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学校をつくっているというより、人の流れが生まれるように動いている。開校まで半年、「軽井沢風越学園」の今を訪ねて【7月25日〜27日 長野県軽井沢町】

長野県で今回、私がどうしても訪れたかった場所。それは2019年7月現在、設立設置認可申請中の「軽井沢風越学園」。3歳から15歳、異年齢・自己主導で学ぶ幼小中“混在”校が、いよいよ2020年4月に開校する。前回取材させていただき、greenz.jpにて記事を執筆してから2年。開校まであと半年となった「軽井沢風越学園」の今を、家族で訪ねる幸運に恵まれた。

自然がフィールド。「かぜあそび」の現場へ

まず訪れたのは、軽井沢風越学園設立準備財団が2019年4月から運営している認可外保育施設「かぜあそび」。現在、27人の子どもたちが通っているという。

中軽井沢の鳥井原と呼ばれる地域の少し先、国道から狭い農道を進んでいくと、森を背景に東屋のような建物と広々としたフィールドが現れた。ここが、「かぜあそび」の活動拠点。「軽井沢風越学園」の建設予定地からもほど近い場所にある。

車を降りると、遠くに子どもたちの声が聞こえてくる。午後2時。どうやらおやつを食べているらしい。いっぱい遊んだあと、「かぜあそび」という名にぴったりの東屋でいただくおやつは、どんなに美味しいことだろう。

少し近寄ってフィールドを散策していると、何人かの子どもたちがニコニコしながら「だれ?」と駆け寄ってきた。7月でも、みんな長袖長ズボン。森の中で遊ぶ基本スタイルだ。スタッフの辰巳真理子さんによると、子どもたちは「かぜあそび」で過ごすほとんどの時間を屋外で過ごしているという。思い切りどろんこできそうな築山があり、そのとなりにはおままごとのためのキッチンが並べられていたりするが、いわゆる”遊具”はここにはない。広々としたこのフィールドに加え、沢が流れる裏山も含めた「自然」が子どもたちの居場所となっている。木登りをする子、草木を使って工作する子、ただただ駆け回る子…。遊びのバリエーションは、尽きることがない。

そうこうしているうちに、「帰りのつどい」が始まった。絵本の読み聞かせも、屋外で丸太に座って。子どもたちの手には、持ち帰る工作物でいっぱい。物語に一喜一憂する子どもたちの声が、風に乗って聞こえてくる。

スタッフの方から明日の持ち物などが伝えられ、帰りのつどいは終了。スタッフの方の「せーの」に合わせて「おかあさーん!」と大きな声で呼ぶ先に、いつのまにか迎えに来られていた保護者のみなさんの姿があった。ダッシュで駆け寄る子どもたち。

お父さん・お母さんを見つけると、今日あったことを話したり、工作物を見せたり。中には、「人参の葉っぱ、お母さん食べて!」と、うれしそうに今日のおやつを差し出す子も。「うん、おいしい!」「味噌マヨだよ!」親子の会話が心地よく耳に入ってくる。

しばらく親子の時間が続き、徐々に人の数もまばらに。「かぜあそび」での1日はこうして終わり、フィールドは静けさを取り戻した。

観察し、共有する。スタッフのあり方

降園後、スタッフのみなさんのミーティングも見学させていただいた。現在保育士スタッフは6人。様々な経験と背景を持つみなさんがこの地に集い、子どもたちの暮らしに寄り添っているという。

毎日行われているスタッフミーティング。一日の振り返りでは、その日の子どもたち一人ひとりの様子が細かくシェアされていく。この日は沢に歩いて行ったとき、洋服が濡れるのをためらった子がいたとのこと。でも「汚れても洗えばいいよ」「気持ちいいよ」という他の子どもの声がけで、最後には水遊びを楽しんだそう。子どもの行動や表情、子ども同士の会話、保育士の声がけ。ミーティングでは、何か答えを出すことではなく、そこで起こっているひとつひとつの事実、そしてそれを捉える視点を丁寧に全員で共有していくことが重視されているようにみえた。ときにはお互いの視点の違いも感じ取りながら。そのほかにも、おままごとで子どもが何を楽しんでいたのか、遊びをどう発展させていたのか、子どもの行動のどこがどう気になったのか…。保育士の方々の細やかな観察力に、ただただ驚かされる。

約1時間のミーティングの間、すっかり仲良くなった「そうたくん」とどろんこになるまで遊んでいた娘。おままごとひとつでも、ふたりが交われば、お互いに影響しあい、次々に発想が広がっていく。本当に子どもの遊びは、尽きることがない。

自己主導;「わたし」からはじまる
協同:「わたしたち」で広げる
探究:「わたし」と「わたしたち」で深める

軽井沢風越学園のカリキュラムの3つの軸のお手本は、子どもたちの遊びの中にあるのだな、としみじみ感じる。そしてそれを見守り、観察し、「広げる」や「深める」を静かに後押しするのが大人たちの役割。3歳から15歳が異年齢で交わる軽井沢風越学園では、いったいどんな協同や探究が繰り広げられるのだろう。

「僕はそれぞれに発酵する酵母菌を撹拌する役割」。本城慎之介さんとの対話

翌日には、本城慎之介さんとお話する時間をいただいた。軽井沢風越学園設立の発起人であり理事長の本城さん。2年ぶりにお会いしたが、変わらぬ柔らかな笑顔で私たち家族を迎えてくださった。実は前回のインタビュー収録地は、六本木。だから軽井沢の地での再会が、とてもうれしい。

