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バズによって売れるものと売れないもの

当たり前のことを書きます。

バズることで売れるものと売れないものがあります。

バズの目的が短期的な話題化ならいいけれど、マーケティングコミュニケーションのKGIは、売上につながる意識・態度・行動変容のはずだから、「話題化」は手段であって目的ではありません。

だから、「話題化のためのバズ」も、本当は変(というか駄目)。

KGIは、Key Goal Indicatorの略で、重要目標評価指標を指す。「これ、何のためにやってるの?」に対するファイナルアンサー。

すべてのマーケティングコミュニケーションは、売上の獲得もしくはROIの向上を妨げている課題を解決するために行うものであるべきです

バズのKGIは何?

では、バズのKGIは何であるべきか。

KPIは、Key Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標を指す。KGIの手前にあり、KGIに影響を与える重要な指標だけれど、KGIが達成されなければKPI達成には意味がないという世知辛いプロセス指標。

そうです、バズのKGIは、商品カテゴリーによって違うんです(当たり前ですね)。

スーパーやコンビニで買える一般消費財は、下記の特徴を持ちます。

・関与度が低い
・商品による差が少ない
・ニーズは常に顕在
・購入が高頻度
・価格が安い
・購入による失敗のリスクが低い

企業視点で見るとこうなります。

・コモディティ化が激しい
・そのため価格競争が激しい
・できる限り多くのお店に置いてもらう
・販売1個あたりの利益が低い
・宣伝予算が(とても)大きい

このような一般消費財におけるマーケティング課題は、「再想起」、つまり思い出してもらうことだと思っています。

各社、莫大な広告宣伝費を投下することで、認知度はすでに高い。ターゲット消費者は、みんな知っている。でも、毎日85%が自動運転の中で、いつもは忘れている。

テレビCMを流しても、スルーされてしまう。ディスプレイ広告を出しても、目に入らない(心に届かない)。そして、ずっと忘れられた状態が続いてしまう。

そこで、バズの出番です。

バズは、長期記憶という引き出しに入ってしまっている自社商品を、テーブルの上に出させることができます。

一般消費財におけるバズの効用は「再想起」

みんな大好き、日清食品の事例で見てみましょう。

キャベバンバン

これは、日清食品のUFOが、2018年5月に実施した最高のバズキャンペーンです。

湯切りのときの、「裏蓋についてしまうキャベツをお箸で落とすのが面倒」という課題を解決するためにの最高のプロダクト「キャベバンバン」を開発した。4,980円で1,000個を販売するよ、という建て付けです。

もちろん、製品を販売することによる収益を見込んでいるわけではありません。

「日清がまたやってくれた!!」「くだらねー!!www」「なにこれ欲しい!!」というバズを狙ったものです。

推測ですが、このキャンペーンのバズによって、UFOの売上は上がったと思います。つまり、成功した。

しかしです。

バズは、先に述べた「日清がまた!」「くだらん!(喜)」「(キャベバンバンが)欲しい!」というものが大半であり、UFOの製品パフォーマンス、つまり「おいしい」「食べたい」というものは少数だったはずです。

バズの大事な大事な大前提

ここ、重要です。

バズは、「製品のパフォーマンスによるベネフィット」がバズるのではなく、その周辺に付加されたネタ(企画)がバズるのです。

伝播している情報は、「UFOうまい」ではなく「おもしろい!」「キャベバンバン欲しい!」なのです。

でも、それでいいのです。

・バズによってUFOを思い出す(再想起)
・食べたいという意向が生まれる(UFOが嫌いな人は相当な少数派)
・いつでもどこでも買える(チャネルカバレッジが広い)
・値段が安い(150円で買える)
・UFOはすべての日本人がターゲットである(ターゲットが広い)

かくして、バズキャンペーンが成功する▷売上が上がるのです。

バズで家や車を買うか?

さて、では、バズで、家や車を買うでしょうか。買いませんよね。

・関与度が高い
・商品による差が(ある程度)大きい
・ニーズは、だいたい潜在
・購入の頻度が低い、またはリードタイムが長い
・価格が高い
・購入による失敗のリスクが高い

上記商品は、ニーズが顕在化している期間が極めて限定的かつ短期的です。

掃除機に興味があるのは、掃除機が故障して、新しいものを買うまでであり、それ以外のときは掃除機のことなんて1日に1秒も考えていません。

ニーズが潜在期のときに(つまり必要がないときに)掃除機のバズコンテンツに触れたからといって、「せっかくだからもう一台買っておくか!」とはなりませんよね。

しかも、価格が高く、失敗によるリスクが大きいので、購入前には徹底的な検索と検討が入ります。

ということで、一般消費財ではない買回品や専門品は、バズったところで【短期的な】売上には貢献しないのです。

じゃあ、買回品や専門品において、バズは無意味なのか? というと100%無意味だとは思いません。

でも、間違っても、KGIを短期的な売上に設定しちゃ駄目ですよ、ということです。

では、買回品や専門品は、バズによって何を目指せばいいのか。

僕は、「共感の連鎖による広告・PRメッセージの拡散(情報伝播の最大化)」だと思います。

バズとはクチコミです。クチコミは、人間の感情が大きく左右に振れたときに起こります(事前期待と事後評価のギャップが大きいときにクチコミしたくなる)。

僕はそれを琴線スイッチと呼んでいます。

琴線スイッチは、「おもしろい」だけでなく「すごい」「なるほど」「共感!」「感動」など、いくつもあります。

くだらないことを発信して笑わせたり、インパクトがあることをやってびっくりさせなくても、共感は連鎖するのです。

たとえば、先日の父の日にTwitterで(再度)バズっていたトヨタ自動車のこのムービー。

「素敵だ」「泣ける」など、多くの人の「感動の琴線スイッチ」を押していることがTwitterのコメントから見て取れました。

このCMの目的は、衝突支援パッケージの認知獲得と理解促進による購入意向の向上と、トヨタ自動車全体の中長期的なコーポレートブランディングでしょう(推測)。

自動車という特性上、映像を1本見てすぐに購入するような短期的な売上効果は得られません。

だから、トヨタは、こういったストーリー性やメッセージ性の高いブランデッドムービーを制作・配信し続けることで、中長期的な売上向上効果を狙っているのだと思います。

自動車の購入は、ニーズが顕在化したときには、すでに頭の中に「次に買い替えるなら(新しく買うなら)これとこれのどっちかだな」という想起集合ができあがっていて、その中から検討するという特徴があります。

だから、「いますぐ買いたい」というターゲットだけに絞った広告効果は限定的ゆえ、潜在期からイメージの向上や想起集合入り(購入の選択肢に入ること)をしておかなければならない。

バズは、あくまでその広告・PRメッセージの伝達力をドライブさせる「手段」なのです。

詳しくはこちらを。

ということで、あまり気軽に「バズらせたい」と言うのはやめておいた方が無難です(思慮の浅さがバレてしまいます)。

マーケターにとって重要ななのは、自社商品の売上獲得およびROI向上を妨げているボトルネックを探し出す「診断力」と、その課題を解決することができる特効薬を出す「処方力」です。

「その課題は、バズによって解決できるのか?」という本質的な問いを、忘れてはいけません。

「インフルエンサーに発信してもらうことでバズを生みたい」というのも怪しいですから、ご注意を。

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