな影響)という未来への項目があることです。これによって何処を目指しているのかシェアしやすくなります。

ロジックモデルを作成するメリット

・目的や仮説を流れで把握・共有できます。
・効果や貢献度を評価するための指標を設けることができます。
・改善や最適化のヒントが見つかりやすくなります
・内容や意味を共有しやくするなります。



3:段階ステージに応じて指標を設ける

ロジックモデルで段階(ステージ)に分けると、それぞれ詳細に「指標」を設けて説明できるようになります。特に、アウトカム(周囲への影響)に関して解像度を高めることで先行きへの理解を共有できるようになります。

活動・プロジェクトの解像度を高める5つの項目
1:アウトカムの内容や重要度は?
2:アウトカムが現れているターゲットは誰か?
3:アウトカムの発生の度合いは?大きさ・深さ・長さ(期間)は? 
4:その変化へどのくらい貢献しているか?度合いは?
5:予定していた影響が出なかった場合の想定や対策は?

プロジェクトが「それで地域や社会の何が、どのくらい良くなったの?」とか「それからどのように上手くいってるの?」という情報が共有できれば解像度が高まります。

メリット1:
経済的な価値以外の「社会的価値」を測る新たなモノサシができます
メリット2:
多様な価値観のなかで課題認識や目指すゴールなど活動全体の「共通言語」ができます
メリット3:
取組み全体を「見える化」して改善できるようになります

注釈※ロジックモデルとロジックツリーは似ているようで違うものです。
ロジックモデルは、事業や組織が最終的に目指す変化・効果の実現に向けた道筋を体系的に図示化したもので、事業やプロジェクトの設計図に例えられます。全体像を把握するために使われますが、ロジックツリーは問題の詳細を掘り下げるために使われます。


4:2つの経済がお互いに助け合うための共通言語を作る

これからは協力・応援してくれる人たちへ、論理的な説明が重要になるでしょう。そして「お金で交換できる経済」「お金だけで交換しない経済」の2つの経済の間でも「指標」に基づく論理的な説明ができると、お互いの協力がしやすくなるのではないでしょうか。

2話目3話目に書きましたが。例えば「なるほど。こんな社会効果を出そうと頑張ってるんだ。この部分の力が足りないならウチが費用を一時的に立て替えてあげよう」とか、協力の幅が広がるようになると思うのです。

経済は一方通行ではなく「回る」ことが大事です。経済の循環を良くするのは血流の循環を良くすることに似ています。資本金とかファイナンスとか「木を見て森を見ず」な表面的な考えに囚われることなく、信じあい協力しあうためには、論理的な説明、定量的な説明が必要になってくるのだと思うのです。

指標を設けて、より論理的な説明、定量的な説明が出来るようになるには膨大な努力と工夫が必要だと思いますが、生成AIなど技術の発達によって不可能ではないと考えます。事業や活動プロジェクトによって指標の作り方は変わるので、多くの人に役立つ分かりやすい事例ができたらいいですね。(もし一緒に考えたいという奇特な方がいらっしゃればご協力しますのでメッセージを頂ければと思います)



5:「物語」×「指標」×「実績」が世界を変える

「指標」のチカラを活かすことで「お金で交換できる経済」「お金だけで交換しない経済」の2つの経済が、お互いを助け合うことを語るために「物語」×「指標」×「実績」の3点セットで語ることが重要になると思います。

これは、既存経済ではCFO(最高財務責任者)やIR(投資家向け広報)担当の役割ですが「お金だけで交換しない経済」の代表格である「コミュニティ経済」で活動をするプレイヤーたちも今後は必要になってくるのではないでしょうか。

「物語」×「指標」×「実績」で語るとは

1:物語とは・・・企業やプロジェクトの夢や未来(ビジョン)を説明して、なぜそう思うのか(ミッション)なぜ存在できるのか(パーパス)背景を語ることです。物語は読み手に未来を想像させ、ココロを動かし、行動を変える力があります。

2:指標(とロジック)とは・・・定性的に説明するのではなく、定量的により論理的に、その活動や事業が「それで地域や社会の何が、どのくらい良くなったの?」とか「それからどのように上手くいってるの?」を説明できるようになると、理解や納得がより深まり協力がしやすくなります。

3:実績とは・・・活動や事業で行った事実は、口先の説明より重く大事です。実績は結果であり事実そのものです。


「物語」×「指標」×「実績」で語ることが世界を変える理由

メリット①:
未来の物語を数字を連動して話すと、成長を的確に説明できるようになります。すなわち活動の未来価値を論理的に説明できるようになる。

メリット②:
物語は活動や事業の「本源的な価値」であり、活動の無形資産を見える化できるようになる。解像度が高まり理解が深まります。

メリット③:
ランキングなど、無機質な数字の他社比較を避けれるようになり、その活動や事業のデフェンス力が高まるようになります。

これは逆説的ですが。指標を設けてより論理的な説明定量的な説明が出来るようになった未来を想像すると、なぜ指標が大事なのか理解できます。このように解像度を高めることが新しい未来に繋がるのではないでしょうか。


おわりに

アダム・スミスの著書「共感の経済学」では、市場経済では個人の利己的な行動が「見えざる手」によって社会全体の利益につながると説明しつつ、同時に他者の感情に共感する能力を持っていると考えていました。共感が市場経済や国家の役割にも影響を与えると主張しました。「見えざる手」で知られるアダム・スミスですが、実は市場経済を手放しで称賛したわけではなくその副作用やデメリットにも言及していたのです。260年を経て共感が経済という「人々の幸せ」そのものに活かせる時代がやってきたのかもしれません。

これからも生成AIや量子コンピューターなどの技術は進んで状況は変化していくでしょう。しかし人間は変わりません。

もしあなたが「何か」に悩んでいるなら、それは既存経済とコミュニティ経済という2つの経済の狭間にある「何が問題だかよくわからない」状態があるからかもしれません。そしてこのコラムがそのヒントになれば嬉しいです。超ニッチですけど、4回にわかって書きました。

これからもよい知恵を出して貢献できればいいなと思います。やがて色んな方たちとディスカッションする機会ができれば嬉しいです。

貴重なお時間を割いてココまで読んで頂き感謝です。またリアルでnoteでお会いしましょう。

ではまた。

※1話目はこちら▼

※2話目はこちら▼

※3話目はこちら▼




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