お弁当を囲みながら、本城さんにあれこれ近況をお聞きする。現在、軽井沢風越学園は設立設置認可申請中で、校舎の建築を急ピッチで進めている。9月までに8割をつくる計画なのだそう。今回残念ながら工事現場の見学は叶わなかったが、車で通過し、その広大な規模感を感じ取ることができた。

直近の動きとしては、スタッフ採用がもう一歩というところ(中高数学教師を探しているそう。心惹かれる方、ぜひ!)。さらには、7月末〜9月初旬にかけて、2020年度入学希望の親子を対象とした「風越ワークショップ」を30回に分けて開催予定。その準備の真っ最中とのこと。

さあ、いよいよこれから、というタイミング。でも本城さんは、「学校づくりは終わっている」という。学校像、カリキュラムの軸づくりやスタッフ採用などは、これまでの期間でほぼ完了している。じゃあ今は何を?本城さんは、「人の流れ、人の動きが生まれるように動いている」と表現してくださった。

私は「軽井沢風越学園」の動きを見ていて、単体としての「学校」をつくっているのではないと常々感じていた。その理由は、これからの公教育のモデルとなることを目指しているということが、ひとつ。前回のインタビューでも、

単に「学校をつくりました」という自己満足ではなくて、そこで働く先生や大人たちがどんどん他の学校に異動して広まっていくような、広がりの大事さや面白さは最初から意識していました。
僕らがもたもたしていることも含めて情報発信することで、真似されるような、真似したくなっちゃう学校にしたいし、真似できるような方法を考えています。

と語ってくださっていた。(くわしくはこちらの記事で。)つまり、全国の学校への広がりを意識しているという意味で、単なる学校づくりではないと捉えていた。

そしてもうひとつは、軽井沢のまちを舞台にした最近の動き。ここ1年ほどの間に、軽井沢風越学園の周囲にさまざまな計画が立ち上がっている。道を挟んだすぐ目の前には、診療所、病児保育室、デイサービス、訪問看護ステーションの機能を兼ね備える「ほっちのロッジ」が軽井沢風越学園と同じく2020年4月にオープンする予定。そのすぐとなりにも、放課後の子どもたちの居場所となる施設をつくる計画が進められているという。運営者はそれぞれ独立した存在で提携関係はないけれど、もちろん協働していて、みんなであらゆる世代・境遇の人々が行き交う「まち」を描いているような、そんな印象を受けていた。

そのことを伝えると、本城さんは、「カフェ併設のコインランドリーもつくりたいんですよね」と嬉しそうに語ってくださった。コインランドリーには、カフェに長居しするにしてもスッと帰るにしても、“言い訳”がある。その絶妙な気楽さが、人の流れを豊かにしていくイメージを持つことができた。うんうん、楽しそう!

「それぞれの酵母菌がふつふつと発酵している、僕はそれを撹拌しているようなイメージなんですよね」と、本城さん。学校づくりの構想当初から、地域の人々と対話し、ともに歩むことを実践し続けてきた。細やかな動きも弱さも含め、丁寧に情報発信を続けてきた。その過程には、当然のことながらたくさんの苦労も垣間見ることができた。今もなお、産みの苦しみを味わっている最中かもしれない。でも開校までの歩みのなかで、さまざまな仲間たちが合流し、そのイメージは「学校」から「まち」へ広がり、具体性・現実性も少しずつ少しずつ上がってきている。

一歩ずつ一歩ずつ、焦らず対話を重ねながら、地道に、でも楽しむ心も忘れずに「撹拌」を続ける本城さんの変わらぬあり方を肌で感じ取り、胸が熱くなる想いだった。

本城さん、貴重なお時間をありがとうございました。今度は開校後に、軽井沢風越学園の現場にお邪魔させてください。そしてまた、その歩みの過程で、休憩がてらお話を聞かせてくださいね。

りんごジュースを差し入れにいただき、本城さんに心からのお礼をお伝えして、軽井沢をあとにした私たち。車中で「かぜあそび」の現場のこと、本城さんとの対話の内容を思い返し、ご縁に感謝の気持ちでいっぱいになる。一度の取材で終わらず、その後もこうしてつながり続けていられること、良いときもそうでないときも、その変化の過程も含めて丁寧に共有していただけること。そして、家族まるごと受け入れていただけること。私がライターとして、人として、大切にしたいあり方を象徴するような時間を過ごさせていただいた。

風越学園の開校は2年半後。その歩みの中で、さらなる変化とともにあることは間違いないでしょう。それもまた、現実の社会と同じ。変化の過程も楽しめる大人と子どもがつくる風越学園が、社会にとっても大きな風となることを楽しみに、私は子どものとなりで、自分自身の変化も楽しみながら生きていきたいと思いました。

2年前、記事の終わりにこんな言葉を紡いでいた私。うんうん、変化を楽しんで生きているよ、これまでも、これからも。

さて、次は飛騨高山のものづくりの現場を訪ねます。また新しい風に、新しい自分に、会いに行こう。











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フリーランスライター・エディター、2人の子どものお母さん。人の言葉をありのままに聞くことで本質を見つめるインタビューがライフワーク。現在は主にウェブマガジン「greenz.jp」にて、「ほしい未来」のつくり手のみなさんの言葉を紡いでいます。
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