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“風景をつくっていることを実感できる”営みの現場へ。西粟倉「ようび」のものづくりを体感【8月5日〜6日 岡山県西粟倉村〜鳥取県智頭町】

娘が戻り、ふたたび4人での旅路が始まった。気がつけば旅ももう後半で、残すは中国・四国、九州を巡るのみとなった。目覚めたのは海がすぐそこの「道の駅みつ」。朝から海を背にラジオ体操なんかして、水遊びして、気分良く出発。内陸方面、今日は岡山県西粟倉村へと車を走らせる。

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「西粟倉」という名前はここ数年、「地方創生」の文脈でよく耳にするようになった。人口約1,600人、森林率95%以上。鳥取との県境にある小さなまちで、10年以上前から「百年の森林」を次世代に残す取り組みが官民一体となって進められている。全国から注目が集まり、視察のほか、移住者も増えているという。

 今回訪ねるのは、プライベートで何度かご縁があり、親子ともども仲良くしていただいている大島さんファミリー。正幸さんと奈緒子さんは、「やがて風景になるものづくり」を掲げた「ようび」を営み、地元の木をいかした家具と暮らしの道具をつくり続けている。娘ちゃんは我が家の娘と同い年。昨年もap bank fesの会場で、ふたりは意気投合して遊んでいたっけ。当時の写真、ふたりとも、ちっちゃいなぁ。

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車を走らせること約1時間。青空と新緑に包まれた西粟倉村に到着。田んぼの中に、写真でよく目にしていた「ようびの日用品店(完全予約制 ショールーム)」が見えてきた。興奮気味にキャンピングカーを降りると、すぐに奈緒子さんが出迎えてくれた。とっても元気そうな笑顔が、じわじわ心に沁み入る。しばし再会を喜びあったあと、さっそく建物の中へ。

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2016年1月、家事で工房全焼という信じがたいほどの困難に見舞われた「ようび」。5,500本もの杉の間伐材を格子状に組み合わせた新社屋に生まれ変わったのは、2018年5月のこと。多くのボランティアが参加し、約1年半かけて完成したと聞いている。(詳しくは、greenz.jpの記事をぜひご一読ください)

見上げたときの圧倒的な「木」の存在感、そして丁寧に組み上げられた「人」の手ざわりを感じる質感に、「うわぁ」と、思わず声をあげてしまう私たち。涙が出そう。

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奈緒子さんおすすめの「特等席」からは、とっておきの田園風景が。風が吹くと、まるで海面を伝わる波のように、稲の上を風が駆け抜けていく様子が見える。娘と腰掛け、圧巻の光景をしばし堪能させていただく。

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のんびりと風景に見惚れていた私たちに、うれしいサプライズが。毎日スタッフが手づくりして一緒に食べるという「ようび」のランチタイムに混ぜていただけることに。正幸さんともここでご挨拶でき、家族で同席させていただき、美味しいカレーをいただいた。ランチ後もみなさんと自己紹介しあったり私たちの旅の話も聞いてくださったり、なんて幸せなひとときなんだろう。

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「ようび」のあたたかさに触れた余韻を味わいながら、今度は奈緒子さんに連れられて、森へ。「1百年の森林構想」の現場へ足を踏み入れた。

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根本にまで日光が降り注ぐ、美しく間伐・手入れされた杉林。一本一本から、強い生命力を感じる。歩く私たちにも、そのパワーが降り注いで来るのがわかる。

日本全国にある人工林は、いわば、手入れすることを前提としてつくられたもの。でも、その多くが放置され、やせ細ってしまった杉やヒノキの弱々しい姿があるのが現状。細い木々は、木材として使える部分も少なくなってしまう。

でも西粟倉では、約50年前に「子孫のために」という想いを込めて植えられたであろう木々を、百年の森林に育てるべく、あと50年、村ぐるみで挑戦を続けることを決意したという。役場が森林所有者から森林を預かり、適正な間伐を長期に渡って続けているのだ。

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そして、この村で育った木を中心に、ヒノキを使ったものづくりを続けているのが「ようび」。ホームページには、「やがて風景になるものづくり」というキャッチフレーズとともに、こんな言葉が並んでいる。

例えば、この家具になった木の切り株でヒメホタルが光っているかも、 明るくなった森林にミツマタの花が咲いたかも、 足元に草花が生えて動物たちが喜んでいるかも、と考えると夢があると思うのです。 いつか村中が蛍で光る夜を、子供や孫たちに見せてあげられるかもしれない、と。 縁(ゆかり)はなくても、縁(えん)は結べるもの。 だんだん豊かになっていく自然の恵みを、喜び合い、分かち合いたい。 そんな想いを共有する縁を広げてゆきたい。 それが、私たちようびの夢です。

「自分たちの営みが風景をつくっていることを実感できるんです」と、奈緒子さん。森の中に響く彼女の言葉は、私の心の中に清流のような質感を持って沁み入っていった。

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森を歩いたあとは、家族時間。「旧影石小学校」でカフェやショップを巡り、「あわくら温泉元湯」で汗を流し、西粟倉の今を体感。そして夜は、大島家の暮らす鳥取県智頭町のシェアハウスにお邪魔させていただくことに。県境を越え、車で30分。まるで昔の長屋のようなそこでは、小さなお子さんのいる4家族がともに暮らしを営んでいる。

娘はお友達と会えるとあって、到着するなり、ダッシュで中へ。あっという間に子どもたちの輪に入り、溶け込んでいった。ちょうど夕飯時とあって、リビングには、子どもも大人も大集合。なんだか大家族みたいな賑やかな食卓!

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アットホームで気さくなみなさんとおしゃべりしながら、奈緒子さんの心のこもった手料理をありがたくいただく。聞くと、みなさんは智頭町で活動中の「まるたんぼう」や「すぎぼっくり」という森のようちえんに共感して家族ごとこのまちへ移住して来た方々。子どもは森のようちえんに通い、大人はそれぞれ新たな仕事に就いたり、自分で仕事をつくったり、それぞれ。奈緒子さんの娘ちゃんもこの春から「まるたんぼう」に通い始め、同時に大島家もこちらに引っ越してきたという。

智頭町は「杉のまち」として知られる自然豊かなまち。このまちでの共同生活を心から楽しんでいる様子のみなさんに、「それでも大変な面もあるんでしょうね」と問うと、「えー、ないかも!」と。楽しいし、子育てもシェアできるし、自然はいっぱいだし、いいことばかりだとあっけらかんに笑う。

中でも母たちが強調していたのは、「褒めてもらえる!」ということ。家族だけでの暮らしでは、家事をしても滅多に褒めてもらえることはない。(私もそうだなぁ〜)でも、ちらっと覗き見たキッチンでは、母たちがお互いに「料理うまいよね〜」とか「ホントがんばってるね!」と褒め合いながら手を動かしていた。自然に笑顔があふれる。あぁ、確かに。これは自己肯定感上がりそうだわ。

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家族4人で関東の一軒家に暮らす私たちの目にはとても斬新に映る、子どもの教育のための移住、そして子育て世代のシェアハウス暮らし。“拡張家族”は、もちろんうまくいくことばかりじゃないと思う。性格的にこういう暮らしのかたちが合わない人もいるだろう。でも子育て世代だからこそ、シェアできるものも多いのは確か。子どもたちも、共同生活から体得するものは多いだろう。シェアハウスとは言わないまでも、私も茅ヶ崎で、このエッセンスを活かした何かができないだろうか。そんな妄想も、私の中でむくむく動き出す。

私たちとは違うみなさんの「日常」を垣間見られたことに感謝するとともに、なんだかそれが、とても愛おしいものに感じられた時間だった。

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夕飯後も、キャンピングカーの中に見学に来てくれたり、みんなで庭に出て寝転がって星を眺めたり、大人は大人で、生き方・子育て感の談義をしたり。なんて幸せな夜なんだろう。子どもたちは興奮気味で少し夜更かしさせてしまって申し訳なかったけれど、ただただ、感謝の気持ちとともに眠りについた。

そして翌朝。みなさんとにぎやかにおしゃべりしながら朝食をいただき、心からのお礼を伝えて、次の旅路へ。あぁ、別れがたい。でもまた必ず、会えるよね。今度は「まるたんぼう」や「すぎぼっくり」の現場にも、足を踏み入れてみたい。奈緒子さん、正幸さん、シェアハウスのみなさん、何度お伝えしても足りないけれど、心からありがとうございました!

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みなさんの笑顔に見送られ、後ろ髪ひかれる想いでシェアハウスを出発したあとは、智頭を少し散策して、次の旅路へ。車中、ふと気づくと娘は絵本『みえるとか みえないとか』を熱心に読んでいた。

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この本は先日、北軽井沢の「ルオムの森」の中にあったブックカフェ「百年文庫」で偶然手に取り、娘が気に入り、購入したものだった。それ以来、家族で何度も何度も読んでいる。

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絵本のテーマは、ひとことで言ってしまえば「多様性」。

宇宙飛行士の主人公が、地球から旅立ち、いろいろな星、例えば「前にも後ろにも目があるのが当たり前の星」に行く。すると、「かわいそう〜」とか「前だけしか見えないで歩けるの、すごい!」とか言われてしまう。主人公にとっては普通なのに、なんだか気を遣われてしまって、変な気分。ものがたりの最後には、こんなフレーズが。

おなじところを さがしながら ちがうところを おたがいに おもしろがれば いいんだね。それって すごく むずかしいような きも するけれど、じつは かんたん ことなのかも しれないねえ。

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この日、娘がどんな気持ちでこの本を読んでいたのかは、わからない。でも、智頭のシェアハウスの暮らしを体感し、同じ年齢の大島家の娘ちゃんにとっての「普通」(森のようちえんに通い、シェアハウス拡張家族暮らし)と小夏の「普通」(園舎のある幼稚園に通い、核家族だけでの暮らし)が全く違うことを知ったはず。ひょっとすると、北海道のべてるでの体験も大きかったのかな。彼女なりに何かを感じたのかな、たまたまかな、なんて思いながら、ありがたい出会いの数々に思いを馳せた。

みんなの「普通」は自分と同じじゃない。何がいいとか悪いとかじゃなく、それぞれが心地よく生きられるかたちが、きっとある。それぞれの「普通」の幸せをお互いに認め合い、違いを面白がっていくと、世界の見え方も変わっていきそう。みんなの日常を体感させていただく旅の面白さに、ハマりつつある池田家です。

さて次は、主人の実家の岡山県玉野市へ。じいじ、ばあば、お世話になります。孫たちの到着を、待っていてね。

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フリーランスライター・エディター、2人の子どものお母さん。人の言葉をありのままに聞くことで本質を見つめるインタビューがライフワーク。現在は主にウェブマガジン「greenz.jp」にて、「ほしい未来」のつくり手のみなさんの言葉を紡いでいます。
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